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Vol.391 ポストドクターに医師への道を

医療ガバナンス学会 (2012年2月4日 06:00)


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林 恵美子(医学博士)
2012年2月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


我が国におけるポストドクターを中心とした若手研究者のキャリアパスは大きな問題を抱えており、解決に向けた取り組みが急務とされています。ポストドク ターとは博士号(Ph.D.)取得者のことを指し、欧米諸国においてはPostdoctoral fellow(ポストドクトラル・フェロー)と呼ぶことが一般的です。近年、国策として、ポストドクターを量産させた結果、受け入れる側の環境が追いつか ず、身分の不安定化となり、改善されることなく、現在に至っています。一方、現在、深刻な医師不足が議論されており、医学部の増員といった改善策を模索中 であります。そこで、過剰になっているポストドクターを医師として活用出来るのではないかと考えました。ポストドクターは既に博士号を取得するだけの基礎 研究に精通しており、MD/PhDコースを設立することとほぼ同義になると考えられます。また、よりハイレベルな医師になることが期待され、医師不足の解 消とサイエンスの重要性を理解できる医師を生み出すといったことで社会的にとても意義深い事だと思います。

2007年度における文部科学省「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」が報告されております。この調査は、平成18年度 採択8機関である8つの大学及び研究所を対象に、平成17年度にこれら8つの機関へ所属していたポストドクターの進路動向を明らかにするために実施されま した。進路に関する情報が得られたポストドクターの数は計3,870名分であり、これはポストドクター総数約1万5千人のおよそ4分の1に当たります。
そこで、この調査からいくつか抜粋させて頂き、下記のような現状が浮き彫りとなりました。

我が国のポストドクターはおよそ1万5千人で、うちわけは「平成17年度終了直後に「同一機関にポストドクターとして所属している者」は67.0%、「他 機関のポストドクターになった者」は8.0%、ポストドクター以外の職に就いた者の中で「転職者」は19.4%、「職業不明の者」は5.6%でした。また 「転職者」の所属機関においては、86.8%か研究・開発者(機関種別では、国内の学術研究機関70.0%、国内の民間企業16.8%)になっています。
これらの「転職者」全体のうち常勤と非常勤の比率は「常勤」70,8%、「非常勤」10.8%、「不明」18.4%であり、さらに、同じく「転職者」全体のうち任期の有無においては「任期あり」30.7%、「任期無し」31.8%、「不明」37.5%となっています。

このデータより、少なくとも常勤に就いたポストドクターは全体の約14%、およそ2100人となり、さらに任期のないパーマネントの職についたポストドク ターはわずか約6%、およそ900人ということになります。残りの約85%以上およそ12750人のポストドクターは、ポストドクター、または転職をして も2、3年の契約雇用という不安定な職についているということになります。

ポストドクターの分野別では理学 44.4%、保険系16.6%、農学7.2%, 工学22.8%となっており、少なくともおよそ70%のポストドクターが生物系であることがわかります。生物系のポストドクターの中には基礎医学を学び、 医学に興味を持っているポストドクターも少なからずいるはずです。その人たちに医師への道を開けさせて下されば、医師不足も、また行き先のない不安定なポ ストドクターの将来も解決出来る道標の一つになると思います。

<参考資料>
ポストドクター進路動向8機関調査
文部科学省『科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業』
平成18年度採択8機関に対する調査
文部科学省 科学技術政策研究所

<略歴>(はやし・えみこ)慶應義塾大学大学院医学研究科にて医学博士を取得。米国マサチューセッツ大学医学部、ハーバード大学医学部に研究留学。留学経験を通じて、日本の医学研究におけるPhD研究者の連携を模索している

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