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Vol.204 学生が日本民間放送連盟会長にインタビュー(下)

医療ガバナンス学会 (2011年6月30日 09:00)


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インタビュー(下)「今後のメディアの役割と可能性 ~若者に向けたメッセージ~」

東京大学大学院新領域創成科学研究科
サステイナビリティ学教育プログラム
修士課程2年
廣瀬雄大
2011年6月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


(中)より続き。

Q8)
原発事故と火力発電所の故障を受けて、今年の夏は電力不足の危機に直面することになると思います。日本民間放送連盟として、節電対策として番組削減などの対策や方針を打ち出すことは今後考えられるのでしょうか?

A8)
政府の電力需給緊急対策本部からの要請で、契約電力が500キロワット以上の大口需要家は電力使用のピーク時に15%の電力使用の削減が求められていま す。一方、日本民間放送連盟としては、原発がどうなるかも分からないし、余震もなくなったわけでもないという不安要素が大きいので、緊急的に必要な情報は 継続的に流していく必要があると感じています。メディアとしてこの削減目標に従うべきかどうかということに若干迷いはありましたが、放送はしっかり継続 し、15%削減目標は守っていくという方針を出しました。

1970年代の石油危機の時は、政府が電力使用の総量を減らす方向で話が進んでいたのですが、今回は総量を減らすという話ではありません。夏の期間、最も 使用量が多い午後から夕方・夜にかけての時間帯で、ピーク値の節電目標を達成しなければいけないということなのです。ですから、この時間帯以外の深夜・早 朝を利用してスタジオで番組収録するなど、いろいろ対策は取れると思います。甲子園大会は大きな課題なのですが、現状では放送を続けていく方針で動いてい ます。決勝戦や準決勝戦は、ピーク時を避けて開催するなど、いろいろ対策が練られています。節電は大切なことですが、本当に15%削減をしなければ危機に 至るのかなど、そこまで心配すべきことなのか個人的にいささか疑問を感じています。昨年の夏の暑さは異常であったのは事実だし、節電活動によってこの不景 気が継続してしまうかもしれないということのほうが個人的には心配です。

Q9)
デジタル化やIT化 が進んでいるとはいえ、新聞は今後も大切な情報伝達手段だと感じています。FacebookやTwitterのネットメディア、既存のテレビなどのメディ ア、新聞のメディア、この3つの メディアの関係について今後どのように考えていけばよいのでしょうか?

A9)
私もこの3つのメディアの関係について数年前から考えてきましたし、いろいろ議論にも参加してきました。結局、取材して社会に発信していくという作業は新 聞社またはテレビ局しかできないと私は思います。もちろん、新聞社やテレビ局が報道したものを別ルートで広げていくことや、反論を広げていくことはイン ターネットやソーシャルネットワークサービスでもできると思います。しかし、お金をかけてプロの取材者陣を育てていくことが、他の分野でできるかどうかは 大変疑問です。新聞社やテレビ局は、世の中の調子を整え、共通意識を広めていく土台という役割を果たさなければいけないと思っています。その 土台がどれだけしっかりしているかが、社会の善し悪しを決めていくという気がしています。

今回の大震災におけるネットの役割を振り返ってみると、改善していかなければいけないところが多々あります。震災直後に必要性の低い議論が繰り広げられて いましたし、わざとデマを流し広めるような動きもありました。当時、このようなことが一気に空間を覆ってしまっていた印象があります。しかも、こういった 情報へのアクセス数が非常に多いことも疑問点です。これは、ネットに対する将来に向けての大きな課題だと受け止めています。

Q10)
政府、東京電力、専門家などがそれぞれ3月11日以降、メディアを通してさまざまな議論を進めて対策を練っていることがメディアを通して見えてきます。政 府の対応、放射能対策、風評被害、節電など、これらの新しい課題を長期的に背負っていかなければいけないのは、僕ら若者の世代だと思います。しかし、僕ら 若者の世代が今回の事態についてどう思っているのか、今後の日本はどうしていくべきなのかなどの声が、メディアを通して聞こえてこないことが現状だという 印象を持っています。真剣に今回の課題について議論し合えて、 意識の高い若者の集い的な新番組が今後の日本に必要だと思います。このような動きは今後考えられますか?

