医療ガバナンス学会 (2012年5月4日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年5月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
「一家で私と妻と子供たちが検査を受けた。家族の皆同じように避難して、同じように生活していたのに検査結果が異なるのはなぜか?」というものです。
ご存知のようにセシウムは徐々に排泄されていきます。尿や便から排泄され、通常の大人なら約3~4カ月で半分になります(生物学的半減期といいます)。
しかしながらこの半減期が、年齢によって大きく異なります。より若い人の方が排泄速度は早いのです。成人で約3~4カ月と申し上げましたが、6歳児で約1カ月、1歳児なら約10日で半分になります。
また、性別によっても半減期が異なり、男性より女性の方が半減期は短いことがわかっています。
そうすると、最初におなじ程度被ばくしてしまった場合でも、時間経過後計測すると、年齢と性別によって計測される数値が異なります。例えば、一家の皆さん を同時にWBCで検査をすると、一家で最も高齢の男性だけ検出する(おじいちゃんだけ検出してしまう)ことを非常によく経験しました。他のご家族は検出さ れません。自分だけ被ばくした理由は何かを知るために外来を受診されることもよくあります。
これは、その方だけ内部被ばくをしてしまっていたということを示している訳ではありません。大なり小なりみな内部被ばくしてしまっていたが、若い方や女性はより半減期が短いため、より短期間に検出されない程度にまで減少していたということを示しているだけです。
通常の家族間では高齢であるほど、男性の方が高い値が検出されます。家族間に大きな差があるときを除き、このような家族間の差は不自然なことではありませ ん。しかしながらその逆の場合は注意が必要です。例えば、旦那さんが検出限界以下であるのに、旦那さんより若い奥さんが検出されてしまうような場合です。 この場合は、事故直後により多く被ばくしてしまったか、その後の生活での慢性被ばくがより多い可能性があります。外来でそのようなご家族さんがいらっしゃ る場合には、事故直後の生活に差がなかったか、その後の生活で被ばくが気にかかるような場面が無いかじっくり聞いて相談しています。日常生活での余分な内 部被ばくが無いか、そしてその原因が仕事や食事と考えるなら、どのようにすればその影響を軽減できるのかを話しながら、今後の生活について相談していま す。
検査によるセシウムの検出率が下がって来ていることは良いことですが、慢性期の被ばくがゼロだということを示している訳ではありません。今後の継続的な検査が重要なことに変わりはありません。
写真はWBCによる継続検査が必要な理由です。また解説します。
*文中の写真はこちらのサイトよりご覧ください。
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