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Vol.343 ホールボディーカウンターとの戦い

医療ガバナンス学会 (2011年12月20日 06:00)


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この原稿は高橋亨平先生のブログ(2011/11/14)を転載したものです。

http://www6.ocn.ne.jp/~syunran/page02.html

福島県南相馬市原町中央産婦人科医院
院長 高橋 亨平
2011年12月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


いま思えば極めて重要な意義のある戦いだったと思う。これまでずっと内密にして来たが、やっとデータが公表され、これまでとは全く違う精度の高い正しい データで、思った通りであった。ここから本当の科学的な学問が始まるかと思うと、嬉しくてたまらない。数値も、今までとは違って「0」まで計れるし、しか も短時間で「1~2分」で検査が終了する。検査した子供達の約半数が陽性に出たが、全く心配の無い微量なものであった。子供達は腎機能がいいため思ったよ りも早く排泄されると思うが、このことについても追跡していけば直ぐに明らかにされるだろう。若干、父兄達から心配の声もあるが、やがて安心の声に変わる と思う。

4月に大熊町にある、大野病院の環境医学研究所に、ホールボデイカウンターが3台あることが知人を通して分かった。1台はバス式で、何処かの幼稚園に放 置、2台はコンピュータの部分を修理すれば使えることが分かり、早速、福島県の地域医療課に電話した。その後、何度電話しても、らちが開かず、最後は、大熊町の所有だから町長に聞きなさいと言われ、町長に電話した所、福島県の所有で町は関係ないとの事であった。オフサイトセンターでは、許可が出れば何時でも運ぶとの返事であった。ただ時間を浪費するだけで焦りだけが残った。

このままでは何も前進せずだめだと思い、6月6日、アズマ・メディカルの社長へホールボデイカウンターを依頼した。6月14日、アズマ・メディカル社長、 寺崎稔氏から、「南相馬市で買う」と言ったら、大手メーカーは全て逃げて断られた。勿論、キャンベラジャパン社にも、放医研の規格に合わないからとの理由で断られた。
そこで、社長は、キャンベラジャパンKKへFAXした。「貴社のカタログショートフォームカタログ2~3冊至急お送り下さい」「福島県南相馬市の原町中央 産婦人科、高橋亨平先生の分、至急納入して下さいとの事です。宜しくお願いします」南相馬市で買うと言った時は何も送って来なかったが、直ぐに3部が送ら れてきた。1部は私の所に、社長は「日本に3部しかないカタログの内の1部です」といって置いていった。市でなければOKとなったということであった。放 医研からは、東海村のデータがあれば比較できるから、無くてもいいだろうといわれた。
そこで私が買う事になったが、現金取引しか受け付けないとの事で、私も、文無しだし、寺崎社長に、何とかしてくれと頼んだ。社長は、頼み込んで日立メディ コと交渉し、現金取引となったとの事であった。6月16日、あずまメディカル社長とWBCについて打ち合わせ、日立アロカの、佐々木氏に電話してもらい、 これでキャンベラ社の機器を確保できた。しかし、次のようなメモ書きが添えられていた。

アズマメディカル社長様
本装置は、放医研殿が推奨するWBC仕様が適合しておりません。放医研が対応となりますと、その点が問題となります。つきましては、放医研殿へご確認頂ますよう、宜しくお願い申し上げます。放医研:千葉県千葉市、TELL:043-206-4171

6月22日、私とアズマメディカル社長とで、南相馬市長と合い、ホールボデイカウンターについて逢い説明し、買う事を確約した。6月29日、南相馬市立病院にて、金澤院長、及川副院長、寺崎社長、日立アロカ、佐々木氏、遠藤氏、と打ち合わせを行った。7月6日、私、日立メディコ、佐々木氏と南相馬市長と再 会した。
しかし、又、そこから進展しなくなった。そこで、7月13日、日立メディコ、アロカ、それにキャンベラ東京が加わり、市立病院にて説明をおこなった。その頃、市長も孤立しているのを感じた。市では、市立病院ではあれほど欲しがっているのに無視し、何故、そんなものが必要なのか、私と寺崎社長との関係が疑われた。又、スタートラインに戻ってしまった。

その間、6月28日、鳥取県からバス式のWBCが借りる事が出来、搬入され、7月11日から稼動した。県からも大野病院のWBCがやっと7月11日に搬入され、8月1日から稼動した。しかし、過去の遺物であり、操作にも時間がかかり、データも?安定且つ大雑把なものであった。
市立病院の事務長に話したが、何の事だか分からないし、何て書いたらいいのかも分からないと云われた。そこから、金澤院長、及川副院長に話したが、何とも仕方が無く役所とはこんな物なのだと、半ば諦めに近いものであった。 しかし、市立病院では何とか皆で協力し、何故この機器が必要なのかをくわしく書き申請を市に提出した。市での判断後、議会にかけ無事通った。その後、入札を行い、5社が入札申し込みに参加したとの事であった。何故手に入らない機器を、5社が入札できたのだろうか、疑問であった。しかも、受注生産で、 6カ月かかるはずである。

その後、8月21日、日立アロカが入札を取ったと報告に来た。しかし、それからも、置き場所の決定、補強工事等で時間がかかり、使用できるようになったのは、10月1日からであった。

データは絶対外部に漏れないよう指示した。得られたデータは、思ったとおり、微細に渡り精度の高いものであった。その後、案の定、放医研からデータをよこす様に云われ、福島県からも、データを買うから報告するよう言われた。あちこちから、攻められる南相馬市立病院の先生方を、励ましながら耐え、急遽、中間 報告することが決まった。内密にしながら、朝日新聞1社を選び報道した。1面で報道するはずであったが、後で聞いた事だが、朝日新聞社でももめたそうだ。
約半年に亘る攻防、随分、私も悪者にされたが、何とか責任を果したと、安堵の気持ちでいっぱいである。ただ、ここからが本物の研究が始まれると思うと、この戦いは十分に意義があったと思う、一方、日本という国は何故、この様な鉄のシンジケートばかりがあり、緊急の事でも通らないのだろうと思うと情けなく思 う。

とにかく、又1つ、戦いは終わった。あとは後輩達が、正しい科学的な、世界に恥じない、データと治療法を開発出来ると信じている。

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