
医療ガバナンス学会 (2026年1月26日 08:00)
この原稿は中村祐輔の「これでいいのか日本の医療」(2025年11月27日配信)からの転載です。
https://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2025/12/09/181642
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事長 中村祐輔
2026年1月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
注意欠如・多動症(ADHD)の注意欠如として、一つのことに集中が続かない、ケアレスミスが多くて物事を忘れるなどがあり、 多動症としては、静かに座っていることができない、無言で身体を動かさずにはできない、しゃべり続ける、順番を待つことができないなどがある。
米国の一部には、この診断数の増加は「過剰診断・過剰治療の危機」ではないかと警鐘を鳴らしている人もいる。実際には、過剰診断だけでなく、複数の要因が関係しているので、診断された人の増加を単純に“過剰診断”と断定することは難しいようだ。世界的な疫学研究では、ADHDの有病率は小児で約5.4%、成人で約2.6%程度とされており(結構多いように感ずるが)、地域間の差も小さいようだ。とすると米国の数字はやはり高いのだが?やはり、診断基準の変更・医療へのアクセスの変化やADHDに対する認知度の広がりが、診断された人の増加に影響しているようだ。
診断基準の緩和では、発症年齢が「7歳未満」から「12歳未満」にひろがり、成人では症状の数の基準も緩和された。この変更により診断される人の幅が広がったことがあるようだ。また、以前はADHDと自閉スペクトラム症、うつ、不安障害などの複数の診断をすることがなかったようだが、最近では、一人の患者に上記の病気を複数で診断されるようになったとのことだ。
また、SNSなどで情報共有が増えたことによって、これまで症状に気づかなかった人が、「もしかして自分もADHDかな」と思い、専門家に相談するケースが増えているようだ。以前は、女児の場合は不注意症状が中心なので、見逃されやすかったが、近年は、医療アクセスの改善に伴って、女性の診断が急増していることがあるようだ。デジタル機器の普及や日常環境の変化によって症状の顕在化を高めている可能性もある。
神経多様性(ニューロダイバーシティ)の観点から、ADHDを「治療を必要とする病気」ではなく「単なる脳の機能の多様性」と捉える考え方が広がっており、環境が変われば、能力を発揮できるという見方もある。一方で、医師や当事者・親の多くは、未診断や治療不足が学業不振・対人関係の破綻・怪我の増加など深刻な問題につながることを問題視し、医学的な介入の重要性を訴えている。効く可能性が高い薬剤が開発されたので、患者や家族にとっては心配な症状が改善されればと願うのも自然な願いかもしれない。