
医療ガバナンス学会 (2026年1月22日 08:00)
※『ロハス・メディカル』vol.175に掲載された対談の転載です。
日本プレコンセプションケア協会代表
近藤優実
2026年1月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
梅村 そういうものに対して近藤さんとしたら何か取り組もうとされてることってのがあるんですか。
梅村 そうなんですよ。いろいろ調べていったらプレコンセプションケアっていう概念を見つけて、2006年にアメリカで早産児とか低体重出生児とかを予防しようっていう風に始まったんです。生活習慣を整えて飲酒とかタバコとか予防しとくと元気な赤ちゃんが生まれるよねっていう本当に基本的なことだけどやっていこうってなって、WHOでも12年に大事だねってなって、日本では東京にある国立成育医療センターがそういうの大事だねって言って18年に成育基本法っていう法律ができて取り組んでいこうってなったんですよ。
でも病院で始まってるから、今のところ妊娠にまつわる健康診断をしてるような感じでしかないんです。自治体とかでもプレコンセプションケアをやりましょうって取り組んでるんですけど、少し前にあったブライダルチェックの名前が変わっただけで。
梅村 役所がやってることって、異常がないですかみたいな感じのことが多いわけですよね。近藤さんがやりたいことは、どっちかというとお産に向けての地力というか環境整備というか、そういうものをやるのがケアじゃないかって、そんなイメージですか。
近藤 そんなイメージです。
梅村 そういうのは確かにあんまりないよね。これちょっと医学界の問題もあると思う。異常が出たら叩きましょうっていうのが、どっちかというと医療の世界でしょ。
近藤 そうなんですよね。私も看護師の勉強をしてきたから問題解決型の医療っていうのにどっぷり漬かってきたんですけど、助産師の考え方って良い状態をより良い状態にっていうウェルネスの思考だから、そこに辿り着くのがめちゃめちゃ難しくて。
梅村 医学の世界で、よくリスクファクターとか呼ぶでしょ。確かに確率の高い危ない人を選別する学問ではあるんだけども、総合的にみんなを底上げしていこうっていう考えにはなりにくくて、両方の資格を持ってるから近藤さんはそこに気づいたんじゃないかなと思いますね。でもどうしましょうこれ、そういうのを日本にこれから広めて、それはお前ら政治家の仕事やろうというのもあると思いますけども、近藤さんとしたらアイデアとかこれからやろうとしてることとか青写真みたいなのはおありなんですか。
近藤 一応アメリカがプレコンシプションケアっていうものを言い始めて、それが成功してるかどうかで言うと予算をしっかり取りましょうって言って、アメリカの方が二分脊椎症で生まれる子たちが多かったのが今は日本の方が多いとか成功してる部分もあるけど、なんかアメリカのパクリをしたらうまくいくっていうのはあんまり思ってなくて、でもいいなと思うのは前思春期って言われる10歳ぐらいの子から20代の年齢の人たちがターゲットになるよっていうことになってるので、理想で言うと、学校で望まない妊娠の話はもちろん伝えていった方がいいと思うんですけど、いつか妊娠を望んだ時にどうしたらいいかっていう話もしていってあげた方がいいのかなと思ってて。
梅村 そうやね。それは確かにないですよね。
近藤 妊娠についてのプロセスは一応教えていいってなってるけど、分娩についてのプロセスは教えちゃダメって。
梅村 それはちなみになんでなんですか。今度また1回文科省に訊いてみようと思うんですけど。
近藤 学習指導要項でなってて、それを改定してほしいって運動してる人たちは山ほどいるっちゃいるんですけど、性の話って、知らない子たちに知らせて、どんどん興味を持ったら良くないみたいな、なんか表現ありますよね。
梅村 寝た子を起こすな、みたいな。
近藤 そう、それです。
梅村 でも寝たままやったらエラいことになるっていうのもあるわね、ほんとに。
近藤 だからなんかそういう教育の部分も興味があって。もう1個は、やっぱり自分の生理について正常と異常っていうのを女性自身が理解してないんですよ。とりあえず小学校の時にナプキンを教えてもらって生理用品としてこういうものを使うんだよって教わって、ゴミ箱はこれを使うんだよっていうとこまでは教わってるんですけど、月経の量が正常か異常かとか教わってないし、ナプキンを見せ合うとかいうことも私たちしません。
