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Vol.323 わだかまりを越えて

医療ガバナンス学会 (2011年11月23日 06:00)


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この原稿は平成23年11月14日、地震医療ネットのメーリングリストに流れたものです。

福島県南相馬市
青空会大町病院 麻酔救急科
佐藤 敏光
2011年11月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

南相馬市大町病院の佐藤です。10月11日以来の投稿となります。

入院患者数は51名(満床は57名)となりました。11月から3名の看護師が復職、パートだった看護師2名も夜勤に入ってくれるようになり、サブ・ナースステーションも、2人の夜勤体制を組めるようになりました。

人工透析治療も10月31日から再開することができました。震災前は54名いた透析患者さんも2名が亡くなり、避難先で入院されたりして戻れなくなったり した患者さんもおり、26名での再開となりました。看護師や臨床工学士が揃えば以前のような1日2クールの透析ができるのですが、以前の状態に戻すにはま だまだスタッフが足りません。

更に本院には今も群馬県等の病院、老健施設でお世話になっている患者さんがいます。3月19日から21日にかけて群馬県に搬送した患者さんは124名でし たが、内33名は亡くなり、現在は群馬県内の病院に55名、老健施設に17名の患者さんが居て、南相馬に帰る日を待っています。(その他福島県内の施設に 移られた方が2名、ご子息の家や近くの施設に引き取られた方が14名、自宅に戻られた方は5名いらっしゃいます。)間接的に家族から南相馬に帰りたい意向 を聞かされますが、群馬県の医療施設から本院へ引き取ってくれという依頼は来ていません。

恐らく緊急時避難準備区域が解除された後も、本院など南相馬の病院が元通りには戻っていないことを気遣ってのことだと思いますが、受け入れ先の病院や群馬 県の健康福祉部からのFAXを見る度に、異郷の地で最期を迎えなければいけなかった患者さんの無念や、臨終に立ち会えなかった家族の気持ちを思うと、早く 南相馬に戻して上げなければという思いに駆られます。

つい最近も、病院に次のような電話がありました。○○さんのご家族から電話がありました。療養病床が再開した際に連絡頂けるという事でしたが、10月12日○○市の老健施設に入居することができました。ところが13日に肺炎で亡くなりました。

群馬県からの連絡が無かったところからみると、恐らく家族が介護タクシーなどを頼み、地元に近い老健施設に受け入れをお願いしたものと思います。いかに高齢者の長時間移送が良くないかを教える事例と思いますが、我々も3月の移送の際にニアミス寸前のことをしているのです。

バスの中で亡くなる方はいませんでしたが、搬送翌日に100歳の方、5日目に73歳の方、10日目に88歳の方が亡くなり、3月中に3名の患者さんが亡く なっています。19日のバス移送時は私と看護師が、21日の救急車搬送には私とDMATの先生3名が群馬まで同行しましたが、誰も乗っていなかったら、双 葉病院の如くバッシングを浴びていたかも知れません。

今はその余裕はありませんが、原発事故の際の患者避難のあり方について今回の検証を踏まえ、マニュアルを作っておかねばいけないと思います。その際には、 十分な備蓄の上で、屋内退避(籠城?)を続けるオプションもありだと思っています。同じ20~30km圏内にありながら15名の入院患者を護った高野病 院、救急車も無く、泊まる医師もいない中で飯舘村で106名の介護老人を守り続ける特養飯舘ホームがその例です。

上先生が紹介してくれた女性自身の記事も、残った医療従事者にとっては有り難い記事でした。ただ、この記事を避難している看護師たちが読んだらどう思うで しょう。本院でも戻らない看護師たちに退職勧告をすべきだとの意見も出ています。戻らない理由はいくらでもあるでしょう。実際、休業補償(一月の給与の 6~7割)をもらい、東電からの仮払金や避難に関わる精神的苦痛に対する慰謝料(避難した人最高12万円/月、避難しなかった人10万円/約40日)を加 えると現に働いている人より多い収入を得ている人もいます。

避難している人の生活を羨ましがるのではなく、今いる人の生活環境を良くして上げるべきです。危険手当でも良い、1ヶ月くらい休みを与えて、家族で沖縄の 美味しい空気を吸わせてあげても良い、健康管理も子どもさんと同じように診るのであれば、南相馬市立病院のホールボディカウンターを夜間も動かし、医療関 係者向けに使うのも良いでしょう。

いずれも、お金と人材が必要です。国から福島県に託された120億円の地区医療再生計画基金も、福島県で9月補正予算に計上された医師看護師確保のための 4億5000万円のお金も、我々のところに廻ってくる分は僅かなものになるに違いありません。厚生労働省の相双地域医療従事者確保支援センターも、亀田総 合病院の医療スタッフ派遣も医師や理学療法士の(市立病院への)派遣にとどまり、看護師までカバーするものではないようです。

そんな中、地震医療ネットにも投稿されている、キャンナスの菅原さんの計らいで1人の看護師さん(キャナスのメンバーではないそうです)が千葉県から来てくれることになりました。期間はまだ決まっていませんが、我々にとって大きな励みになるに違いありません。

このような私の投稿や朝日新聞記者岩崎氏の記事( http://expres.umin.jp/fukushima/asahi20110920.pdf )を見て、避難している看護師さんたちが少しでも南相馬に目を向けてくれればと思います。

皆さんは逃げたのではない、本当は原発の状況を理解していなかった我々病院管理者が悪いのであって、皆を引き留めるのではなく、避難させるべきだったので す。なぜなら3号機の爆発の際に北向きの風が吹いていたなら飯舘村民以上に被爆していたかも知れないし、爆発の危険が迫った(屋内退避の指示が出た)時に まず患者を避難させ、それから皆さんを避難させるべきだった。

全国から南相馬に救いの手(除染や健康管理)が差し伸べられています。皆さんが帰ってきてくれれば更に救いの手は広がって行くでしょう。恐らく南相馬が安心して子どもさんや皆さんが住める街になるまで続くと思います。
ですから、早く南相馬に帰ってきて下さい、皆で群馬に患者さんを迎えに行きましょう。

 

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