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Vol.205 震災後の産業医活動に関する本音

医療ガバナンス学会 (2011年7月1日 06:00)


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愛媛大学大学院医学系研究科
医療環境情報解析学講座
公衆衛生・健康医学分野
谷川 武
2011年7月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


4月16~19日、5月6~9日の2回、東京電力福島第二原子力発電所に滞在し、福島第一、第二発電所所員の健康管理を支援しました。
4月に行った時に事前には心のケアと高線線量放射線曝露の際の医療技術である自己末梢血幹細胞採取について準備して行きました。

しかしながら、実際に現場に赴いて急務と感じたことは、心のケアよりも前に食・住の確保による生活環境の改善でした。
4月当時は、未だレトルト食品のみの配給でした。福島第一発電所の所員は、福島第二発電所の体育館に一晩150~400人が泊まっておりました。4~8日 間(中には10日間以上)連続勤務のスケジュールの中でシャワーを使うことは第一発電所では不可能であり、第二発電所でも4日に一回でした。体育館の中 に、二段ベッドを入れることや簡易シャワーの設置、近隣施設での風呂の準備、生野菜の配給などを提案しましたが、当初は全て無理だと様々な理由から見送ら れました。

しかしながら、4月の滞在中の様子を撮影した写真、動画がマスメディアにて放映され、新聞、雑誌等で掲載されるにつれて、福島第一の復旧作業に従事する 人々の生活環境の改善により個人毎の能力を最大限に発揮して仕事に取り組んでもらうことは、被災者が集団で避難所で過ごしている現状を考慮してもヒューマ ンエラーの防止から事故の防止にもつながることであり、被災者が自宅に戻る日を早めることにつながるという論旨が国民に支持されるに至りました。
そのお蔭で、体育館の中に、二段ベッドを入れ、簡易シャワーの設置、生野菜の配給も開始されました。

これらの成果は、ひとえに本稿をお読み頂いているマスメディアの皆様の報道のお蔭と感謝しております。
福島の現場で働いている人々から、震災後1ヶ月間ごろ寝の生活でキャンプのような食事で風呂も入れないのがいつまで続くのかという不安の声がありました が、5月になって目に見える形で生活環境が改善され、全国から支援の声が寄せられることにより所員の気持ちも前向きになったとの感想を頂きました。
また、所員に配布したストレスに関するアンケートの自由記載欄に、生活環境が改善されたことで家族が安心できたことを感謝していますとの記述もありました。

熱中症対策、長期にわたる心のケア、高線量放射線曝露への対策等、産業医学上の問題は続きます。
これらの課題への対策について私はこれまでもいろいろと提案してきましたが、常勤の産業医を産業医科大学から派遣をお願いすることになり、新たな展開が期待されています。
今後も産業医科大学から派遣される産業医の先生方とともに発電所所員の安全、健康の向上に取り組みたいと考えています。
今後とも読者の皆様の御支援を頂きたくお願いします。

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