でも産婦人科に行くと月経量が普通・少量・過多みたいな丸を付けるとこがあって、過多だったらやっぱり子宮筋腫とかなんか異常が含まれていることがあるけれど、自分としては普通だからって気づかない。だから私はトマトジュースと生理用品っていう取り組みをやってて、トマトジュースをシリンジで吸ってもらってナプキンにかけてもらうんですよ。どれぐらいが正常ですかとか、自分はどれぐらいですかって、気づいてなかったねってじゃあ病院行こうかとか大丈夫だねとか言う話をして。
梅村 なるほどですね
近藤 で、プレコンセプションケアって女性だけが対象ってわけじゃなくて男性も。これまた、なんか現場で変だなぁと思ってることがあって、クリニックで働いている時の方が多いんですけど、産後3日目で明日退院になるっていう時になんか夜中にメソメソしてる人たちがいるんですよ。どうしたんですかって行くと、明日から家に帰るのが不安ですって言われて、授乳の練習も世話も一緒にやってきたから大丈夫じゃないですか、育休取ってるご主人いるんでしょうとか言うと、そうなんですけど夫は仕事で大変だし一緒にやるっていうテンション感がいいんだけど手伝ってとしか言えないし、大変だっていうことを夫に言うのが申し訳ないしとかで、夫との関係がそんなに悪いんだって人がめちゃめちゃ多いんです。
日本て察してっていう文化だから、何に困ってるかって言語化するのが下手だし、しないのが美徳みたいな人たちが、産後鬱とかに引っかかってくるなーって思うので、やっぱりもう1個パートナーシップがすごい大事だなーって思って、取り組む課題だなって。
梅村 今おっしゃったような取り組み、普段のお仕事しながら1人じゃなかなか難しいじゃないですか。組織化してって、そういうコンセプトを日本に広めていこうみたいな夢というか計画はおありなんですかこれ。僕らもお手伝いせなあかんねんけどね、もちろん。
近藤 あります。広めたいことの1つ目は、さっき寝た子を起こすなという話がありましたけど、寝過ごした方がよっぽど恐ろしいぞってことです。お産の仕方を知るタイミングがないまま妊娠した人たちは、お産イコール痛いという印象が強過ぎて不安も強くなって、とりあえず無痛分娩のような流行でお産する場所を選んでます。もっと命を迎える瞬間とか家族の始まりというイメージがあっていいと思います。で2つ目として、プレコンセプションケアの講座に補助金が付いて、より多くの人にお産の話を妊娠前から聞いてもらえたら嬉しいです。講師は、自然なお産を担ってきた助産院の助産師がピッタリだと思います。3つ目は、カップルの愛情曲線って聞いたことありますか。
梅村 はい、あります。
近藤 お産までは夫に対してラブが強いけど、生まれた瞬間から子どもに愛情が移ってく、でも夫にも愛情が向いてる人は夫とのコミュニケーションがうまくいってるからっていうのなんですけど、だからそもそも妊娠する前からのコミュニケーションづくりが大事だなって思ってて。
梅村 そういうことをやっぱり情報として、すべてのカップルが知っとかなダメですよね。子どもを産んだらなんか別人でした、愛情が冷めましたみたいな話で、生理学的にはそういうこともあるんだけども、子どものこととか家族のことを考えたら、こういうコミュニケーションなり対応っていうのが必要になるんだよって知識があるかないかだけでも全然違いますよね。
近藤 女性だけじゃなくって男性にも、そういう妊娠出産子育ての流れを平等に知る機会が必要と思うんですね。男性の産後鬱とかも言われるようになり始めましたし。
梅村 あ、聞きます。
近藤 私はまだ女性の方しか現実としては思いつかないけど、まあ知識を得るようになってきたら、いいこと悪いことどっちもあると思うんですけど、広がってくるんだと思うんですよね。
梅村 これからもそういった取り組みをやっていこうということで、今ウルトラマンを続けてるわけですね。また色々と教えていただければと思いますけども、お体に気をつけてくださいね。
近藤 そうですね、ありがとうございます。
梅村 自分のやりたいことをやっている時って疲れを感じないんですけど、やりたいことだろうがやりたくないことだろうが、肉体ってやっぱり知らんうちに疲れてますからね。これから後輩にもまた楽しさを教えてあげないといけないから、近藤さんが倒れたらあきませんよ。
(経歴)
こんどう・ゆうみ●神奈川県出身。17年、東京医療保健大学医療保健学部卒業、看護師として兵庫県立淡路医療センターに入職。21年、同大助産学専攻科卒業。23年からバースハーモニー美しが丘助産院で勤務。
うめむら・さとし●衆議院議員。内科医。医療法人社団適塾会理事長。2001年大阪大学医学部卒業。参議院議員2期目途中の24年10月に衆議院へ鞍替え。日本維新の会・税制調査会会長。