
医療ガバナンス学会 (2025年10月28日 08:00)
地方独立行政法人神奈川県立病院機構
元理事長 土屋 了介
2025年10月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
主として実施する医師に係る基準(厚生労働省通知)を無視
放射線治療の中でも最も強力な治療といわれる重粒子線治療を「主として実施する医師に係る基準」が厚生労働省から通知されています。「十年以上の放射線治療経験、放射線専門医であること、重粒子線治療の療養に二年ないし一年(療養経験の内容による)以上の経験を有すること、主として実施する医師又は補助を行う医師として十例以上の症例を実施し、そのうち主として実施する医師として五例以上の症例を実施していること。」と示されています。
しかしながら、開示された照射録の医師名欄には、主として実施する医師として五例以上の症例を実施していない医師が単独で記名されています。これも患者さんの安全を無視した行為と言えます。
厚生局と支払基金は安全な医療のために的確な指導をすべき
令和6年(2024年)6月、関東信越厚生局と診療報酬支払基金に対し、診療放射線技師法違反であることを告発しました。直後に、受理したとの電話がありましたが、その後、一年以上経った現時点まで、患者さんの保護や安全な医療への改善について何ら動きがありません。
厚生局は医療機関が健康保険法等に基づく保険診療に反する医療行為に対しては、支払基金への診療報酬の自主返納を命じています。今回の事例は安全な医療を無視した悪質な行為であり、的確な指導が必要と考えます。
患者さんと県民へのお詫び
上記の行為は、平成27年12月から平成29年12月までに行われた行為であり、当時、私は県立がんセンターの設置者である病院機構の理事長でした。「主として実施する医師」の資格を持たない医師が重粒子線治療を一人で実施したがっているとの情報を得ましたので、症例の多い先行施設に研修に派遣しました。しかしながら、県立がんセンター病院長らは、不必要な派遣をさせたとして、県知事に理事長解任を要求し、県知事は私を解任しました。
理事長として十分な対応ができず、照射録への署名がないことは解任後に判明したため、患者さんを守ることができなかったことを、この紙面をお借りしてお詫び申し上げます。
「安全な医療を提供できず、申し訳ありませんでした。」
神奈川県弁護士会は返金要求する患者さんの支援をお願いします
法律違反、通知の無視による医療は明らかに詐欺行為です。患者さんは神奈川県と病院機構に対し、300万円以上も支払った診療費の返金を要求する権利があります。我が国の保健医療システムは専門家でも分かりにくいので、弁護士の先生方は、是非、患者さんを無償で支援してくださるようにお願いいたします。