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Vol.169 東日本大震災被災地を訪問して

医療ガバナンス学会 (2011年5月19日 06:00)


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ベイラー大学病院/ベイラー研究所
膵島移植部門 瀧田盛仁
2011年5月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


ベイラー大学病院(米国テキサス州ダラス・フォートワース)では、病院グループを挙げ公式に東日本大震災救援のために義援金・物資の両面の支援を行っています(1)。今回、5月11日から15日の日程で救援物資を届けるため、被災地に入りました。

●東北道から相馬へ
まず、東北自動車道から相馬市に向かいました。福島県に入ったところから、路面の凹凸が激しくなり、震災の影響を徐々に知ることになりました。ナビゲー ションに従い、二本松インターで東北道を下り相馬市に向かったのですが、阿武隈山地を越えるために途中、狭路となり、道路を譲り合ってようやく対向車とす れ違うことができる状況でした。2時間弱の行程で、頻繁に福島と行き来するのは困難な道のりです。地元の医師から、南相馬市から福島へ震災後、約40回も の救急搬送が行われたと聞きました。
米国であれば、ヘリコプターでの患者搬送を考えるでしょう。また、私の地元の山口県では「県土1時間構想」という、県内の主要都市同士また隣県の重要都市 へ1時間で移動可能とする道路整備がすすみ、現在ではほぼ目標が達成されつつあります(2)。一方で相馬市及び南相馬市を合わせて人口10万人規模になり ますが、福島との行き来に長時間を要する状況でした。地元の人々曰く、「福島より仙台に出る方が便利」とのことでした。実際に、仙台の商業圏に相馬が入っ ているとのことです。
患者家族が避難生活をしなければならない現実や中長期的に今後の相馬地域の医療を考えたとき、頻回に搬送する必要性がなくなるよう、いち早く相馬地域で医療が完結するよう復興していくことが、医療現場からみた現実的な選択と思われます。

●いまだに瓦礫の山
続いて、宮城県石巻市に行きました。山側の高速道路はすでに応急工事が終了し通行できましたが、海側の道路は随所で寸断され、石巻港から市街地周辺は、震 災から2ヶ月たった現在もなお、現実とは思えぬ瓦礫の山の状態でした。わずかに残った家屋の基礎、道路の左右にうずたかく積まれたヘドロにまみれた家具そ してその臭い、原形をとどめない自動車の山、震災前はアスファルトで覆われていたであろう道路は、今は凹凸の激しい砂利道となっていました。また、訪問日 前日に降雨のあったため、所々、道路が冠水していました。瓦礫の量は尋常ではなく、もしかしたら、この中に行方不明者がいるのかもしれないことを考えると やりきれない思いになりました。
テキサス州ではこの時期、竜巻が発生し大きな被害を出すことがあるのですが、その光景と比べ、明らかに瓦礫の多さが異なり、被災人口の密集度が違うことが感じ取れました。今回の震災がいかに悲惨なものか比べるべくもありません。
「あの遙か山の麓まで津波が襲ったんだよ。ここには高い建物がないからさ、遠く沖に出ていた人だけが逆に助かって、陸にいた人はもうどうすることもできな かったんだべ」これは福島県新地町で出会った漁師の方の言葉です。沖合から約2kmにある主要幹線の国道6号線付近まで船舶が押し流され、港近くの道路で はアスファルトが牙をむくが如く鋭く立ちふさがっており、津波が単に地表を襲っただけでなく、地震も相まって地盤・地形自体に大きな影響を与えたことを知 りました。

●被災地医療を支える人々
実際に救援物資を届ける中で、被災地で尽力されている医師と話す場面がありました。特に南相馬は福島第一原子力発電所から20-30km圏であり、緊急時 避難準備区域に指定されています。「地震直後は、どうしようか、先の見えない絶望的な状況が続き不安に感じる日々が続きました。たくさんの支援を頂き、今 は地域の人々のために、逃げずに南相馬で診療を続けようと思っています」。避難準備区域にもかかわらず、診療を続けようとする姿に感銘を受け、困難にあっ ても患者に尽くそうとする医療人の魂をみた思いでした。

●復興への熱い思い
さらに、「今後のこの地域の復興を考えたとき、医療は必須です。震災前の状態に戻すのではなく、放射線被曝も視野に入れた医療拠点が必要です。」と続けら れました。その背景には、「被災者の多くは職を失い、経済的に生活ができない状況です。そこに医療も役に立つことができないだろうか」と。単に病気を治療 するだけでなく、その背景となる被災者の生活まで視野を広げ、次の10年の復興を考える姿に並々ならぬ地域医療への情熱を感じました。

●おわりに
今回、多くの関係者の協力の下に、ベイラー大学病院からの支援物資を届けることが出来ました。被災地での輸送にはボランティアとして、星槎大学の皆さんに 協力していただきました。皆様に感謝申し上げます。ベイラーの同僚からは現在もなお、被災地域を心配する声が寄せられます。被災地で直に見聞きした状況を 米国サイドに伝え、海外から震災復興に寄与したいと考えています。

参考Hp)
1) http://www.baylorhealth.com/
2) http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18300/joyfulroad/joyfulroad.html

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