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Vol.543 医療事故調問題と死因究明二法

医療ガバナンス学会 (2012年7月18日 06:00)


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前衆議院議員
自由民主党岡山県第四選挙区支部長
橋本 岳
2012年7月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


●死因究明二法が成立した
さる6月15日、死因究明関連二法案が参議院本会議で可決され、成立した。筆者はこれまでこれらの法案の動向について都度MRICで報告してきた。今回あ まり脚光を浴びることの少ない死因究明の問題がきちんと国会で議論され、一つの方向性が法律として定められたことは、誠に喜ばしいことである。ご尽力をい ただいた各位に深く敬意と感謝を申し上げたい。
この二法案を簡単におさらいすると、死因究明の推進等に関する法律(以下「死因究明推進法」)は、もともと自民党・公明党の議連での提言から法案化され国 会に提出されていたものが、今回もう一つの法案とあわせて三党協議に諮られ修正の上で成立したものであり、二年間で死因究明制度そのものを幅広く見直し再 構築するための「死因究明等推進会議」を内閣府に設けることが主な趣旨である。また警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律(以下「死 因・身元調査法」」)は、警察庁の研究会報告をもとに警察庁が当初政府提出法案として用意した法案をベースに民主党が議員立法として作成したもので、警察 が取り扱う死体について死因究明のための検査や解剖等を必要な場合は遺族の承諾なく行える制度を創設したことが主な柱となっている。

●医療事故調問題と死因究明二法案
そもそも筆者がMRICにおいてこれらの法案についての経緯を報告してきた意図は、医療事故調問題に関して今回の法律により影響がありうるという観点か ら、医療関係の方々に注意喚起をしたいというものだった。ところが結果としては、医療事故調との関連では現行制度がほぼ生き残る結果となった。
まず「死因・身元調査法」は、「警察等が取り扱う死体について、調査、検査、解剖その他死因又は身元を明らかにするための措置に関し必要な事項を定める」 (第一条)とされており、医療事故調問題で議論の火元となった「どういう場合に警察に通知をすべき/せざるべきか」という問題については一切触れられてい ない。医師に異常死通報義務を課した医師法第21条について何らの変更をするものではないし、当然異状死体の取り扱いを定めた規則等にも影響をしない。警 察が取り扱うことになった後の制度を定めた法律だから当然である。
なおこの点について、民主党・足立信也参議院議員がインタビュー(注)において、「三党で協議した結果、継続中の診療にかかる傷病に関連した死亡は『警察 が取り扱う死体』に含めないことに一致した』と述べているが、法律に書いてあることが法律なのであり、ただの私的な協議である三党間の協議でどのような合 意があったとしてもその内容に何らの担保があるわけでもなく、法的な拘束力は無いことに留意されたい。
一方で、筆者らがそれらの点にメスを入れるべく行った提言に基づく「死因究明推進法」は、逆に三党での協議において修正が加えられ、「医療の提供に関連し て死亡した者の死因究明のための制度については、その特殊性に鑑み、政府において別途検討する」という条文(第十六条)が追加された結果、医療関係は検討 対象から除外されてしまった。したがってやはりこの法律もやはり医療事故調問題とは一線を画すものとなっている。現在、医療事故調については厚労省が「医 療事故に関する調査の仕組み等の在り方に関する検討部会」を開催しているため具体的にはそこで検討するものと思われる。
ということで、死因究明二法は三党協議による修正と抱き合わせ審議の結果、医療関連の項目はすべて注意深く省かれ、二法が施行されても当面現行制度はその まま生き残る結果となった。これはすなわち、かの福島県立大野病院事件の発生時点と法制度的には全く変更がない、ということを意味する。運用的な改善の故 か、同様の例はその後確認されていないが、個人的には今回はこれらの法制度に手を加えるひとつのチャンスであったと思っており、いささか残念である。

●国会審議の過程で一定の成果も
一方、二法案の国会審議においては明るい材料も見られた。死因・身元調査法において、死因究明等のために警察が行った検査結果・解剖結果等は、遺族の求め に応じて公開するよう修正すべきだという指摘がされていた。法文上は単に「死因その他参考となるべき事項の説明を行う」とのみ書いてあり、警察が行う説明 の客観性が担保される表現にはなっていなかったのだ。
この点については、修正には至らなかったものの、衆議院内閣委員会にて山内康一議員(みんなの党)および塩川鉄也議員(共産党)、参議院内閣委員会での浜 田昌良議員(公明党)から質疑が行われ、参議院内閣委員会において松原仁国家公安委員長が「死体画像診断の画像を含む検査結果や解剖結果等について、遺族 の求めに応じて公開するよう警察に指示する」という答弁を行い、また参院内閣委員会は同じ趣旨の付帯決議を行った。国会答弁および付帯決議は法律ではない ものの、行政府に対しては一定の拘束力を持つものである。
このことは警察が行う新制度に基づく検査や解剖等について透明性・公開性を具体的に担保することとなり、医療関係者のみならず一般の方々にとっても警察の恣意性を排除するという観点から一定の成果があったと言えるだろう。

●今後が大事
医療関連死問題は直接には関係無くなったとはいえ、死亡診断書・死体検案書を記入するのは医師の責務である以上、一般的な死因究明制度の検討においても当 然に医療関係者の関与は必要だ。衆院内閣委員会において山内議員が指摘したように、死因究明基本法に基づき今後設置される「死因究明等推進会議」において も、法医学関係者のみならず医療関係者の参加は必須であると筆者も考えている。
そういう意味で、法律は施行されたとはいえ、実際には今後の検討が大事であり、引き続いての注目をお願いしたい。

注)「死因究明関連二法案、診療関連死は除外―足立信也・民主党議員に聞く◆Vol.1」(m3.com 医療維新 http://www.m3.com/iryoIshin/article/154560/ )

【参考】死因究明二法に関連するMRIC記事
・『犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方について』について(Vol.171 2011/5/23)
・死因究明に関する二法案の相違点(Vol.367 2012/1/16)
・死因究明制度に関する与野党合意について(Vol.448 2012/3/31)

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