最新記事一覧

Vol.478 内部被曝通信 福島・浜通りから~検査はマンパワーに頼っている

医療ガバナンス学会 (2012年5月5日 06:00)


■ 関連タグ

この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/

南相馬市立総合病院
非常勤内科医  坪倉 正治
2012年5月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


今回は、内部被曝検査を受けていただく際の市立病院での実際を紹介します。

来院していただいた検診者の方はまず、身長体重を計測します。後でセシウムやカリウムの計測値が出た際、それらを体重あたりいくらになるのか計算したり、身長が130cm以下の場合は台を用いて計測したりする必要があるためです。

その後、日常生活に関する問診票の記入していただきます。どのような生活、特にどのような食品を摂取している方の内部被曝が多いのかをできるだけ早く調べるためです。

そして、着替えていただいた後、体表面が放射性物質により汚染されていないかをガイガーカウンターでチェックします。これはもちろん、体表面が放射性物質 によって汚染されている場合は、内部被曝を過大評価してしまうためです。その後ホールボディーカウンターの中に入っていただき、検査を行います。

検出器と遮蔽板の間はやや狭い空間ですが、そこにただ立っているだけで済み、検査自体は2分で終了します。来院から検査が終了するまで約30分ほどでしょうか。
やっていることは、これで終了なのですが、このために多くのマンパワーが必要となります。まずは予約です。現在、大きくは4種類の予約があります。

1) 初回検査
2) 以前使用していた器械でしか検査が出来ていなかった小児の再検査
3) 子供で値が検出された方の再検査 (Cs137で10Bq/kg以上を検出した方優先)
4) 大人で値が検出された方の再検査 (Cs137で20Bq/kg以上を検出した方優先)

の4つです。

毎日100人程度は検査をしているので、これらの予約の管理に当院では3~4人のスタッフが常時必要になります。
検査に関するスタッフも、問診記入の補助、着替えや検査の誘導、外部汚染のチェックに3~4人が必要です。そして検査自体は、当院では放射線技師の皆さんが交代で行ってくれています。

加えて結果説明のための医師です。当院では、結果郵送後、結果説明の外来の予約を取っていただき再度来院していただく形をとっています。
説明はどれだけ短くても1人当たり15~20分程度はかかります。理想的には、全員に細かく結果説明をしたいところなのですが、現実的には希望者にのみしか行えていません。

また、結果のデータや問診票は紙ベースなので、それらの打ち込みやファイリングを行ってくれるスタッフもいます。それぞれの部署に専属で仕事してくれているスタッフがいて、彼らのおかげでこのような運用が実現しています。本当に感謝しています。

残念ながら、この検査自体は医療行為になりません。検査の器械自体を放射線技師さんのような資格のある方に操作していただく必要は、本当は無いし、結果の説明自体も医師がやらなければならないという規定もありません。
しかしながら、今後継続的に定期的に検査をして行き、生活習慣、食生活に併せて検査方針やアドバイスを変えなければならない状況は、通常我々が行っている医療行為と何ら変わらないと思っています。圧倒的に特殊な検査をしている訳ではありません。

ホールボディーカウンターの待ち合いは、検査時には人でごった返しています。今から午後の検査が始まります。

*文中の写真はこちらのサイトよりご覧ください。
↓↓

https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/oMvK6NFX21

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