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Vol.466 教育から復興を!

医療ガバナンス学会 (2012年4月23日 06:00)


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―大学受験・スポーツ・文芸、3つの観点から―(前編)

東京大学医学部医学科六年
前田 裕斗
2012年4月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


我が子にいい教育を受けさせたい―大なり小なりこれは幼い子を持つ全ての親達に共通する願いだろう。実際毎年東大・京大といった有名大学の合格実績は話題となり、多くのメディアで報道される。自分が住む県の教育は他県と比べてどうなのか。震災の教育に対する影響は。この記事ではそういった疑問にお答えして いきたいと思う。

さて、教育というのはどこまでを含めるのか定かではないが、本稿では大学受験、スポーツ、文芸という3つの視点から考える。まずは大学受験だ。もちろん偏 差値の高い大学に受かったからといって頭がいいことにはならないが、各県の高等教育の一つの指標にはなるだろう。比較に用いた大学についてだが、今回は東 京大学のみ、東京大学+京都大学、旧七帝大の合格者数を各都道府県で集計・解析した。他の国立大学や有名私立を加えるべきだという批判は当然あると思う が、どの大学まで含めるかということが問題になってしまうので、一つの基準としてご容赦願いたい。
単純に合格者数を比較しただけでは人口が多い県ほど有利になるため、ここでは受験生集団の多数を占めると考えられる18歳の人口を都道府県別に調べ、これで各県の東大・京大合格者数を割り、1000をかけた値、つまり、ある県の学校に通っている学生1000人中、何人が東大・京大に合格するのかという値で比較を行った。また、合格者・人口については震災による影響を除くため2010年度のものを採用した。結果は以下になる。

【参照(図1)】ダウンロードしてください(以下、ファイルは同じです)
↓↓

http://expres.umin.jp/mric/MRIC_maedayuto.pdf

図の説明だが、算出した平均値を参考に等間隔で閾値を設定し、色分けを行っている。平均未満の値は青・水色、平均以上の値は黄・橙・赤で塗られていると考えていただきたい。

まず東大・京大の合格者数による比較についてだが、以下のような結果が得られた。
≪TOP5≫ 1位 奈良、 2位 京都、 3位 兵庫、 4位 東京、 5位 和歌山
≪WORST5≫ 43位 宮城、 44位 栃木、 45位 福島、 46位 沖縄、 47位 青森
≪地方別≫ 1位 東京都、 2位 近畿地方、 3位 中国地方、 4位 中部地方、 5位 四国地方、 6位 九州・沖縄、 7位 関東地方(東京除)、 8位 北海道、 9位 東北地方
(北海道、東北、東京都、関東(東京除)、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄で分類)

続いて旧七帝大については以下のようになった。
≪TOP5≫ 1位 奈良、 2位 北海道、 3位 福岡、 4位 愛知、 5位 長崎
≪WORST5≫ 43位 茨城、 44位 神奈川、 45位 千葉、 46位 埼玉、 47位 沖縄
≪地方別≫ 1位 北海道、 2位 近畿地方、 3位 九州・沖縄、 4位 中部地方、 5位 中国地方、 6位 東北地方、 7位 四国地方、 8位 東京都、 9位 関東地方(東京除)

東大・京大の合格者数をみると、東日本で合格者が少なく西日本で合格者が多い「西高東低」の分布をとっている。西高東低という言葉は天気予報で聞いたことのある人も多いだろう。季節で言えば冬型の気圧配置なのだが、奇しくも同じ冬に行われる大学受験においてもこの言葉が当てはまる可能性がありそうだ。
一方旧七帝大については地元の進学者が多い北海道(北大に1241人)・東北(東北大に1128人)・東海(名大に1528人)・九州(九大に2028人)が上位に食い込んでくる。この辺りの地域は、大学のローカル化が進んでいると言えるだろう。
さて、このデータを見て「公立高校のみの成績で見ればまた違うのではないか。」と思った方も多いだろう。確かに、合格者に対する公立高校の占有率は合格者数と反比例する傾向にある。

【参照(図2)】ダウンロードしてください
↓↓

http://expres.umin.jp/mric/MRIC_maedayuto.pdf

右図は東大・京大合格者の公立高校占有率50%以上を赤、50%未満を青で塗り分けたものだ。東大・京大合格者数が多い県は公立高校出身者の合格占有率が低く、逆に少ない県は占有率が高い傾向にある。※


≪TOP5の占有率≫ 奈良19%、 京都39%、 兵庫37%、 東京11%、 和歌山19%
≪WORST5の占有率≫ 宮城 83%、 栃木 87%、 福島95%、  沖縄67%、 青森100%

ここまでの議論から導かれる仮説としては「進学に力を入れている私立高校が多い県ほど東大・京大の合格者数が多い」ということになる。だが、ここで次の図を見てほしい。

【参照(図3)】ダウンロードしてください
↓↓

http://expres.umin.jp/mric/MRIC_maedayuto.pdf

これは公立高校のみで比較した図だ。TOP5は福井、富山、島根、石川、岐阜。WORST5は千葉、神奈川、青森、沖縄、高知であり、その他の県についても図を見れば明らかに西高東低の傾向が認められる。つまり公立だけでも、私立を加えても単位人口当たりの東大・京大合格者数は西に多く、東に少ないという ことになる。
問題なのは、これが東日本大震災前のデータを用いたものだということだ。震災後、東北地方からは多くの家族が県外へ避難しており、その数は2012年2月 23日、福島県だけでも約6万2000人にも及ぶとされる。これだけの人数が県外に流出し、また多くの教育機関が甚大な被害を被ったあとでは一体どのような結果が出るのだろうか。

【参照(表1)】ダウンロードしてください
↓↓

http://expres.umin.jp/mric/MRIC_maedayuto.pdf

この表は東北地方の2010年度と2012年度の旧七帝大合格者数を比較したものである。
東大と京大の合計合格者数が126人から108人と約15%減少している他、合格者全体の合計で見ると1439人から1306人と約9%減少していることがわかる。

さて、以上で見てきたように震災前後で東北地方全体の合格者実績は明らかに低下しており、これは人材の流出および教育機関への被害が原因として考えられる。また、震災以前においても近畿・中部・中国地方と比較して東北地方の東大・京大・旧七帝大の合格者数は少なく、その傾向は公立高校のみに限っても変わらないことがわかった。このことを受けて、今後どのようにして東北地方の教育復興に取り組んでいけばよいのだろうか。
一つには県外流出し、減少した人口を元に戻すことだ。この点については医療・福祉の充実や原発被害への取り組みなど復興に関わる取り組み全てが関係してくる。
もう一つは教育機関の回収や新設など、教育関係の投資を増やしていくことだ。福島県相馬高校では東京からボランティアで予備校の先生に継続的に指導に来てもらうなど教育の充実化を図り、2012年度国公立大学合格者数は前後期合わせて42人と例年前後期合わせて30人のところを平年比1.4倍と大躍進の結果となったそうだ。個人のネットワークによって教育を充実させ、結果に繋がった好例と言えるだろう。

さて、今回は大学受験の結果から考察を行った。次回はスポーツ・文芸について見ていこうと思う。

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