医療ガバナンス学会 (2008年12月13日 12:01)
患者補償保険法(私案2)
第1章 総則
第1条 患者補償保険は、患者の医療上の事由による通常は避けることのでき
えた負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公平な保護をするため、必要な
保険給付を行い、もって患者とその家族の福祉の増進に寄与することを目的とす
る。
第2条 患者補償保険は、政府が、これを管掌する。
第3条 この法律においては、健康保険法その他の医療保険に関する法律に基
づき患者を診療する医療(以下「保険医療」という。)を適用対象医療とする。
第4条 この法律に基づく政令及び厚生労働省令並びに患者補償保険の保険料
の徴収等に関する法律 (以下「徴収法」という。)に基づく政令及び厚生労働
省令(患者補償保険事業に係るものに限る。)は、その草案について、医療政策
審議会の意見を聞いて、これを制定する。
第2章 保険関係の成立及び消滅
第5条 保険関係の成立及び消滅については、徴収法 の定めるところによる。
第3章 保険給付
第1節 通則
第6条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 患者の保険医療上の通常は避けられえた負傷、疾病、障害又は死亡
(以下「医療災害」という。)に関する保険給付
二 その他の法律で特に定める負傷、疾病、障害又は死亡に関する保険給
付
第7条 給付基礎日額は、厚生労働省令で定めるところによって政府が算定す
る額とする。
第8条 年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始
め、支給を受ける権利が消滅した月で終わるものとする。
2 年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事
由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。
3 年金たる保険給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の
6期に、それぞれその前月分までを支払う。ただし、支給を受ける権利が消滅し
た場合におけるその期の年金たる保険給付は、支払期月でない月であっても支払
うものとする。
第9条 この法律に基づく保険給付を受ける権利を有する者が死亡した場合に
おいて、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったも
のがあるときは、その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係
と同様の事情にあった者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟
姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの(遺族補
償年金については当該遺族補償年金を受けることができる他の遺族、遺族年金に
ついては当該遺族年金を受けることができる他の遺族)は、自己の名で、その未
支給の保険給付の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、死亡した者が死亡前にその保険給付を請求していな
かったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その保険給付を請求すること
ができる。
3 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。
4 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人
がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対して
した支給は、全員に対してしたものとみなす。
第10条 年金たる保険給付の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、
その停止すべき期間の分として年金たる保険給付が支払われたときは、その支払
われた年金たる保険給付は、その後に支払うべき年金たる保険給付の内払とみな
すことができる。年金たる保険給付を減額して改定すべき事由が生じたにもかか
わらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額の年金たる保険
給付が支払われた場合における当該年金たる保険給付の当該減額すべきであった
部分についても、同様とする。
2 同一の医療上の事由による負傷又は疾病(以下この条において「同一の傷
病」という。)に関し、年金たる保険給付(遺族補償年金及び遺族年金を除く。
以下この項において「乙年金」という。)を受ける権利を有する患者が他の年金
たる保険給付(遺族補償年金及び遺族年金を除く。以下この項において「甲年金」
という。)を受ける権利を有することとなり、かつ、乙年金を受ける権利が消滅
した場合において、その消滅した月の翌月以後の分として乙年金が支払われたと
きは、その支払われた乙年金は、甲年金の内払とみなす。同一の傷病に関し、年
金たる保険給付(遺族補償年金及び遺族年金を除く。)を受ける権利を有する患
者が休業補償給付若しくは休業給付又は障害補償一時金若しくは障害一時金を受
ける権利を有することとなり、かつ、当該年金たる保険給付を受ける権利が消滅
した場合において、その消滅した月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付
が支払われたときも、同様とする。
3 同一の傷病に関し、休業補償給付又は休業給付を受けている患者が障害補
償給付若しくは傷病補償年金又は障害給付若しくは傷病年金を受ける権利を有す
ることとなり、かつ、休業補償給付又は休業給付を行わないこととなつた場合に
おいて、その後も休業補償給付又は休業給付が支払われたときは、その支払われ
た休業補償給付又は休業給付は、当該障害補償給付若しくは傷病補償年金又は障
害給付若しくは傷病年金の内払とみなす。
第11条 年金たる保険給付を受ける権利を有する者が死亡したためその支給
を受ける権利が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の
分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払に
よる返還金に係る債権(以下この条において「返還金債権」という。)に係る債
