医療ガバナンス学会 (2012年7月19日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年7月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
今日は少し逆説的な、この内容についてお話ししたいと思います。どういうことか一言で言うと、その家族の内部被曝をいち早く見つけるためには、その家族の中で最も代謝の遅い高齢の方を計るのが一番効率良いということです。
子供からのセシウムの検出率は劇的に下がってきています。南相馬市のウェブサイトでも公開されているように、2012年3月での子供のセシウム検出率は1%以下です。
その傾向は維持されており、今現在も増加傾向にありません。いくつかのファストスキャンを用いている病院でお手伝いさせていただいていますが、どこもほとんど傾向は変わりません。
代謝のより早い小学生であれば、ほぼ100%検出しません(検出限界以下です)。検出限界は2分の計測で200-300Bq/body程度ですから、それ以下であることを示しています。
繰り返しになりますが、この事実は、慢性的な食品からのセシウム摂取量が、福島県の多くの地域でゼロに近く抑えられていることを示しています。ご両親が特に子供の食事に気を使っていらっしゃるからというのものあると思います。
このブログでも何度かご紹介させていただいているように、現在の慢性期の評価において、セシウムを検出するのは地域単位ではなく、家族単位です。とある家 族では全員が検出するけれども、とある家族では全員が検出しないという状況です。比較的線量の高い地域の家族で全員が検出せず、食生活を聞くと、農業をし て、自宅で採れた穀物、野菜を食べているがしっかり検査したものしか食べていないとおっしゃいます。
それと比べ、線量の低い地域の家族で全員が検出して、話を聞くと、特に食べ物は気を使っていない。こんな状況が外来では日常茶飯事です。
このような全員が検出する家族でも、その家族内で値に差が出ます。これは生物学的な差です。高齢であればあるほど、そして女性より男性の方が検出します。
つまり、同じ食事をしている家族では最も値が高くなるのは排泄の早い子供ではなく、年齢の一番高い男性ということになります。子供の内部被曝がどれだけか知りたい。今の生活で内部被曝がどれだけか知りたい。
多くの親御さんはそう思って子供さんを検査してほしいと考えます。特に自分は検査しなくてよいとおっしゃいます。しかしながら、それが効率的ではないことがあります。
子供を普通に計測して、検出限界以下である。もちろん、これでも十分リスクが低いことを証明していると思いますし、それ以上をやる必要があるのかと思われる方もいらっしゃると思います。
ただ、そのご家庭で汚染食品を継続的に食べてしまっていないか。これをいち早く見つけるのは、その家のお父さんの計測結果であるということです。
そうだからといって、子供を計らず、親しか計りませんというのもおかしな話です。話し合った結果、ひらた病院では子供さんを計測する際に、親も一緒に計る という運用を開始しました。子供さんと親御さんを同日に計測します。親御さんとのデータの比較があるので、さらにご家庭での慢性的なセシウムの摂取リスク に関して細かく指導や相談することが出来るようになります。
小さい子供を正確に量るための努力ももちろん必要なのですが、この方法は現実的な方法の一つだろうと認識しています。
今日は郡山で川内村の方々と放射線についての話などをしてきました。
本当にがんばっていらっしゃる保健福祉課のみなさんと。
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https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/TpigXw1NWt