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Vol.262 震災で露呈 現在の医療提供体制は「設計思想」に問題アリ

医療ガバナンス学会 (2011年9月7日 16:00)


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今回の内容はロハスメディカル6月20日号に掲載されています

医療現場危機打開・再建国会議員連盟幹事長
文部科学副大臣 鈴木寛
2011年9月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


今も避難生活が続く東日本大震災の被災地。福島原発事故による計画的避難の方も含め、数十万人が自宅に戻れずにいます。衛生面でも精神面でも健康維持は厳しく、かろうじて津波から逃れた方が残念ながら避難所で亡くなるケースも出ています。

津波で運ばれたヘドロに含まれる細菌やカビを吸い込んで起きる、いわゆる「津波肺炎」や、心疾患、脳卒中も増えています。長い避難生活のストレスで発症数が増えたためとも考えられますが、救急医療がパンクして救える命が救えない事態も起きてしまっています。

震災によって多くの医療機関が機能を失いました。多くの医療者が津波で命を奪われました。加えて、救急医療崩壊へ想定外の引き金となったのは、「看取り」 です。震災により、本来それぞれしかるべき場所で医療を受けて穏やかに最期を迎える人も皆、行き場を失って救急医療に頼らざるをえなくなったのです。

しかしそもそも医療を含む社会インフラ需要には、変動と偏在がつきもの。問題はそれにどこまで対応するかです。

例えば電力なら、ピーク需要時も停電に陥らないような供給量を設定しています。水力・原子力発電による定常供給に出力を変えやすい火力発電等を組み合わせ ながら、融通して調整しています。急な需要増を加味して、余裕を持たせた供給とその能力、体制が必要で、そのコストは料金に含まれています。

このようにピーク時の機能不全の回避を第一に考えた運営設計は、電力のほか通信などの社会公共サービスでは当然のこととなっているのです。

ところが医療では、「医療費削減」を掲げて効率を追及した結果、ぎりぎりの供給ラインに限定されてきました。救急等の変動需要と看取り等の定常需要を十把 一絡げに合算し、しかもピーク時でなく平均値を基準に供給量を議論しておきながら、それさえ足りずじまいです。療養病床は削減され、いわば常に全国のどこ かが〝停電〟の状態です。

被災地での救急医療崩壊も、もとを正せば医療供給全体の「設計」に根本的な問題がありました。今改めて、どこにどれだけ人と物を配置し、そのコストをどう分担するのか、国民的議論が必要です。

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