医療ガバナンス学会 (2012年1月11日 06:00)
今回の内容はロハスメディカル11月20日号に掲載されています
医療現場危機打開・再建国会議員連盟幹事長
民主党政策調査会副会長 鈴木寛
2012年1月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
これは、数十年に及ぶ行政主導の予防接種政策の課題を示しています。
例えば米国には、製薬会社と利害関係のない専門家を中心に構成される「ワクチン接種に関する諮問委員会(ACIP)」という独立した組織があり、ワクチン の種類や接種スケジュールなどの予防接種政策を実質的に決めています。日本では厚労省下に審議会や検討会等がありますが、人選は厚労省で、出された結論や 提言等も、参考にはされても最終決定は厚労省です。
それでも一昨年、新型インフルエンザの流行を機に、ようやく日本版ACIPの設立が打ち出され、予防接種法の抜本的改正の目玉として作業が進められていま す。ただ、当初の構想とは変わり、予算も人員もほぼつかず、厚労省下の一組織となる方向で調整が進んでいるとのこと。行革や業界育成の観点からはそれでい いのでしょうが、原子力の二の舞にならぬよう国民レベルでの熟議が必要です。
1)ワクチンにはリスクがつきもの。どの程度のリスクまで認めるのか。誰が線引きをするのか。科学的にも不確定要素を含み、およそ全員が納得し得ない判断を、誰に行わせるのか――専門家集団か、国民代表たる政治家集団か(行政も政治の監督責任下)。
2)そもそも、「大勢の利益のために少数の不利益も致し方ない。補償すればよい」とする最大多数の最大幸福論に立つのか。「罪も責任もない人が命や人生を奪われることは、決してあってはならない」とする正義論を貫くか。
予防接種法は、「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防」し、「公衆衛生の向上及び増進」のために戦後まもなく制定されました。その意味では、功 利主義に基づいているはずですが、実際の運用はその時の世論で揺れてきました。今日に生きる私たちが改めてこの理念をめぐって、自ら考えるべき時がきてい ます。