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Vol.322 ポリオワクチン問題~個人輸入のIPVに世田谷区って公費助成できないのだろうか?その6 やっぱり終われない~

医療ガバナンス学会 (2011年11月22日 06:00)


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日本国主権者、東京都民にして世田谷区民
真々田弘
2011年11月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


前回を最終回にしたいと思っていた。黒岩神奈川県知事の問題提起を受け、さすがに何かが起こるかもしれないという期待があったから。だが、二匹目のどじょうもおらず、期待は幻想だったようだ。厚労省も厚労相も、わが世、だけで生きている。

この間、私自身、先般の現場からの医療推進業議会第六回シンポジウムのシンポジストとなり、つい昨日、11月15日に参議院議員会館で開かれた「ポリオワ クチンについて考える会」という国会議員相手のお勉強会でも取材者ではなく発言者として参加することになってしまった。 そういう個人的なところは置いて おいて、最近のポリオワクチンをめぐる問題で、二点感じたところがある。皆様にもお考えいただきたい。(ご批判も頂戴したい。意見を交わしたい)

今回は、その第一点目。
日本小児科学会の予防接種・感染対策委員会が出した11月14日付けの見解である。

http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_111114.pdf

繰り返すべくもないが、私は非医療職のテレビ屋である。ただ、テレビ屋はテレビ屋なりに情報を集め取材を重ねる。そこで得た知見をもとに、自らの責任で番組を作り上げる。その時、まず考えるのは、情報の受け手のために、受け手を意識して情報を発信するということだ。

さて、その目から見てこの小児科学会の見解が今の状況に対してふさわしいものであるのかどうかを問いたくなる。つまり、この見解がたった今、生ワクチンの 定期接種を受けるべきかどうか悩み、苦しんでいる母親たちの苦悩を少しでも解決するものであるのかという「視聴者目線」での問いなのだ。

ちなみに、ベネッセコーポレーションが10月7日から12日にかけておこなった母親たちへの「子育てに関するアンケート」で、ポリオワクチン問題には44%が関心を持っており、
定期接種を受けるかどうかで拒否、忌避、判断未定が51%に達している。
そういう社会状況の中での「権威ある学会」の見解は、こう述べ始める。

「世界的にはまだ野生株ポリオの流行が存在する中、わが国においてはポリオワクチン
接種率を高く保つ必要があります」

当然の話だ。そこから、どう論理展開するのか。見解は、諸外国での最近のポリオ流行例を並べてゆく。「ワクチンを接種しないと危ない」とする。
が、そこでいきなり、

「IPV が導入されるまでポリオワクチン接種を待つことは推奨できません」

となる。集団としての抗体維持率を問うなら、OPVでもIPVでも、接種可能なワクチンを打ってください・・・が普通の論理展開ではないのだろうか。 IPVはすでに世界中にあるし、日本でも接種可能なワクチン。月間の個人輸入量は今や2万本。それを無視して「IPVはあきらめて、生ワクチンを嫌でも飲 め」ということでしかないことに、委員会の方々は気がついていない。
そして、見解は生ワクチンによるVAPPにも触れる。

「しかし、ごくまれに接種後に手足などに麻痺を起す場合(ワクチン株由来ポ>リオ麻痺)があります。生ワクチン接種後に発症したとして健康被害救済 が>認定された例は最近10 年間では15例(100 万接種あたり約1.4 人)、ワク>チンを接種した者の周囲での発症は最近5 年間で1 例です」

この記述は、昨年の「日本小児科学会予防接種感染対策委員会 声明~経口ポリオ生ワクチンの接種について~」http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_100820.pdf
と比べると、200万接種に一例としていたVAPPの発症率について、厚労省の(理由の一切不明な数値変更だが)発表どおりの数に修正しているものの、「救済制度にかからない」落ちこぼれが相当数いると想定するする昨年の記述より後退している。
そして、医学的な見地の記述から、突然、現行の行政の「救済策」へと話が飛ぶ。

