医療ガバナンス学会 (2012年4月24日 06:00)
『ロハス・メディカル』新聞社版2012年5月号に掲載されたものです
国立病院機構福岡病院 統括診療部長
岡田 賢司
2012年4月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
この細菌性髄膜炎の患者年齢分布を調べてみると、原因菌がHib(ヒブ)の場合も肺炎球菌の場合も、1歳未満が約5割を占め、特に6~12カ月の半年間が3割以上と最多でした。
この二つの細菌にはワクチンがあり、接種への全額公費助成が行われる地域も増えています。しかし私たちが福岡県で行っている調査では、予防接種を受けてい たのに罹患したというお子さんたちがいました。ワクチンがカバーしていない種類の菌に感染したという防ぎようのないものもありましたが、罹患の時点で2回 しか予防接種が終わっていなかったという大変もったいないものもありました。
この二つのワクチンは、感染力や病原性を失わせた不活化ワクチンです。不活化ワクチンは、安全性が高い代わりに、有効な免疫を獲得するまでに3回から4回の接種が必要です。
生後6カ月以降に罹患する乳児が急増することを考えると、それまでに3回までの接種を済ませたいところです。
国立感染症研究所が必要なワクチンを示したスケジュールによると、1回受診する度に3種類以上のワクチンを同時に接種する前提なら、この2種類を6カ月ま でに3回打ち終わるためには、3回受診すればよいそうです。ちなみに1歳までに7回、小学校入学までに14回受診が必要です。
1回2種類までと限定すると、6カ月までに6回、1歳までに10回、入学までに18回と少し増えますが、何とかなるかなという受診回数です。
しかし、単独接種しかしないということにすると、6カ月までに14回、1歳までに17回、入学までに29回となります。これだけ医療機関にかかる回数が多くなると、その際に風邪をもらってスケジュールが遅れてしまうことが予想されます。
ワクチンの十分な恩恵に浴するためにも、ぜひ病気にかかる前に同時接種をしていただきたいと思います。
と同時に、いくら同時接種をするとしても、生後2カ月から接種し始めないと6カ月までに間に合わなくなる可能性があります。ところが、小児科医がお母さんたちと出会うのは、4カ月検診が初めてというのが一般的です。そこから説明を始めたのでは遅いので、産婦人科医や保健師の皆さんにも、こういったことをお 母さんたちへ説明していただきたいと思います。