最新記事一覧

Vol.25230 針の不要なインスリン治療ができる?

医療ガバナンス学会 (2025年12月4日 08:00)


■ 関連タグ

この原稿は中村祐輔の「これでいいのか日本の医療」(2025年11月25日配信)からの転載です。
https://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2025/11/25/205302

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事長 中村祐輔

2025年12月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

先週のNature誌に「A skin-permeable polymer for non-invasive transdermal insulin delivery」というタイトルの論文が発表されていた。

これまで、湿布薬や貼薬のように「皮膚から薬を入れる」ことができるのは、分子量500以下の薬だけである。消炎鎮痛薬の湿布が最もよく利用されていますが、冠血管拡張作用のある硝酸イソソルビドやニトログリセリンを含む貼薬などは、皮膚を通して成分をゆっくり放出します。しかし、分子量約5800の インスリンのように、大きな分子量のペプチドやタンパク質などは、皮膚が強力な壁となって侵入を防ぐため、注射するしか方法がなかった。コラーゲン(分子量約30万、コラーゲンペプチドは分子量数千)を塗ると皮膚がプリプリになるというのは理論的には無理なのだ。

この論文では「poly[2-(N-oxide-N,N-dimethylamino)ethyl methacrylate](OP)」という特殊な素材(ホモポリマー;poly[ ]とあるのは[2-(N-oxide-N,N-dimethylamino)ethyl methacrylate]という名の分子をいくつもつなぎ合わせたという意味を発見した。これが薬の「運び屋」として働き、インスリンを体内にとりこむことができるとのことだ。 このOPは、場所によって性質を変えることで、皮膚のバリアを突破する。皮膚の表面(賛成を帯びている)では、「プラスの電気」を帯びて、皮膚表面の脂質の間を通り抜ける。皮膚の下(中性)に入り込むと、OPは電気的な性質を失い、細胞膜の上をピョンピョンと飛び移るように移動できるようで、それによって血管やリンパ管まで到達可能になるとのことだ。

このOPにインスリンをくっつけて、糖尿病のマウスとミニブタの皮膚に塗ったところ、注射をした時と同じように、血糖値が正常な範囲まで下がったようだ。人でも問題なく使えるなら素晴らしい。この技術が実用化されれば、糖尿病の患者さんが毎日痛い注射を打たなくて済むようになるかもしれない。 がんワクチンも痛い目をせずに、利用することができるかも?と期待が膨らむ。

しかし、しかしだ。腰痛や肩こりに湿布を貼った際、風呂上がりの体が温まったときとそうでないときには、感覚的に大きな差があるように思う。スポーツ時の発汗が多い時にはどうなるのだろうか?私のように気が弱く、緊張すると汗腺が一気に解放され、汗が染み出てくるような人間には、どうなのか?薬剤の腸管からの吸収にも大きな個人差はある。・・・・・・・とどうでもいいようなことが気にかかるのは私だけか?

 

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