医療ガバナンス学会 (2012年5月6日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年5月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
ひらた中央病院は、多くの自治体の住民の方々を対象に内部被曝検査を継続的に行っています。このサイト( http://www.seireikai.net/news/2012/04/post-33.html )で、結果を公表しています。
10組ほどの方々に結果を説明させていただきました。一方、スタッフの方から、こんなエピソードを聞きました。
とある自治体の子どもさんを計測した際、Fast scanの検出限界を超えたセシウムが体内から検出された。その地域では、他の子ども達からは誰からも検出しなかった(検出限界以下だった)のに、その子 からだけ検出された。そこで、その子のご両親の内部被曝検査も行った。すると、ご両親からもセシウムが検出された。その地域の大人の中では、やや高めの値 だった。
原因を突き止めるため、そのご家庭からじっくり話を聞き、その子の好物が干し柿であることを突き止めた。後日、自宅で作っていた干し柿を持ってきてもらい、食品検査機で検査をすると、その干し柿から以前の出荷基準に引っかかるレベルの汚染が見つかった。
これとよく似たエピソードは、南相馬でも耳にすることがあります。今現在の内部被曝状況を示す典型的な事例のように思います。ポイントを2つご紹介します。
一つ目は、「他の子ども達は全員検出限界以下だったにも関わらず、その子からだけ検出された」という点です。もちろん自治体によるとは思いますが、1年経った現在、多くの子ども達で検出限界(約250Bq/body)1年9~10月には60%程度でした。
セシウムは徐々に排泄されます。子どもでは大人に比べて生物学的半減期が短く、大人が3~4カ月に対して、6歳で1カ月程度、1歳で10日程度です。日常生活での慢性被曝量が、極力抑えられていることを示していると考えています。
日常の生活で、どんどん体内のセシウム量が増えている状況では、今現在ありません。以前の被曝による影響をしっかりフォローすること、および今後の内部被曝量を増やさないことが大切です。
二つ目は、「干し柿」です。もう干し柿は食べてはいけないという話しでは全くありません。多くの余分な内部被曝が、汚染された食べ物によって、もたらされているということです。今回は、自宅で作っていた干し柿でした。そしてその干し柿は子どもの好物でした。
南相馬市立総合病院で聞いたケースでは、ある人は明らかに家庭菜園で作った野菜などが原因でした。もう一人は、未検査の果物の箱買いでした。
総じて、未検査の汚染食品を食べているということは共通しています。しかしながら、それぞれのご家庭によって内部被曝が増える原因が異なります。それを一人ひとり個別で話を聞くことで、突き止めて行く必要があります。
値の高かった人から、原因を突き止めることを繰り返し、どのような行動が高リスクなのかという、その土地に併せた個別具体的な知識を集積する必要がありま す。場所によって、井戸水、都市水道、簡易水道と異なったりします。その土地土地に合わせた対策が、それぞれ講じられるべきなのです。
線量計、食品検査機、ガラスバッジ、ホールボディーカウンター。これらの器械を組み合わせることで、初めて今後の生活で放射線防護のための具体的な知恵が生まれていきます。
*文中の写真はこちらのサイトよりご覧ください。
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