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Vol.26002 久米島で実践する “起業家的”地域医療

医療ガバナンス学会 (2026年1月5日 08:00)


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本稿は、2025年10月15日に医療タイムスに掲載された記事を転載しました。

公益財団法人ときわ会常磐病院
乳腺甲状腺センター長・臨床研修センター長
尾崎 章彦

2026年1月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

■久米島病院との連携を実現

今年の8月8~9日の間、公立久米島病院を訪問しました。同院は今回初めて私たち常磐病院の研修医を受け入れてくださることになり、初回派遣のタイミングに合わせて挨拶に伺いました。

当院の臨床研修の特徴の1つは、全国各地に協力型施設を持ち、研修医が実質1年以上にわたってさまざまな地域で学べる点にあります。交通費や宿泊費などの経済的支援も行い、研修医が安心して現場に集中できる環境を整えています。

こうした研修制度を推進するのは、今の時代の研修医は働き方の「自由度」や「柔軟性」を重視しており、加えて、地域ごとに異なる医療者や住民と接することで、医療だけでなく人生観そのものを豊かにする学びが得られると考えるからです。

久米島病院との縁は、研修医が「沖縄で研修したい」と希望したことがきっかけでした。以前から親交のある、沖縄出身で群生(むりぶし)沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師に相談したところ、久米島病院を紹介してもらい、連携が実現しました。

■地域全体で島民を支える久米島病院

公立久米島病院は、島民の「医療のインフラ」として、24時間365日体制で医療を提供しています。診療所や歯科医院、介護施設、鍼灸院などとも密に連携し、地域全体で島民の健康を支える体制を築いています。

2000年の開院以来、久米島町と沖縄県による運営を経て、12年からは公益社団法人地域医療振興協会が指定管理者として同院を運営しています。

同協会は自治医科大学の卒業生を中心に設立された団体で、地域医療の支援を通じて全国の病院を支えてきました。都心部でも、東京ベイ浦安市川医療センターや都立練馬光が丘病院など、若手医師に人気の病院も運営しています。

22年4月から久米島病院の院長管理者を務める並木宏文医師によると、「現在では自分も含め、自治医大出身者に限らず幅広い医療者が参加している」そうです。

■観光客への透析も対応

同院の年間実績を見ると、外来患者が約4万人、救急対応が約2700人、人工透析が約4000件にのぼります。救急車の出動は年間約280件、ヘリ搬送は約100件に達し、訪問看護や施設訪問など、地域に密着した活動も精力的に行われています。

病院のすぐ隣にはヘリポートがあり、ここから沖縄本島の高次医療機関などへ患者を搬送します。

夜間などの緊急時には自衛隊のヘリコプターを利用することもあり、年間約100件のヘリ搬送のうち15件ほどが自衛隊機によるものだそうです。

特に、緊急手術や高度な処置が必要な場合には、こうした空路搬送が命をつなぐ重要な役割を果たしています。また、並木院長によれば、「透析は観光客にも対応しています」とのことで、観光地ならではの特色ある医療提供体制であると感じました。

■印象的だった安心して学べる環境

8日に、常磐病院の午前外来を終えて羽田から那覇経由で久米島へ向かいました。久米島は、観光地化の進む沖縄本島とは違い、昔ながらの自然が今も息づいている島でした。

翌9日、今回お世話になった初期研修2年目の酒井琢人医師の研修最終日に合わせて、久米島病院を訪問しました。

外来では、酒井医師が主担当として診療を行っており、ブースの扉には彼の名前が掲示されていました。私が後ろで見学していたこともあり、やや緊張している様子も見られましたが、丁寧で落ち着いた診察姿勢に成長を感じ、頼もしく思いました。

彼の研修期間中には、東京ベイ・浦安市川医療センターや水戸協同病院からも専攻医が派遣されており、年齢や経験の近い先生方からも多くを学んでいました。

現在、初期臨床研修では4週間の外来研修が必修化され、外来におけるプライマリー・ケア能力の習得が重視されています。

その点、久米島病院での研修では、初期対応を自ら行いつつ、疑問があればすぐ後ろに控える専攻医に相談できる体制が整っており、安心して学べる環境が印象的でした。

■地元の住民と交流を深める研修医

また、酒井医師が地元の人たちや他地域から赴任してきた医師たちと、公私にわたって積極的に交流を深めていたことも印象に残りました。

夜に訪れた飲食店でも、すっかり地元の常連のように溶け込んでおり、「これまでの研修で一番楽しかった」と語る笑顔が印象的でした。水戸協同病院から赴任していた栗村純弥医師とも特に親しくなり、毎日のように一緒に過ごしていたそうです。

こうした経験は、地域医療の現場でしか得られない学びであり、人とのつながりを通じて医師としても人としても成長する大切な機会です。

変わりゆく医療環境に生きていく研修医たちの将来に思いを馳せつつ、今後も研修医の目線に立って研修環境を整え、彼らの挑戦と成長を支えていきたいと思います。

 

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