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Vol.203 学生が日本民間放送連盟会長にインタビュー(中)

医療ガバナンス学会 (2011年6月29日 06:00)


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インタビュー(中)「福島第一原子力発電所の事故の影響と健康管理」

東京大学大学院新領域創成科学研究科
サステイナビリティ学教育プログラム
修士課程2年
廣瀬雄大
2011年6月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


(上)より続き。

Q4)
福島第一原子力発電所の事故によって、放射能汚染について懸念されています。原発周辺の住民、原発作業員の健康管理、放射能汚染による土壌汚染など、見通 しのつかない未解決な山積み状態の課題をどのようにして解決していくのかが、今回の原発問題の本軸だと感じています。大震災から今日までの原発事故に関す る報道について振り返っていただけますか?

A4)
まず原発事故の報道を振り返りますと、特に震災後3日目辺りから、福島第一原子力発電所の報道が長時間にわたり中心になっていまして、民放局もこの件に関 する報道を中心としていました。その結果、被災後1週間目から2週間目の一番深刻な時期に、原発以外の被災地の状況が軽視されていたことは、大いに反省す べき点だと思っています。もちろん原発事故は大問題で、全国に関心のある問題であることは分かっています。原発事故だけが起きているのであれば、当然、あ のような報道の仕方でよかったのです。しかし、一時は被災した約16万人の方々がどこに住むのかという深刻な状況の中で、なぜ対応しきれていないのかな ど、いちばんがんばらなければいけないときに、がんばるべき自治体が空白になっていたのです。報道がこの部分をもっと掘り下げてもよかったのではないかと 思っています。原発事故による放射線放出が怖いので、避難する方向性になっていたのだと思います。もちろん福島では、こういった動きは当然ですが、岩手や 宮城でも同じ動きがあり、被災地・被災者対策に大変時間がかかったのも事実です。メディアが福島第一原子力発電所の事故に偏りすぎた結果なのではないで しょうか。

原発関連の報道が十分だったかどうかについては、議論のあるところです。原発事故につながった要因や復旧への対応策も明確に分からないまま今日に至ってい ます。このように、時間をかけた割には、正しく有効な報道の道を歩んでいたのかどうかという点については、十分反省しなければいけないことだと思います。 危険性をどのように判断するのか、風評被害、海水の汚染についての対策方法なども含め、あいまいな報道が多かったと思います。

Q5)
原発作業員の健康管理に関して言えば、万が一の治療に備えるために、造血幹細胞採取・保存を行うことを提案する動きがあります。先日、ある海外記者による インタビューに立ち会う機会があり、関連する専門医師たちにこの提案についてお聞きする機会がありました。この提案は100%確実な対策とは言えないそう ですが、彼らは真剣に考え、万が一の治療に備えるためにベストなオプションを考えた上での提案であるそうです。原発作業員の健康管理もしくは彼らをサポー トしようと立ち上がっている専門医師らの活動についての報道を見かけることは中々ありません。この点に関してはどのようなご意見をお持ちですか?

A5)
原発作業員のための造血幹細胞採取・保存については、医学専門ではないので詳しくは知りません。しかしこの件に関する一連の動きには大変興味があります。 恐らく、放射線に詳しい専門医師団が造血幹細胞採取・保存のメリット・デメリットをもっとはっきり示していただければ、われわれが報道を通して社会に伝え ることができたのではないかと思っています。実際に、この件に関する報道は今まであったかというと、正直あまり見かけることはなかったと思います。これま では、原子力専門家が入れ替わり立ち替わりメディアに出てきているのですが、一方で放射線対策や医学上の対応策を伝える医学専門家がメディアにあまり出て きていないというのが私の印象です。もちろん我々メディアが、そのような専門家を見つけてこなければいけないのですが。今回の事態で、専門医師の存在の重 要さを再確認させられました。専門医師にこれからも活躍していただくことを願っています。

Q6)
原発事故関連の報道を見て初めて知ったのですが、東京電力は広告宣伝費年間約250億円をメディアに投資しているそうです。そのうちの約90億は、東京新 聞に振り分けられていると先日のニュースで見ました。原発事故に関して、それぞれのメディアの報道の仕方に広告宣伝費は影響してくるものなのでしょうか?

A6)
原子力発電所を日本に導入するかどうかという議論が大きく広がったのは1980年代のことでした。石油危機などを乗り越えた日本は、いよいよ本格的に、エ ネルギー源を石油とするのか、あるいは原子力に向けるのかを決断する時期に直面していました。当時、私は新聞社に所属していました。今思うと、非常に激し い論争が社内で繰り広げられていました。その際に、問題提起をしていたのは科学部でした。もちろん、科学部の中でも賛成派、反対派がいまして、意見が割れ ていたのを覚えています。このように、大きな議論の中にあったのですが、次第に安全や持続性を中心に考えていくようになりました。その時に考えられたこと は原子力発電所の導入でした。今思い返せば、電力会社に関する広告は、あまり流れることはなかった時期が続いていたことは、事実としてあったと思います。

しかし、そのために批判を軽減させるとか、賛成派に誘導させたりするようなメディアの仕方はまずなかったと思います。メディアはそう簡単に動くものではな いと思います。ですから、原子力発電所が注目された当時は、それに関連する広告を次第に流すようになっていたことを覚えています。この動きは各メディアに よって異なるのですが、非常に早い段階から動き始めたところもあり、そうでないところもありました。総合的に見て、原子力による電力供給を容認する方向で 進んでいきました。

そのころ問題になっていたのは、東京電力をはじめ、電力9社による政治献金問題でした。激しい批判を受け、電力会社は政治献金の提供を取りやめる方針を打 ち出しました。その代わり、電力会社の方針としてメディアに広告宣伝費を出すかどうかは、各メディアの方針に委ねることになりました。 このようなこともあり、役員個人が献金を提供するということもあったのではないでしょうか。何百億円という宣伝広告費にはそのようなルートのお金が含まれ ているかどうかは不確かですが、電力会社が宣伝に特に気を使ってきているのは事実です。

Q7)
原発事故により発生した風評被害は、今後の日本の国益に大きく影響してくる可能性があります。日本民間放送連盟として何か対策はあるのでしょうか?

A7)
ここでは国内の話をします。これまでメディアにおける風評被害については、かなりの痛い経験をしています。特にテレビ朝日の例を上げますと、1999年の 所沢ダイオキシン報道問題があります。報道の中で、ダイオキシン関連のグラフの数字が間違っていたため、埼玉県所沢市のホウレンソウなどの葉物野菜市場が 暴落しました。これは長期にわたる裁判になりましたし、補償金を払うことにもなりました。

今回の事態を見ていると、政府自体も風評被害を一貫して抑える方向に動いているところが良い点であると思います。ここ数年、例えば中国発の毒餃子問題もあ りましたし、国民の視線も食品に対して非常に敏感になってきています。トマトやキュウリを食べて見せたりして不安材料を取り除くといった動きは、今回のメ ディアの取った風評被害対策の一例だと思います。ですから、今回の原発事故による風評被害については、メディアの取り上げ方に起因するようなものは出なく て済んだと思っています。

(下)へ続く。

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