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Vol.219 ポリオワクチン問題 ~個人輸入のIPVに世田谷区は公費助成できないのだろうか?~

医療ガバナンス学会 (2011年7月25日 06:00)


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日本国主権者、東京都民にして世田谷区民
真々田 弘
2011年7月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


私はフリーランスのテレビ屋である。
国が勧めるポリオ生ワクチン(OPV)による「想定内」のポリオ発症と言う理不尽な出来事を、昨年の夏からぽつぽつと取材を始めて5月に一本の番組として 放送した。OPVによって両足に重度の麻痺を「負わされた」小さな子どもの姿を通じて、国の無策、というよりは非人間性を告発する番組。
職業人としての私としては、それで一つの仕事を終えたことになる。
問題は示した。あとは、視聴者のみなさんで考えてよねと放り出せばいい…。
しかし、職業人としての私は放り出せても、一人の、コドモたちに責任をもつオトナとしての私は放り出すことができなくなっていた。「オトナ」としての私個 人でも、「ポリオを防ぐためのワクチンでポリオになる」というこの理不尽な世の中に対して、なにかできることがあるんじゃないだろうかと考え始めてしまっ たのだ。

テレビ屋である私以外に、私は日本国国民であり、東京都民であり、世田谷区民ででもある。でも、しょせんちっぽけな存在であり、国に、厚労省に個人の私が 文句を言っても通じにくいかもしれないし、都知事は……でもある。でも、もしかしたら一番身近な自治体である世田谷区なら、なにかできることがあるんじゃ ないんだろうかと考えてみた。
おりもおり。今春の統一地方選挙で、歳若い、お国とは一線を引いた考えを持つ区長が誕生している。その若い政治的な感性で、私の提案を受け止めてくれはしないだろうかと。

で、ひとつの提案をしてみることにした。
「今、個人輸入での接種が急増しているIPVワクチンの接種に、世田谷区で助成することはできませんか?」と。
法的には大枠として可能だろうなぁと調べてみて思う。政治家が政治家としての決断さえすれば、大まかな法律でしかない予防接種法には抜け道があるだろうと 狙ってみた。それが、本当に可能かどうかは正直なところわからないにしろ、道が見えるなら、とりあえず動いてみることにした。
それは、私たちオトナたちの無責任、あるいは無関心のせいでOPVでポリオにされてしまったコドモたちへの、今もポリオになるリスクを負わされているコドモたちへの、私という大人でもできることなのだと思ったのだ。

以下、世田谷区 区長 保坂のぶと氏宛の私の発信と返信となる。
今読み返すと、第一伸は「この手がある!」と「思いついたが吉日」という調子で舞い上がっている文章だなと感じ、かなり気恥ずかしくもあるのだが、そのままの公開となる。まず、私の問いと、世田谷区からの返信。

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(世田谷区 区長 保坂のぶと氏宛 第一伸。2011年6月29日)

世田谷区区長
保坂のぶと 様

至急に、区として対処していただきたい政策の提案です。

現在、個人輸入で保護者の自己負担で行われているポリオ不活化ワクチンに対する公費助成制度の実施。

現在、日本で使われているポリオの生ワクチンでは生きたウィルスを使うため、450万接種あたり1人(政府が使っている数字)から100万人あたり2~4人の、ワクチン由来ポリオ患者が発生します。
統計的に間違いなく出ます。
生ワクチン以外に、ポリオを防ぐ手段が無いなら許されるかもしれませんが、ワクチン由来のポリオを防ぐことのできる不活化ワクチンが1980年代中ばには開発され、世界の先進国のほとんどで使われています。

さすがに国も、WHOからは責められるし、国内でも患者団体の活動によって生ワクチンへの危険性への情報が伝わるにつれ、不活化ワクチン導入に動いてはきました。
今年度末には、不活化ポリオワクチン(IPV)を既存の三種混合ワクチン、DPTと組み合わせた四種混合ワクチンが承認申請されるし、早急に認可し使用できるようにする、と言っています。
承認申請がなされ、認可されても、企業の商品化(大量生産・供給のシステム)のためには時間がかかるのは当然のこと。今年度中に承認申請があったとしても、実際に使えるようになるのに、どれくらいの時間がかかるのかは明らかではありません。

しかし、ポリオ生ワクチンの危険性を知っている親は、しかも経済的に余裕の無い親は、国が無料でDPT+IPV接種を開始するのを待つ行動に出始めていると、医療現場からは報告が上がっています。

さらに、DPTとIPVでは、微妙に接種時期が異なります。DPTの方が接種時期が早いのです。
DPTワクチンのなかで取り分け百日咳は当たり前の疾病。今でも流行があり、時に死に至る感染症です。
いつ一般的な定期接種(無料接種)となるかわからないDPT+IPVを、わが子の安全のために待つような行動が広がれば、百日咳の流行を広げる結果となりかねません。

