医療ガバナンス学会 (2012年4月7日 06:00)
『ロハス・メディカル』新聞社版2012年4月号に掲載されたものです
医療法人自然堂峯小児科 院長
峯 真人
2012年4月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
乳幼児期のワクチンは、感染を防ぐためには早期に受けることが肝心です。多くは生後2カ月から半年、ロタワクチンなどは生後24週までの間に、2回以上接 種しなければなりません。数カ月で十数本。それを一度の受診で1本に限っていたら、受診だけでもひと苦労、風邪で予定がずれ込めばしかるべき期間内に接種 しきれない事態も出てきます。かかる順序も分からず、重症化の度合いも一概に言えず、優先順位はつけられません。
同時接種なら、こうした問題を一気に解決できます。受診は3~4回で済み、まだ首の据わらない赤ちゃんをお母さん一人で受診させる苦労もぐんと減ります。医療機関には他の病気の患者さんもいますが、そこでの感染のリスクも避けられます。
ところが、同時接種は「おっかない」もの、といった誤解もまだ根強くあるようです。信じがたいことに、小児科以外の医師や医療機関の中にも「後で何か異変 があってクレームを付けられても困る」と、同時接種を控えるところがあるのだとか。的外れな心配より、タイミングを逃して感染し、取り返しのつかない事態 に陥る危険を懸念すべきです。
そもそも接種後の有害事象の多くは〝紛れ込み〟です。発熱さえ、通常は体の正常な免疫反応で、ワクチンが効いている証拠とも言えます。接種間隔を空けるこ とになっているのも、紛れ込みを発見しやすくしようというだけで、ワクチンの有効性や安全性に関わる理由ではないのです。正しい理解を働きかけることが、 小児科医としての責任だと自負しています。
そこで大事なのが、初めての予防接種の時。1回目にきちんと説明の上で同時接種を受けてもらい、経過が良好であれば、2回目からはお母さんたちの方から 「同時接種でお願いします」となるのです。先々の接種スケジュール作成までお手伝いし、ややこしさを減らせるよう努めています。
医療スタッフの教育も徹底しています。知識を共有し、接種予約の電話に誰が出ても、院内で誰に聞いても、同じ説明ができるようにすることで、お母さん方に不安を与えない体制づくりをしています。
こうしてお母さん方の理解と納得、そして信頼を得て、私の医院では特段の理由がない限り95%が同時接種です。本当はどの医療機関でも実施されているべき ですが、他で断られて遠方から赤ちゃんをお連れになる方もいます。さらに言えば、海外では当たり前に使われている多種混合・多価ワクチンであれば、同時接 種さえ不要なのです。赤ちゃんとお母さんのために、一刻も早い導入が望まれます。