医療ガバナンス学会 (2011年6月6日 06:00)
~ハリケーンカトリーナの失敗を生かせ。「ペットの避難・輸送基準法」の制定を日本でも!
放送作家 塩村文夏(しおむらあやか)
2011年6月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
【餓死する動物】
多くの民間ボランティアが危険を冒して警戒区域に指定される直前までレスキューをしました。なぜなら、何も持たずに避難をした飼い主さん達の多くが戻れず にいたこと、そして一時的に戻れたにしても避難所では動物を飼うことができないため、ペットを連れ帰ることがどうしてもできなかったためです。
ボランティアが町に入ると、首輪をしていても、リードのない犬がワラワラと出てきます。これは飼い主さんや、飼い主さんに頼まれ一時帰宅できた近所の方が 「生きて欲しい」と、鎖を外したのでしょう。多くの犬が人間に慣れており、人を見ると寄ってきて餌をせがみます。空腹なのです。レスキューされた子の中に は空腹からビニールや軍手まで食べてしまったおり、調子を崩していた子もいます。
犬や猫だけではなく、警戒区域には牛や豚などの動物もいます。残念ながら、多くの家畜の餓死が報告されています。折り重なるように餓死している豚の写真、死んだ母牛の横に立ち尽くす子牛の写真…。彼らもまた、原発事故の犠牲(者)です。
【上の指示がないと何でもできない行政】
被災者の家族でもあるペットや家畜達。多くの人が「救済を!」と求めていますが、満足いく回答は行政からありません。なぜなら「県が決めてくれないと動け ない」とか、「国が決めてくれないと動けない」という、ザ・お役所仕事だからです。日本には動物愛護精神のあるリーダーはいないようです。動物はまだ警戒 区域で帰らぬ飼い主を待っているというのに…。
決定権のある人が「ボランティアと協力して救済しろ。安全重視で」と指示すれば、どれだけ多くの命を迅速に救うことができるでしょうか。人間のことで手一 杯であろうとも、他県の議員や獣医師などの「協力者」は沢山いるのだから、なぜ一任できないでしょうか。こうしている今も、数多くのペット・家畜達が警戒 区域で飼い主を待っています。今はまだ人間を信じています。しかし、あと半年、そして1年も経過すると野犬化し、レスキューではなく、「野犬は危険なので 捕獲し、殺処分」という意見も出てくるかも知れません。今ならまだ間に合います。どうか、みなさん、政府や行政に陳情を。そして警戒区域ギリギリの地点で 今も保護活動を続けているボランティアに応援をお願いいたします。
【失敗を生かせ】
05年にアメリカを襲ったハリケーンカトリーナ。そのとき、ペットと引き離されるのを拒否して被災地に残った住民も多かったそうです。当時、5万匹以上の 犬や猫が被災地に置き去りにされる一方、ペットのために避難を拒否する住民も数多くいたそう。そのため翌06年10月、緊急避難時にペット同伴を認める 「ペットの避難・輸送基準法」がアメリカでは制定されています(5月28日の毎日新聞参照)。このような法律があれば、行政ももっとスムーズに色々と判断 が下せるはずです。
今回の災害の教訓とし、日本も、緊急避難時にペット同伴を認める「ペットの避難・輸送基準法」を策定すべきではないでしょうか。失われた数多くの小さな命。その死を決して無駄にしてはいけないと思います。きっと、ペットを失った飼い主さんもそう思っているはずです。
塩村文夏(しおむらあやか)
放送作家。担当番組 シューイチ(日テレ)、きょうのわんこ(フジテレビ)、夕焼け寺ちゃん活動中(文化放送)など。
飼い猫を保健所から引き取り、動物愛護活動に目覚める。4月22日の警戒区域が設定された日には、福島にボランティア活動に入った。
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