当然、このことは現場の医療者からは指摘されており、IPV単独ワクチンの必要性がいわれてきていたのですが、厚労省はついこの間までIPV単独ワクチンの必要性を認めていませんでした。

それが一変したのは、個人輸入でIPVワクチンを接種する医療機関の急激な増加(昨年末には20余りだったのが、今では100数十。世田谷区内でも増えています)であり、マス・メディアによる生ワクチンの危険性についての報道の重なりだったのでしょう。

先月、突然、厚労省は、単価IPVワクチンの早期導入(国産DPT+IPVワクチン導入と同時に)を打ち出しました。
これまで、国内での治験が絶対に必要であるとして、毎年海外では2500万人に使われている外国メーカー製ワクチンを拒んできた厚労省が、国内治験無しで、外国メーカーのワクチンをほぼ無条件で受け入れると、突然、決めたのです。
現在、医師たちが自らの責任で個人輸入しているワクチン。親たちが自らの責任で選んでいるワクチン。世界の標準である、ワクチン。

さて、子供をポリオから、あるいは百日咳から守りたいという親がいる。
今、たった今、オトナとして(国家としてではありません)何ができるのか。
行政として何ができるのか。
国が危険性の無いワクチンを配布するまで待つのですか?
その間、百万近い子どもたちが、危険な生ワクチンを飲み続けることを許すのですか?
安全なワクチンが、ある、のに。
それが、実費であるという一事をもって安全なワクチンを断念したり、他の疾病にかかるリスクを背負わされている親たちがいる、というのに。

かつて、国が承認していなかったヒブや肺炎球菌ワクチンのように、今、個人輸入で使われているIPVに、公費助成をしませんか。
だって、同じワクチンが間違いなく再来年には導入されるんですから。

子どもの命を守ることを大事にするなら、答えは簡単だと思います。
より詳しい情報が必要なら、いつでもご説明にお伺いします。

真々田弘
フリーランステレビディレクター
■■ここは住所・メアドなど個人情報■■
■■■■■■

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(世田谷区からの返信 その1
2011年7月7日 作成:文章中に表記された文章作成者等の個人名については伏せます。私の提案の相手は、保坂のぶと区長であって、法や規則に従うことを義務付けられている現場の「行政担当者」ではないからです)

平成23年7月7日
真々田 弘 様
世田谷保健所●●●●●

日頃から世田谷区政にご理解・ご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
このたびは貴重なご意見をいただきありがとぅございます。
ご指摘のとおり、現在、全国で使用されているポリオワクチンにつぎましては、1OO万~400万回に1回の重症の副反応事例が報告されております。区とし ても、わが国はポリオによる自然感染は根絶段階にあることから、早急に不活化ワクチンに移行する時期にあると考えております。
一方、ご指摘のとおり、ポリオ生ワクチンへの不安から、未承認薬である海外製のポリオ不活化ワクチンを自費で受けられる方が増加している状況であることも認識しております。
しかしながら、未承認薬の接種により万が一、副反応による重篤な健康被害が発生した場合、被害にあわれた方々への予防接種健康被害救済制度等に基づく補償・救済制度を適用することができず、輸入された方 (医療機関)と接種された方自身の責任で解決することになります。
区としては、このような国として承認していないワクチンの接種に対して、公費による負担を行うことは、難しいと考えております。
ご承知のとおり、ボリオの不活化ワクチンにつきましては、現在国内ワクチンメーカー4社が開発中で、臨床試験の段階であり、年内にも承認申請が行われる見込みであると聞いております。また、国は不活化への移行に着手したと聞いております。
国によるワクチン薬種としての承認後、実施方法が確定しだい、区としても速やかに対応できるよう準備をしてまいりたいと考えておりますので、何卒よろしくお願いいたします。

担当
世田谷保健所●●●●
電話 **********
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保坂のぶと区長ご本人が私の提案をお読みになったのかどうか不明である。
「区長の部屋」を担当する広報公聴課が、区長に諮ることなく、そそくさと行政の担当部署に回した可能性も捨て切れはしない。ただ、この回答は、私の提案に 一切応えていないわけで、逆に区の保健当局としては、OPVによるポリオ発症のリスクをちゃんと認識しているのにも拘らず、ただ、国が承認しているかいな いかだけ、という建前論でそのリスクを許してしまっていることにもなる。「だからー、国が承認していないのは百も承知で、政治的な決断を求めているんです よ」ってことについての解答はない。

ここで、諦める手は無い、というのが報道現場にいた人間の性でもある。
第二伸を送ることにする。(続く)

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