務の弁済をすべき者に支払うべき保険給付があるときは、厚生労働省令で定める
ところにより、当該保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金
額に充当することができる。
第12条 患者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因
となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
2 患者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなく
て療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若し
くはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度
を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一
部を行わないことができる。
第13条 偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、政
府は、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部をその者から徴
収することができる。
2 前項の場合において、医師又は医療機関が虚偽の報告又は証明をしたため
その保険給付が行われたものであるときは、政府は、その医師又は医療機関に対
し、保険給付を受けた者と連帯して前項の徴収金を納付すべきことを命ずること
ができる。
第14条 政府は、保険給付の原因である事故が第三者(当該医師又は医療機
関を除く。以下同じ)の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたとき
は、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害
賠償の請求権を取得する。
2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事
由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしな
いことができる。
第15条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえ
ることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を独立行政法人福祉
医療機構法 (平成14年法律第166号)の定めるところにより独立行政法人
福祉医療機構に担保に供する場合は、この限りでない。
第16条 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準とし
て課することはできない。
第17条 保険給付を受ける権利を有する者は、厚生労働省令で定めるところ
により、政府に対して、保険給付に関し必要な厚生労働省令で定める事項を届け
出、又は保険給付に関し必要な厚生労働省令で定める書類その他の物件を提出し
なければならない。
第二節 医療災害に関する保険給付
第18条 第6条第1号の医療災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付
とする。
一 療養補償給付
二 休業補償給付
三 障害補償給付
四 遺族補償給付
五 葬祭料
六 傷病補償年金
七 介護補償給付
2 前項の保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、患者補償
の事由が生じた場合に、補償を受けるべき患者若しくは遺族又は葬祭を行う者に
対し、その請求に基づいて行う。
3 傷病補償年金は、医療上負傷し、又は疾病にかかった患者が、当該負傷又
は疾病に係る療養の開始後1年6箇月を経過した日において次の各号のいずれに
も該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなったときに、
その状態が継続している間、当該患者に対して支給する。
一 当該負傷又は疾病が治っていないこと。
二 当該負傷又は疾病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該
当すること。
4 介護補償給付は、障害補償年金又は傷病補償年金を受ける権利を有する患
者が、その受ける権利を有する障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる
障害であって厚生労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要す
る状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けて
いる間(次に掲げる間を除く。)、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。
一 障害者自立支援法 (平成17年法律第百123号)第5条第12項 に規
定する障害者支援施設(以下「障害者支援施設」という。)に入所している間
(同条第6項 に規定する生活介護(以下「生活介護」という。)を受けている
場合に限る。)
二 障害者支援施設(生活介護を行うものに限る。)に準ずる施設として厚生
労働大臣が定めるものに入所している間
三 病院又は診療所に入院している間
第19条 療養補償給付は、療養の給付とする。
2 前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)
による。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
3 政府は、第1項の療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令
で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。
第20条 休業補償給付は、患者が医療上の負傷又は疾病による療養のため就
業することができない日の第四日目から支給するものとする。
2 休業補償給付を受ける患者が同一の事由について厚生年金保険法 (昭和2
9年法律第115号)の規定による障害厚生年金又は国民年金法 (昭和34年
法律第141号)の規定による障害基礎年金を受けることができるときは、当該
