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MRIC Vol.25244 日本感染症学会の学閥構造とCOVID-19政策――長崎大学の影響力②

医療ガバナンス学会 (2025年12月24日 08:00)


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この文章は長文ですので2回に分けて配信いたします。
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http://expres.umin.jp/mric/mric_25243-3.pdf

匿名

2025年12月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

本稿は、コロナワクチンそのものの是非を主題とするものではない。しかし、接種への公的補助が大幅に縮小された2024年秋以降も、学会は引き続き高齢者や基礎疾患を有する者に対し追加接種を強く推奨してきたものの、同年秋の追加接種率は高齢者も含めて大きく低下した。一方で、映画『ヒポクラテスの盲点』に象徴されるように、コロナワクチンの負の側面が社会的に広く認識されつつある状況も相まって、一般国民の反応は必ずしも芳しくなく、2025年秋の接種率はさらに低下することが見込まれる。また、医師を含む医療従事者の間にも、追加接種の意義に懐疑的な見解を持つ者は少なくない。

COVID-19による死亡数は依然としてインフルエンザの10倍以上とされるものの、「肺炎死であっても COVID-19陽性であればコロナ死に計上されているのではないか」という疑問が残る。追加接種率の低下が本当に医療逼迫を招くのか、接種推進側はさまざまな交絡因子を十分に考慮した精緻な検討を示す必要があるのではないか。

感染症学会は2025年8月に「新型コロナウイルスワクチン定期接種の公的助成継続に関する要望書」を公表した 7)。しかし、学会だけが接種推進一辺倒で、コロナワクチンの負の側面にほとんど言及しない姿勢を続けるならば、公的補助を縮小する国の方針や、追加接種に慎重な世論との乖離がさらに深まるのではないか。結果として、感染症学会そのものの信頼性を損ねる恐れがある。追加接種を推進する以上、感染症学会は本当に説得力のある根拠を示すことができるのかが問われている。

このような“意固地”にも映る学会の態度は、理事会が特定の学閥により実質的に支配され、多様な意見が言いにくい雰囲気になっている可能性と、本当に無関係なのだろうか。

国民が納得できない政策は、どれほど専門家が強く推奨しても実行困難である。2024〜2025年に顕著となったコロナワクチン追加接種率の低迷は、その典型である。エビデンスの正しさとは別に、政策形成の過程が見えず、議論が特定の専門家集団に偏っているように映れば、人々は「自分たちの声が反映されていない」と感じ、政策への参加意欲を失う。

さらに専門家への信頼が揺らぐと、正しい政策であっても国民に届かず、逆に不十分な政策が修正されないまま維持されるという悪循環が生じ、公衆衛生全体の信頼性が低下する。こうした事態を避けるためには、透明性のある政策決定、多様な立場の専門家によるバランスの取れた議論、製薬業界との関係を率直に説明する姿勢、そして異論を排除せず議論を可視化する文化の醸成が必要ではないだろうか。感染症に限らず公衆衛生政策は国民の理解と信頼を得てはじめて機能するのであり、その基盤を支えるのは開かれたプロセスと説明責任である。

長崎大学には、Biosafety Level 4(BSL-4)施設—極めて危険で治療法・ワクチンのない病原体を扱うための、最も厳格な安全基準を備えた研究施設—である「長崎大学 高度感染症研究センター」が稼働している 8)。本施設は、河野茂前学長(第二内科前教授)の強い主導のもとで推進された経緯があると報じられている9),10)。本施設のセンター長は長崎大学小児科前教授の森内浩幸氏であり、小児へのワクチン接種推進の立場ながら、映画『ヒポクラテスの盲点』にも唯一出演し、コロナワクチンの問題点を認めた希少な専門家でもある。

この施設は附属病院や医学部を含む医療系キャンパス内に設置されており、患者や学生への安全性への懸念から、近隣住民の根強い反対があったものの、それを押し切って建設された。反対運動には、長崎大学工学部の吉武裕名誉教授も加わっており、学部は違えど学内の“身内”からも安全性に懸念を抱く声が上がった格好である。反対デモは長年にわたり行われているが、大手メディアでの扱いは小さく、全国的な注目は限定的である。長崎大学関係者の中には、「またやっているのか」という程度の受け止めをしている向きもあるようだ。
2025年11月には周辺住民らが、「数十万人の幸福追求権が犠牲となる」と国を訴えた「施設指定取り消し訴訟」が長崎地裁で開始された11)。

一部では、トランプ政権以降アメリカで機能獲得研究(Gain-of-Function)が事実上実施困難となったため、その研究の一部を日本のBSL-4施設に誘致しようとする動きがあるのではないか、との指摘もある。
誤解のないよう強調しておく。本稿が指摘しているのは、感染症学会および関連学会における「特定学閥の支配の可能性」という構造的問題であり、感染症学会そのものの存在意義を否定したり、長崎大学全体や個々の関係者を批判・中傷する意図は一切ない。むしろ、臨床感染症学に本気で取り組む大学が長崎大学以外にきわめて少なく、他の学派が育たなかったことが背景としてあるのだろうと筆者は考えている。

本稿で述べた事項の多くは、暗黙の了解として共有されてきたにもかかわらず、指摘しにくさゆえに十分に顕在化してこなかった側面が大きいのではないだろうか。本稿では、あえて「空気を読まず」にこれらを明文化し、問い直すこととした。なお、本稿で提示した情報はすべてWeb上で公開され、誰でも閲覧可能な情報を二次的に利用したに過ぎないことを強調しておきたい。したがって、内部事情を知る関係者による告発と本稿をみなすのは的外れである。

本稿でとりあげた内容は、個別の不正やスキャンダルとはいえない。本稿の目的はあくまで構造的な問題提起を行うことにある。健全な公衆衛生政策を確立するためには、学会の透明性を高め、多様な専門家による議論を促進し、国民の理解と信頼を確保することが必要であると、改めて強調しておきたい。本稿は匿名で公開するが、不快に感じる読者も少なくないと考えられる。しかしながら、批判的意見こそが、健全な議論には不可欠である。本メルマガを通じて、本稿への誤りの指摘や厳しい批判を含め率直なご意見をお寄せいただければ幸甚である。

参考文献
1) https://www.moneypost.jp/1311889
2) Maeda H et al. Effectiveness of primary series, first, and second booster vaccination of monovalent mRNA COVID-19 vaccines against symptomatic SARS-CoV-2 infections and severe diseases during the SARS-CoV-2 omicron BA.5 epidemic in Japan: vaccine effectiveness real-time surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS). Expert Rev Vaccines. 2024 Jan-Dec;23(1):213-225. doi: 10.1080/14760584.2024.2310807.
3) https://www.youtube.com/watch?v=EDTKVSZs9i8
4) https://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=797
5) Kayano T et al. Evaluating the COVID-19 vaccination program in Japan, 2021 using the counterfactual reproduction number. Sci Rep. 2023 Oct 18;13(1):17762. doi: 10.1038/s41598-023-44942-6.
6) https://zenodo.org/records/17114687
7) https://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=793
8) https://www.ccpid.nagasaki-u.ac.jp/about/
9) https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3385.html
10) https://www.m3.com/news/iryoishin/846214
11) https://www.ncctv.co.jp/news/article/16147916

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