「今このような定期予防接種により万一発生した重篤な健康被害に対しては予防接種法に規定された救済制度が適用されます」

これは、今回の見解の最後まで続く非医学的「生ワクチンを今接種しろ」記述の始まりでしかない。

「WHO によるポリオ根絶計画の進行にも関わらず、なおインドやパキスタン、アフガニスタン、アフリカの一部地域などで流行が持続している(*2)。また、上記流 行国からの輸入例や(*3)、ワクチン接種率の低下した他の地域での野生株ポリオの再流行(*4、*5)、ワクチン由来ポリオウイルスによる流行が経験さ れており(*6)、世界根絶が達成されるまでは、OPV、IPV を問わず、ワクチン接種を継続し、かつ接種率を高く保つことが必要とされている」

当たり前のことを言っている。
しかしそれは、なぜ日本でOPVがIPVを退けて使われ続けていることを正当化するのか、ということは論拠にはならない。日本では、この30年あまりの 間、OPV以外のポリオ患者が報告されていない。現在の日本でポリオに感染する、二次感染を引き起こす実在する最大のリスク、それはIPVに切り替えれば 排除可能なリスクでもあるがOPVであるという事実を語っていない。世界を舞台にし、僻地、戦地の例を取り上げ、そこと日本を同一化して論理的な正当性が 立つのか!と突っ込みたくなる。
なにより、幼子を抱えた母親たちは、今の日本に生きていることを理解していない。
だから、今の日本の母親たちの気持ちとは全く離れた、天上界の言葉で見解は結ばれる。

「世界ポリオ根絶達成後には、VAPP およびワクチン由来ポリオウイルスによるポリオ流行のリスクを考慮してOPV 接種を世界的に停止することが想定されており、IPV 導入によるポリオ集団免疫の維持が必須と考えられている」

繰り返す。
日本では、野生種のポリオは根絶されており、VAPPのリスクなしに集団免疫を維持する方法が、野生種患者発生が無くなった30年あまり前から求められて いる。その段階で、必須となっている。そして、その手段はeIPVという現実の存在として四半世紀前には作られ、少なくとも10年余り前には世界標準と なっていたと、医学の素人の取材者は理解している。

「以上より、わが国ではポリオワクチン接種率を高く保つ必要があり、IPV 導入まではOPV 接種を継続するべきであることを改めてご理解いただきたい」

要は、医学的見地ではなく、ワクチン行政の遅れには目をつぶって、リスク回避がたった今も医学的に、さらにいえば特例承認を行い緊急輸入してしまえばリスク回避が可能なIPVをあきらめ、リスクあるOPVを小児科学会は推奨するということなのだろうか。
OPVのリスク、IPVの少なくともVAPPなし、という医学的事実、わが子とのためのリスク回避に気がついてしまった母親たち、しかも、頑張ればそれが手に入ることに気がついてしまっている母親たちには全く通じない論理と言葉だとは、露とも思わないのだろうか。
そして、「国の補償」という印籠をかざす。正当化の理由はそれだけか・・・となる。

「しかしながら、個人輸入された不活化ポリオワクチンは、国内においては治験が終了していない薬事法上の未承認薬であり、万一接種後に健康被害が発生した 場合、定期予防接種における予防接種法に基づく救済制度は勿論のこと、薬事法上の承認を受けた医薬品に係る医薬品副作用被害救済制度も受けることができま せん」

はい。この医療者たちは。「医学的にVAPPのリスクがあるのをボクら知っているけれど、国が認めてないんでしょうがないから、生ワクチン飲めよ。ポリオになったって(僕ら個人輸入なんて責任を負わずに済むし)国が金払うシステムだかさ」と言っている、ってことだと。

世界標準のワクチンで、すでに国内でも数万の接種実績がある「個人輸入の不活化ワクチン」結局のところ、単価IPVワクチンとして現在治験を行っている第 一三共・サノフィパスツールと同じワクチンを、医学的な見地ではなく、世界標準から大きく遅れている日本のワクチン行政、しかも「補償制度」の有無を選択 基準にして推奨するってのは、医療者としていかがなものでしょうかと言いたくなる。そして結びで、完璧に現状への対応を放棄する。

「したがって、個人輸入による不活化ポリオワクチンを接種するにあたっては、未承認薬であることを十分ご理解の上で、接種医と保護者の責任と判断において接種されますようお願いいたします」

(二点目に続く)

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