患者に支給する休業補償給付の額は、別に定める。
第21条 患者が次の各号のいずれかに該当する場合(厚生労働省令で定める
場合に限る。)には、休業補償給付は行わない。
一 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合
二 少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合
第22条 障害補償給付は、厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害補償
年金又は障害補償一時金とする。
2 障害補償年金又は障害補償一時金の額は、それぞれ別に定める。
第23条 障害補償年金を受ける患者の当該障害の程度に変更があったため、
新たに別に定める他の障害等級に該当するに至った場合には、政府は、厚生労働
省令で定めるところにより、新たに該当するに至った障害等級に応ずる障害補償
年金又は障害補償一時金を支給するものとし、その後は、従前の障害補償年金は、
支給しない。
第24条 遺族補償給付は、遺族補償年金又は遺族補償一時金とする。
第25条 遺族補償年金を受けることができる遺族は、患者の配偶者、子、父
母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、患者の死亡の当時その収入によって生計
を維持していたものとする。ただし、妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚
姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。)以外の者にあっては、患者
の死亡の当時次の各号に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者
を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、60歳以上であること。
二 子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間
にあること。
三 兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間
にあること又は60歳以上であること。
四 前3号の要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹につい
ては、厚生労働省令で定める障害の状態にあること。
2 労働者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、前項の規定の適用
については、将来に向かって、その子は、患者の死亡の当時その収入によって生
計を維持していた子とみなす。
3 遺族補償年金を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母
及び兄弟姉妹の順序とする。
第26条 遺族補償年金の額は、別に定める。
2 遺族補償年金を受ける権利を有する者が2人以上あるときは、遺族補償年
金の額は、前項の規定にかかわらず、別に定める額をその人数で除して得た額と
する。
3 遺族補償年金の額の算定の基礎となる遺族の数に増減を生じたときは、そ
の増減を生じた月の翌月から、遺族補償年金の額を改定する。
4 遺族補償年金を受ける権利を有する遺族が妻であり、かつ、当該妻と生計
を同じくしている遺族補償年金を受けることができる遺族がない場合において、
当該妻が次の各号の一に該当するに至ったときは、その該当するに至った月の翌
月から、遺族補償年金の額を改定する。
一 55歳に達したとき(厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く。)。
二 厚生労働省令で定める障害の状態になり、又はその事情がなくなつたとき
(55歳以上であるときを除く。)。
第27条 遺族補償年金を受ける権利は、その権利を有する遺族が次の各号の
一に該当するに至ったときは、消滅する。この場合において、同順位者がなくて
後順位者があるときは、次順位者に遺族補償年金を支給する。
一 死亡したとき。
二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含
む。)をしたとき。
三 直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子
縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となったとき。
四 離縁によつて、死亡した患者との親族関係が終了したとき。
五 子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31
日が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き第25条第1項第4号の厚生
労働省令で定める障害の状態にあるときを除く。)。
六 第25条第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にある夫、子、
父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったとき(夫、父
母又は祖父母については、患者の死亡の当時60歳以上であったとき、子又は孫
については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄
弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか
又は患者の死亡の当時60歳以上であったときを除く。)。
2 遺族補償年金を受けることができる遺族が前項各号の一に該当するに至っ
たときは、その者は、遺族補償年金を受けることができる遺族でなくなる。
第28条 遺族補償年金を受ける権利を有する者の所在が一年以上明らかでな
い場合には、当該遺族補償年金は、同順位者があるときは同順位者の、同順位者
がないときは次順位者の申請によって、その所在が明らかでない間、その支給を
停止する。この場合において、同順位者がないときは、その間、次順位者を先順
位者とする。
2 前項の規定により遺族補償年金の支給を停止された遺族は、いつでも、そ
の支給の停止の解除を申請することができる。
3 第26条第3項の規定は、第1項の規定により遺族補償年金の支給が停止
され、又は前項の規定によりその停止が解除された場合に準用する。この場合に
