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Vol.26003 モンドラゴン協同組合群が生まれた土壌

医療ガバナンス学会 (2026年1月6日 08:00)


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院長 橋村威慶

2026年1月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1930年代、スペインはヒトラーやムッソリーニから軍事支援を受け、フランコは政権が確立された。反自由主義、反マルクス主義のフランコの思想性と政権獲得の背景からフランコ政権はファシズム的要素が強い政権として発足された。その後、スペインドイツやイタリアの様なファシズムと一線を画しながら独自の独裁体制を築き上げた。そしてフランコは国家元首及び軍の総帥として揺るぎない権威主義体制を築いた。その権力掌握のプロセス、また1931年に王政の崩壊という歴史的背景からモンドラゴン協同組合の発展につながったと筆者は考えている。

・宗教による統制
フランコは内戦時、自軍を反ボリシェヴィキのキリスト教徒による十字軍と名づけた。これは政権獲得後にキリスト教を利用するための布石だったのだろう。疲弊した教会側も渡りに船だった。フランコ政権は国家カトリック主義として掲げ、密接な協力関係にし、教会は政権のイデオロギー的支柱となった。そして教育、検閲、社会生活のあらゆる面で特権と影響力を行使した。教会はフランコ体制の主要な支持基盤の一つであり続けた。しかし密接な関係は政権内での経済運営方針の違い(自由化路線とアウタルキー)や、50年代以降のカトリック界の一部が社会での影響力拡大し、回復を目指す過程で、政権との間に軋轢や緊張もあった。

・イデオロギーの柔軟性とプラグマティズム
フランコはヒトラーやムッソリーニほどのカリスマ性はなかったと言われている。ヒトラーやムッソリーニがそのカリスマ性で体系的なファシズムやナチズムのイデオロギー(人種的優位性、全体主義的統一国家の建設など)を掲げたのに対し、カリスマ性が劣るフランコはイデオロギーよりも混合的でプラグマティック(実利的)性を重要視した。フランコは、スペイン内戦の段階で、カトリックの復権、軍国主義、そしてスペインの伝統的な保守主義を組み合わせた権威主義体制をすでに視野に入れていたと思われる。
内戦後フランコは自身を終身統領(カウディーリョ)と称し、自身の政党(ファランヘ党)を唯一の合法政党とし、軍やカトリック教会、伝統主義者など様々な右派勢力の連合体として機能させ、イデオロギーよりも権力維持と秩序回復を優先した。

・巧みな外交戦略
第二次世界大戦前後の国際情勢は非常に複雑で各国が思惑を通すのは困難な状況であり、フランコ政権も例にもれず難しい舵取りの中、巧みな外交戦略と変遷を繰り返し結果として長期政権を維持した。
この情勢はフランコ政権にとって幸運をもたらしたと行っても良いだろう。スペインは内戦直後で国力が疲弊していたため、第二次世界大戦に参戦できず「非交戦」の立場を貫き国家滅亡の憂き目を免れた。軍事支援を受けたドイツのヒトラー政権はこの時期に滅びている。
戦後独裁体制として、連合国から激しい非難を受け国際的に孤立していたが、米国に基地提供を認める代わりに、軍事・経済援助を受ける協定を締結し国際的孤立が解消された。(1953年米西防衛協定)
また1960年代以降、ヨーロッパ諸共同体(EC)への加盟を模索した。しかし民主化を条件とするEC側から拒否された。(正式な加盟はフランコ没後の1986年)実現はしなかったが フランコのプラグマティズム性はここでも伺える。

総じて、フランコ及びフランコ政権は体裁やイデオロギーは二の次で、唯一その権力を維持するため、ありとあらゆる面で柔軟に国内外の政策を決断してきたのだろう。また独ソ戦が行われた際、義勇兵(青い師団)をソ連に派遣したところからもわかるように、共産主義を徹底的に敵対視し、国民の目線を共産主義に向けさせ、フランコ政権に対する鬱積した感情をかわすことに成功した。
なりふり構わない権力の維持は決して国民のためではなかった。国家権力維持のための政策は即効性がありながらもスキがあり、杜撰とも言える面もあった。この間隙を利用し、国民はスペイン人本来の社交性と多様な価値観を取り入れる精神を残して行った。それはフランコ没後に一気に開花し、モンドラゴン協同組合群として新しい第3セクターを生み出した土壌となった。
参考文献
・モンドラゴン 労働者協同組合の現在 大原社会問題研究所雑誌 No.710
・入門 モンドラゴン協同組合 全国農業協同組合中央会
・Mondragon Cooperatives and the Utopian Legacy: Economic Democracy in Global
Capitalism”(Errasti et al., 2025)
・バスク・モンドラゴン―協同組合の町から(石塚秀雄著、彩流社、1991年)
・アリスメンディアリエタの協同組合哲学:スペイン・モンドラゴン協同組合の創設思想
(J.アスルメンディ著、石塚秀雄訳、みんけん出版、1990年)

 

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