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vol 23 すずかん通信「公立病院閉鎖が現実に。診療報酬改善の前提は医療側の自律と自治」

医療ガバナンス学会 (2008年12月10日 12:18)


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鈴木寛(通称すずかん)

去る9月30日、千葉県銚子市立総合病院(393床)が閉鎖となりました。産
科縮小中の都立墨東病院では、速やかな受け入れができず妊婦さんがお亡くなり
になられました。都から公社に移管された荏原病院でも、分娩受入中止が続いて
います。

2006年の医療改革以来、診療報酬は毎年減額。地域中核病院が閉鎖、縮小、
診療所化に追い込まれています。この流れは昨年12月、総務省の公立病院改革ガ
イドライン発出から加速。全国411公立病院中129病院が体制の見直しを迫
られています。

公的医療を担う病院の収益が悪くなる理由として、1)小児科、産科、救急な
どの非採算部門を他病院が撤退した後も最後の砦として担っている、2)一部病
院では建替え時にハードにお金をかけすぎ返済額が過大、3)看護師らコメディ
カルの勤続年数や平均年齢の関係で人件費が割高、などが指摘されています。と
はいえ産科はじめ医師確保の緊要性と、良質な看護師の確保・定着のため、必要
な人件費は確保しなければなりません。

やはり問題は、これら病院の収入源たる診療報酬が十分でないこと。診療報酬
体系の歪みを直すとともに、総医療費を先進国並みに引き上げていかなければな
りません。私も繰り返し訴えていますが、患者さんからの賛同は得られるものの、
健康な市民からの反応が芳しくありません。

国民の間には「医者はいい思いをしている」との意識が今なお根強く、医療界
が信頼と尊敬を取り戻し理解を得るには、さらなる努力を要します。過酷な勤務
環境の下で病院勤務医の確保が難しくなっている実態を説明していくと同時に、
倫理なき医師を放置することなく、医療界が自律的に、その退場を毅然と迫るこ
とも必要かもしれません。ドイツでは、強制加入の州医師会が「医師職業規則」
にもとづいて医師を監督。「医師職業裁判所」が民事・刑事裁判とは独立して審
判・制裁を行っています。

医療界が自浄作用を発揮し、診療報酬の病診配分の見直しなど自発的に提起す
ることで、医療費確保への国民の理解も得られるのです。医療界のリーダーシッ
プに期待します。もちろん我々もがんばります。

者紹介
鈴木寛(通称すずかん)
現場からの医療改革推進協議会事務総長、
中央大学公共政策研究科客員教授、参議院議員
1964年生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部助教授などを経て、現職。
教育や医療など社会サービスに関する公共政策の構築がライフワーク。

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