おいて、同条第三項中「増減を生じた月」とあるのは、「支給が停止され、又は
その停止が解除された月」と読み替えるものとする。
第29条 遺族補償一時金は、次の場合に支給する。
一 患者の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。
二 遺族補償年金を受ける権利を有する者の権利が消滅した場合において、他
に当該遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡
に関し支給された遺族補償年金の額の合計額が当該権利が消滅した日において前
号に掲げる場合に該当することとなるものとしたときに支給されることとなる遺
族補償一時金の額に満たないとき。
2 前項第2号に規定する遺族補償年金の額の合計額を計算する場合には、同
号に規定する権利が消滅した日の属する年度(当該権利が消滅した日の属する月
が4月から7月までの月に該当する場合にあっては、その前年度。以下この項に
おいて同じ。)の7月以前の分として支給された遺族補償年金の額については、
その現に支給された額に当該権利が消滅した日の属する年度の前年度の平均給与
額を当該遺族補償年金の支給の対象とされた月の属する年度の前年度(当該月が
4月から7月までの月に該当する場合にあっては、前々年度)の平均給与額で除
して得た率を基準として厚生労働大臣が定める率を乗じて得た額により算定する
ものとする。
第30条 遺族補償一時金を受けることができる遺族は、次の各号に掲げる者
とする。
一 配偶者
二 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子、父母、孫及
び祖父母
三 前号に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹
2 遺族補償一時金を受けるべき遺族の順位は、前項各号の順序により、同項
第2号及び第3号に掲げる者のうちにあつては、それぞれ当該各号に掲げる順序
による。
第31条 遺族補償一時金の額は、別に定める。
2 第26条第2項の規定は、遺族補償一時金の額について準用する。
第32条 患者を故意に死亡させた者は、遺族補償給付を受けることができる
遺族としない。
2 患者の死亡前に、当該患者の死亡によって遺族補償年金を受けることがで
きる先順位又は同順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者は、遺族補償年
金を受けることができる遺族としない。
3 遺族補償年金を受けることができる遺族を故意に死亡させた者は、遺族補
償一時金を受けることができる遺族としない。患者の死亡前に、当該患者の死亡
によって遺族補償年金を受けることができる遺族となるべき者を故意に死亡させ
た者も、同様とする。
4 遺族補償年金を受けることができる遺族が、遺族補償年金を受けることが
できる先順位又は同順位の他の遺族を故意に死亡させたときは、その者は、遺族
補償年金を受けることができる遺族でなくなる。この場合において、その者が遺
族補償年金を受ける権利を有する者であるときは、その権利は、消滅する。
5 前項後段の場合には、第27条第1項後段の規定を準用する。
第33条 葬祭料は、通常葬祭に要する費用を考慮して厚生労働大臣が定める
金額とする。
第34条 傷病補償年金は、第18条第3項第2号の厚生労働省令で定める傷
病等級に応じ、別に定める。
2 傷病補償年金を受ける者には、休業補償給付は、行わない。
第35条 傷病補償年金を受ける患者の当該障害の程度に変更があったため、
新たに別に定める他の傷病等級に該当するに至った場合には、政府は、厚生労働
省令で定めるところにより、新たに該当するに至った傷病等級に応ずる傷病補償
年金を支給するものとし、その後は、従前の傷病補償年金は、支給しない。
第36条 介護補償給付は、月を単位として支給するものとし、その月額は、
常時又は随時介護を受ける場合に通常要する費用を考慮して厚生労働大臣が定め
る額とする。
第37条 この節に定めるもののほか、医療災害に関する保険給付について必
要な事項は、厚生労働省令で定める。
第4章 費用の負担
第38条 患者補償保険事業に要する費用にあてるため政府が徴収する保険料
については、徴収法 の定めるところによる。
第39条 政府は、医師又は医療機関が故意又は重大な過失により生じさせた
業務災害の原因である事故について保険給付を行ったときは、厚生労働省令で定
めるところにより、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を
医師又は医療機関から徴収することができる。
第40条 国庫は、予算の範囲内において、患者補償保険事業に要する費用の
一部を補助することができる。
第5章 不服申立て及び訴訟
第41条 保険給付に関する決定に不服のある者は、患者補償保険審査官に対
して審査請求をし、その決定に不服のある者は、医療保険審査会に対して再審査
請求をすることができる。
2 前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から3箇月を経過して
も審査請求についての決定がないときは、当該審査請求に係る処分について、決
定を経ないで、医療保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
3 第1項の審査請求及び前2項の再審査請求は、時効の中断に関しては、こ
れを裁判上の請求とみなす。
第42条 前条第1項の審査請求及び同条第1項又は第2項の再審査請求につ
いては、行政不服審査法 (昭和37年法律第160号)第2章第1節 、第2節
(第18条及び第19条を除く。)及び第5節の規定を適用しない。
第43条 第41条第1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分につい
ての再審査請求に対する医療保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起するこ
とができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 再審査請求がされた日から3箇月を経過しても裁決がないとき。
二 再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるた
め緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があると
き。
第6章 雑則
