
医療ガバナンス学会 (2025年12月15日 08:00)
JA尾道総合病院/田辺クリニック/合同会社MONSHIN
田邊 輝真
2025年12月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
■ 死後CTは保険適応ではない
同意書を取り、自費でお願いする病院もある。病院の負担でサービスとして行うところもある。しかし、同意を求められたご遺族は、「なぜお金が必要なのか」という怒りの矛先をどこに向ければいいのか分からない。クラークさんに怒号が飛ぶこともある。
■ 解剖医が圧倒的に足りない
依頼しても、「いつ戻ってくるか分からない」という現実がある。ご遺体が家に帰れない時間が長くなるほど、グリーフケアは難しくなる。
■ 現場はどこまで責任を持つべきか
救急は「生きている人を優先する」。だから死後の手続きは後回しになりがちで、調整も曖昧になる。
私は、この構造こそが「死体格差」だと感じている。
調べられる死と調べられない死。
時間・お金・地域差・制度の隙間が、死後の扱われ方に影響してしまう。しかし現場では、「誰かが悪いわけではない」ということも、同時に感じている。警察は事件性を迅速に判断する責務がある。医療は生きている人に資源を向ける役割がある。法医学者は、少ない人数で膨大な責任を背負っている。現場だけでは解決できない。
だからこそ、“見えないままの死”をどう扱うかは、社会全体で考える必要がある。あの日の子どもの死を前にして、私は「死因究明の価値」と「現場の限界」を痛いほど感じた。