A10)
50歳または60歳以上の方々は、一生懸命働いて、経済は右肩上がりが続き、日本全体が豊かになっていったという戦後からの価値観をお持ちになっていま す。今回の震災がどういう人々に一番大きなショックを与えたかというと、この世代だと思うのです。この世代の方々にしてみれば、今まで人生の目標としてき たことが正しかったのかどうか、振り返ることになると思います。過去何回かの石油ショックも体験しているし、原子力というものは、豊かさを保証する一つの メソッドであったのだと思います。確かに、危ないから反対だという人もいたわけですが、豊かさの環境作りというのは、自ずから共通意識としてあったと思い ます。エネルギーの確保という意味では、原子力という選択は正しかったのかということを考え直させられるし、大きなショックを受けています。それから、こ の震災の前から景気の低迷も続いていて、一方では年金がどうなるか分からないという課題にも直面していました。自分たちが今までやってきたことが、正し かったかどうかという疑問を持ち始めた矢先に3月11日の大震災に直面したのですから、人生観が変わってしまったことは当然のことだと思います。

若者に関して言えば、おそらくそれなりのゆとりがあるように思えます。被災地にボランティアに行き、さまざまな活動をするという新しい感覚は非常に価値の あることだと思っています。しかし、若者達を中心に基本的なところから日本を見直してみるということは、少し難しいのではないのでしょうか。医療をどうす るか、原子力を続けるか、被災3県は経済特区などを設置して新しい都市作りを構想するべきか、それともきれいな海があって畑もあって、このまま暮らしてい ければ一番幸せとする人々が多いのか、議論しなければいけない課題は山積みであることは確かです。ここ20~30年間の日本を体験した人々の立場に立って ものごとを考える方が新鮮であり、若者もそれを忘れてはいけないと思っています。

Q11)
それでは、ここ20~30年間の日本を体験した方々と、これからを背負う若者達が同じステージの上で議論し、どれほど考え方の相違があるのかを一度議論し合うという番組は今後考えられませんでしょうか?

A11)
確かに重要で面白い番組内容になると思います。しかし、気をつけないと格差を広げてしまう可能性を無視できないことも確かだと思います。今後のエネルギー 確保については、太陽エネルギーや風力などいろいろ選択肢はあるのだと思います。しかし、全国の家の屋根に太陽光パネルなどの発電機を導入することが、こ れからの新しい町づくりの基本になる場合、それは我々の世代から見ると受け入れがたいことなのかもしれません。

我々の世代からすると、電力はあくまで発電所で起こし、家庭に配給することが一番効率がよいとの意見が大半なのではないでしょうか。しかしその場合でも、石油だけに頼るわけにはいかなくなるでしょ う。テロも少なく、工業技術も相当進んでいる日本が、リスクを背負って自国の石油消費量を減らしていく必要があると思います。それは他国の石油による発電 所を通した電力を低価格で供給していただく循環的な構造の中心に日本があると思っていますので、今後もこのような議論を続けていくことも大切だと思います。

今回の原発問題によって、日本の放射線医学が一気に進み、世界に貢献していくということも当然大切であると思います。今回の事故で原発はダメだから、 他のエネルギー源を探さなければいけないといった、何でもかんでも逃げればいいというわけではないという気がします。こういう発言は報道を通しては極力立ち入らないようにしてはいますが、我々の世代でも原子力という選択肢については今後も議論していかなければいけないことだと思います。

Q12)
それでは最後に、これからを背負っていく若者にメッセージをいただけますでしょうか?

A12)
原子力の問題と今後を例にあげましょう。まず、学者・学生の間でも、賛成・反対意見があると思います。本来、学術の世界だと、反対論を自分のものにしていって、なおかつそれを基に安全策を強化していくなど、学者・学生同士での厳しい議論というのは当然あってしかるべきだと思っています。

しかし、それが実 を結んでいく形であればいいのですが、電力会社から研究費がでているとか、妙なムラ社会になっている実態があります。せっかくの厳しい議論や対立が実を結 ばないまま終わってしまっているところが現状にあります。テレビに出てくるような人たちが全く違うことを言って、賛成派・反対派が現れ、それぞれが問題意 識を持っていて、それを克服していかなければいけないといった広い意味での議論の育て方が必要とされているのです。

そのような人たちを幅広く集め、さまざまな意見を出していただき、国民の皆様に判断してもらうというプロセスを実行する際に、メディアというのは大きな役割を持っていると思います。学者や官僚 は、国民の皆様の判断を基にその後を進めていかなければいけないわけで、そのために厳しい議論をすることに意味があるわけです。それを無にするようなこと があれば、それはとんでもない話なのです。

福島第一原子力発電所の事故も、そのような動きが今まで続いた結果のような気もしています。例えば、IT系の会 社は電力不足になると機能しなくなり社会に大変な影響を与えることになります。しかし、二重三重の戦略を備えているからこそ対策がとられているわけです。 今回の原発事故も、大震災で停電したからこのような事態になったのだと理解していますが、この事態を避けるような対策がなぜ活かされていなかったかなど が、今後の議論の軸だと思っています。なぜ学者・学生に、この部分を指摘するという風習がなかったのだろうかと疑問に思っています。

これからの若者は、 我々の知らない新しい感覚で問題提起していくことが大切であると思います。そして、彼らの勢いを現実に生かすようなことが必要になってくると確信していま す。反対論をも吸い上げるような、勢いのある議論を展開していき、今後の日本を背負っていってほしいと願っています。若者の皆様、今後もがんばってくださ い。

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