第44条 療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、
休業給付、葬祭給付及び介護給付を受ける権利は、2年を経過したとき、障害補
償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、5年を経過した
ときは、時効によって消滅する。
第45条 この法律又はこの法律に基づく政令及び厚生労働省令に規定する期
間の計算については、民法 の期間の計算に関する規定を準用する。
第46条 患者補償保険に関する書類には、印紙税を課さない。
第47条 市町村長(特別区及び地方自治法 (昭和22年法律第67号)第2
52条の19第1項 の指定都市においては、区長とする。)は、行政庁又は保
険給付を受けようとする者に対して、当該市(特別区を含む。)町村の条例で定
めるところにより、保険給付を受けようとする者又は遺族の戸籍に関し、無料で
証明を行なうことができる。
第48条 行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は医療機関
に対して、この法律の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずること
ができる。
第49条 行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、患者若しくは保険
給付を受け、若しくは受けようとする者に対して、この法律の施行に関し必要な
報告、届出、文書その他の物件の提出(以下この条において「報告等」という。)
若しくは出頭を命じ、又は保険給付の原因である事故を発生させた第三者に対し
て、報告等を命ずることができる。
第50条 行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付
を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎と
なる者を含む。)に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずるこ
とができる。
第51条 政府は、保険給付を受ける権利を有する者が、正当な理由がなくて、
第17条の規定による届出をせず、若しくは書類その他の物件の提出をしないと
き、又は前2条の規定による命令に従わないときは、保険給付の支払を一時差し
止めることができる。
第52条 行政庁は、この法律の施行に必要な限度において、当該職員に、医
療機関に立ち入り、関係者に質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させる
ことができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、
関係者に提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたもの
と解釈してはならない。
第53条 行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、厚生労働
省令で定めるところによって、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補
償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)の診療を担当した医師
その他の者に対して、その行った診療に関する事項について、報告若しくは診療
録、帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に、これらの物件を検査
させることができる。
2 前条第2項の規定は前項の規定による検査について、同条第3項の規定は
前項の規定による権限について準用する。
第54条 この法律に基づき政令又は厚生労働省令を制定し、又は改廃する場
合においては、それぞれ政令又は厚生労働省令で、その制定又は改廃に伴い合理
的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。
第55条 この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めると
ころにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
第56条 この法律の施行に関する細目は、厚生労働省令で、これを定める。
第7章 罰則
第57条 医師又は医療機関が次の各号のいずれかに該当するときは、6月以
下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
一 第48条の規定による命令に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告を
し、又は文書の提出をせず、若しくは虚偽の記載をした文書を提出した場合
二 第52条第1項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しく
は虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
第58条 医師又は医療機関が次の各号のいずれかに該当するときは、6月以
下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
一 第49条の規定による命令に違反して報告若しくは届出をせず、若しくは
虚偽の報告若しくは届出をし、又は文書その他の物件の提出をせず、若しくは虚
偽の記載をした文書を提出した場合
二 第52条第1項の規定による当該職員の質問に対し答弁をせず、若しくは
虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
三 第53条第1項の規定による命令に違反して報告をせず、虚偽の報告をし、
若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示をせず、又は同条の規定による検
査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
第59条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者
が、その法人又は人の業務に関して、第57条又は前条の違反行為をしたときは、
行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。