医療ガバナンス学会 (2012年1月31日 06:00)
~『ロハス・メディカル』新聞社版2012年2月号より
千葉大学医学部附属病院 感染症管理治療部
講師 石和田 稔彦
2012年1月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
千葉大の学園祭で、ワクチンに関する展示企画を行った学生さんたちが来場者にアンケートを取ったところ、同時接種してもよいという親御さんが3分の1ぐら い、やりたくない人とよくわからないという人が3分の1ぐらいずつだったそうです。一般の方々の受け止め方は、現状ではこのようなものだと認識させられま した。やりたくない方々に無理強いはしないにしても、わからないという方々に対して情報を提供すること、やりたいという方々に医師が応えることは必要だと 考えます。
ところが日本では、医師の中にも同時接種を避ける方が少なくありません。たしかに日本では単独接種が標準でしたし、接種の場所も上腕部がほとんどだったの で、下肢まで使って3本も4本も打つのに抵抗感があるのは、理解できます。でも海外では当たり前にやって実際に多くの病気を防いできたのですから、せめて 親御さんが希望される場合には、左右両肩に1本ずつ2種類同時からでも、対応していただきたいと思います。
もちろん、海外で大丈夫だから日本でも大丈夫というのでは信用しない人もいます。そういう方々に納得していただくためにも、厚労省の研究班で行われている と聞いております同時接種の安全性調査について、結果を定期的に提示していただいて、単独接種と同時接種の差がないかどうかについて皆で検証していくこと が大切であると思います。
単独接種ですべて行おうとすると適切な時期に打てなくなるのは、日本独自のルールとして、不活化ワクチンを接種してから次のワクチン接種まで6日間空ける こと、ポリオやBCGを集団接種した日に別の医療機関で他のワクチンを打つ同日接種をしてはいけないことも影響しています。でも、同じ種類のワクチンにお いては一定の間隔を空けるのには根拠がありますが、異なる種類のワクチンに関しては、副反応が出た場合にワクチンとの関係を明確にするということが主な理 由です。接種間隔についても見直しの議論をしてもよい時期なのかもしれません。
なお、ワクチンが防いでいる病気の潜在的な疾病リスクを明確にすること、すべてのワクチンについて、同じ基準で接種後の有害事象の評価を行うことも、今後一層大切になると考えます。
(いしわだ・なるひこ)1990年、千葉大学医学部卒業。2006年、千葉大学医学部附属病院小児科講師。2011年11月から現職。