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Vol.25201 現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム 抄録から(13)

医療ガバナンス学会 (2025年10月23日 08:00)


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2025年10月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第二十回シンポジウム

11月2日(日)

【Session 13】 最先端臨床研究開発 16:10 – 16:55 (司会:上 昌広)

●西田 幸二 大阪大学大学院医学系研究科教授[眼科]、大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点[WPI-PRIMe]拠点長

医学研究への情熱 ―発見と出会いの喜びに導かれて

私の医学研究の歩みは、1988年に大学を卒業し眼科臨床の研鑽を始めた時に始まった。当初は臨床に専心していたが、ちょうど角膜上皮幹細胞という新しい概念が提唱された時期であり、その革新性に魅了され医学研究を開始した。

1998年には米国ソーク研究所のFred H. Gage教授のもとに留学した。教授は成熟脳における神経幹細胞と生涯続くニューロン新生を発見した世界的権威であり、その薫陶は幹細胞生物学の基礎を学ぶだけでなく、国際的な友情や異文化体験を通じて私の人生に大きな広がりをもたらした。

帰国後は難治性角膜疾患の治療を目指し、自己角膜輪部や自己口腔粘膜由来の上皮細胞シートを開発し実用化へと導いた。また、ヒトiPS細胞を用いて眼発生過程を再現する「SEAM(眼オルガノイド)」を確立し、再生医療や疾患研究への応用に道を拓いた。さらに、SEAMを基盤とした角膜上皮オルガノイドを構築し、世界初のiPS細胞由来角膜移植の臨床試験を2019年に開始、2022年には安全性と有効性を示す成果を得た。また、SEAMを用いて結膜、涙腺、網膜オルガノイドの開発にも成功した。

人生100年時代を迎える中、現代医学は慢性疾患の克服や個別化医療の実現といった課題に直面している。私はその解決に向け、物理空間と仮想空間を融合させる「ヒューマン・メタバース医学」を提唱した。2022年には世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、大阪大学にPRIMeを設立。ヒトの生命現象をデジタルツインとして再現し、未来予測や創薬に資する技術開発を推進している。
私の研究の原動力は、新しい発見と多様な人との出会いに根ざした喜びであり、それこそが継続的な探究を支えている。

●森 勇介  大阪大学大学院工学研究科 教授、株式会社創晶應心 代表取締役

心理学的アプローチによるプロジェクト活性化とイノベーション創出 ~異分野連携が上手く行く、とっておきの方法~

私は1993年にCsLiB6O10(CLBO)という新しい非線形光学材料を発見しました。CLBOは、波長変換で深紫外レーザー光を発生する特性が既存の材料よりも優れ、今日では、半導体製造において不可欠な結晶として実用化されています。CLBOは、高品質結晶化という困難な課題を、「育成中に溶液を強制的に攪拌する」という非常識なアイデアでクリアしたものです。異分野連携プロジェクトでは、このアイデアを最も結晶化が難しい材料である蛋白質に適用したところ、それまで実現不可能であったレベルの高品質化や大型化に成功しました。その成果をもとに株式会社創晶を起業しています。

現在、医工連携プロジェクトで尿路結石の形成機序の研究開発をしていますが、従来では常温で検査する尿を冷却して検査を試みたところ、患者さんと健常者では異なる結晶が析出することを発見しました。患者さんからはリン酸カルシウム、健常者からはシュウ酸カルシウム結晶が析出するのです。尿中でのリン酸カルシウム結晶の生成を抑制できれば尿路結石を予防できるのではないかと期待し、研究を進めています。
●松本 慎一   神戸大学大学院医学研究科 肝胆膵外科 客員教授、

糖尿病根治のための膵島移植

我が国において糖尿病は、予備軍を含む患者数が2,000万人に上るとされる国民的疾患である。日本人の糖尿病は、インスリン分泌能の低下が主な原因である。根治できない病気とされているが、インスリンを分泌する膵島細胞を移植することで、根本的な治療となりうる。
私は、大学院生時代に膵・膵島移植前の膵臓保存の研究を行い、その後、臨床応用を目指して留学したミネソタ大学で、膵島移植のためのミネソタ大学膵島分離法を開発した。現在、ミネソタ大学膵島分離法は米国において標準になっている。

2004年には京都大学にて、日本で1例目の膵島移植を実施し、2005年には世界で初めて親子間の膵島移植を成功させた。
一方で、移植医療の最大の課題はドナー不足である。
ドナー不足を解決すべく、2012年から医療用ブタから膵島を分離し、移植する異種膵島移植の研究および臨床応用を開始した。臨床応用はニュージーランドとアルゼンチンで実施し、安全性及び有効性のデータを蓄積した。これらのデータをもとに、いよいよ米国で異種膵島移植を行う準備が整った。
日本には、異種膵島移植行うための医療用グレードの豚が存在しない。そこで2023年に、医療用ブタを作成するために一般社団法人「医療用ブタ開発機構」を立ち上げた。現在、日本でも異種膵島移植を行うために様々な活動を行っている。

 

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