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Vol.168 「遺伝子医療革命」 医学生必読の書

医療ガバナンス学会 (2011年5月16日 06:00)


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東京大学医学部医学科6年
西川嘉一
2011年5月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


2000年6月26日、ビル・クリントン米国大統領とトニー・ブレア英国首相の二人が揃って記者会見に望んだ。外交問題の話ではない。科学の話しでだ。
人間のゲノムの解読の大半が終了したと発表した。
日本でも、大きなニュースとして扱われ、来る21世紀の科学技術の発展を予感させるものであった。それから10年、21世紀に入り遺伝子医療はどのように発展したのだろうか?
米 国立ヒトゲノム研究所所長としてヒトゲノム計画を指揮してきた著者が、この10年で何が出来るようになり、何が未だ出来ていないのかを語っている。また現 在は米国立衛生研究所(NIH)所長就任している。その観点から、これからアメリカが取るべき医療政策についても述べられている。

私は医学部5年生なのだが、臨床実習で患者さんに「最近、医療も発展して遺伝子とかいろいろわかるようになってきたんでしょ。どんな感じなのよ?」とい う漠然とした 質問を受けたことがある。そのときは、しどろもどろになりながら、ありあわせの知識を無理やりつなぎあわせただけの返事しかできず、苦い思いをした。
乳癌のBRCA1や鎌状赤血球貧血など、この本に書かれている医学知識の多くは、大学の授業で取り扱われていて、知っているものであった。BRCA1は 乳腺外 科の授業で、鎌状赤血球症は血液内科か感染症内科の授業で習った。ともに面白い話であったが、両者を遺伝子によるものという関連付けをすることはなかっ た。この本を読むことで自分の持っている知識がとても断片的なもので、体系的に整理されていないことに気付かされた。各科目で出てくる内容をバラバラに 知っているに過ぎなかった。そのため、先程の患者さんの質問に対して、系統立った話ができなかった。
そもそも大学の授業で扱うには、遺伝子医療は新しすぎて、体系的にまとめた授業ができる教員はほとんどいないだろう。そういうわけで、遺伝子医療がいっ たいどういうものなのかをまとめることが機会がないまま現在に至ってしまった。本書では患者の疑問からスタートして著者が回答していくという形式がとられ ている。なので、患者に遺伝子医療の現状を伝える 際に非常に役立つ。

話はかわるが、私の知る限り、卒後すぐに基礎研究に進むと明言している同級生は1人しかいない。もちろん、他にもいるのかも知れないが、せいぜい数人程 度だろう。しかし、この本を読むと、研究って面白い、基礎研究に行ってみようかなという気になる。性格を決める遺伝子はあるのか? 知性を決める遺伝子は あるか? など、面白いし、夢がある。
乳癌の家族歴から、BRCA1を発見され、実際の治療に役立っていくストーリーは読んでいるだけでもうれしくなるような出来事である。そんな発見ができたら絶対に楽しいに決まっている。

ところで、大学3年の時、フリークオーターという研究室で研究をするという期間があった。その説明会では、夢を語る研究室、実務的なことを語る研究室、 もちろんやる気のない研究もあった。実務的なこととは、研究者に必要な基本的な技能を習得できますという類のものだ。もちろん、それも重要ではあると思 う。
しかし出来の悪い学生の立場からすると、多少へんなことをいっている研究室でも、夢を語れる研究室に行ってみたいと思った。例えば、脳のイメージングで 人の感情はわかると言い切っている研究室と、研究者として必要な技能を身につけさせてくれる研究室どちらに行きたいか? 科学の夢のような本当の話がたく さん詰まった本書は、基礎研究を目指さない医学部生も、研究は重要であり、少なくとも臨床研究はしなければならいという気持ちを引き起こす、 motivativeな一冊である。

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