医療ガバナンス学会 (2011年4月23日 14:00)
当然のことながら、地理的条件から平時でも余裕がある状況で透析ができるわけではなく、今回の震災で患者さんが集中し、いわゆる”受け入れ可能”という数 を越えての受け入れでした。しかしながら、病院・民間全体で協力し、スタッフは負担が非常に増えることになることはわかっていても、非常事だと言ってつら そうな顔ひとつ見せないで、受け入れ態勢づくりを調整しがんばってくれました。
搬送者リストに、最後にいつ透析したのかや年齢などの情報がわからない患者さんが5名おり、その方々の状態がどうなのか懸念しておりましたが、幸いにも、 震災後に一度も透析を受けられなかった方はおられませんでした。(4日間で1時間しか透析ができなかった方が1名おられました。)45名のうち、初期トリ アージ(救急看護師がバス内に入って施行)で救急処置対応としたのは2名。室内へ移動後、入院・外来トリアージで、外来透析患者さんとして来られた25名 の内、敗血症疑いと心不全で2名を入院へ変更。敗血症疑いの1名は、速やかに透析施行。比較的状態安定とトリアージした入院患者さんを、日頃より診療連携 をしている近隣(車で約1時間)にある透析ができる病院が受け入れてくださいました(館山病院、中原病院、安房地域医療センターに感謝いたします。)。他 の入院患者さんは亀田総合病院に入院する運びとなりました。
また、外来透析となる患者さん方は、当日、日頃は講演会に使用しているホールにベッドを並べて一泊していただき、18日からかんぼの宿鴨川のご協力でそこに滞在し、外来透析に通院することになりました(かんぽの宿にも感謝いたします。)。
これから先は、避難されてきた透析患者さんにとっても、受け入れ施設スタッフにとっても、大切な長い道程になるのだと思いますが、これには、受け入れ施設 で元々透析されている患者さんのご理解やご協力が重要になるのだろうと思います。同じ透析医療を受けている方がこの困難のときを乗り越えられるよう助け 合っていただけたらと思います。
今回の透析患者搬送については、個人特定、トリアージ、収容まで2時間。直前までほとんど情報がなかったため、個人特定が難しい状態で搬送されてくるこ となど、平時の医療では考えにくいような災害時の混乱により起こりうる事態も想定して受け入れ手順を作成したことが、収容までを短い時間で遂行するのにも 役立ったように思います。そして、透析時間帯振り分け調整、入院患者診察、透析室での個人資料やプログラム設定、患者プロファイルのカルテ記載などは深夜 に至り、ハプニングもたくさんありましたが、大きな事故はなく受け入れは無事完了いたしました。診療科・職種を越えた連携と多施設連携でした。
行政機関が大きな混乱の中にあると聞くなか、民間ベースの連携で800人という少なくない数の患者さんの生命を救えたのは、今後の救援活動にとっても大きな意味を持つと思われます。今回の成功例を次にぜひ生かしたいと思います。