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Vol.567 高校生のメッセージビデオサイトTHINK NUKEを立ち上げて

医療ガバナンス学会 (2012年8月10日 06:00)


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灘高校2年
比護 遥、吉富 秀平
2012年8月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


比護遥、吉富秀平(灘高校2年)です。
高校生が原発問題を考えるビデオメッセージサイトを作りました。

http://thinknuke.tehu.me/

大飯原発の再稼働を始めとして、原発をどうするのかというのが今日本で大きな話題になっています。
原発推進、現状維持、廃止、どれに傾いてもこの国の将来に大きく影響するのは間違いありません。
そして、将来、原発の事故が起こったとしても、核廃棄物を処理しなければいけなくなったとしても、あるいは、日本経済が停滞したとしても、極度の節電を迫られたとしても、その影響を受けるのは高校生の世代です。
だからこそそんな高校生の声を聞いてほしいと思い、サイトを開きました。

○着想に至るまで
原発問題にあたって、私達は互いに違った着想を持っていました。

・吉富side
原発についてのデモが大きく取り上げられる中、そのデモに対する友達の話を聞いて驚きました。彼は「デモはやっても意味がない。”反対”というだけでは伝えたい事は伝わらないだろう。」と言ったのです。
私はデモが”意味がない”とは思いません。国家の動きに対して、国民の意思を伝える手段としてのその存在自体が”民主主義”の中で意味を持つと思うからで す。実際に’60の安保闘争もはっきりとしたわかりやすい結果につながらなかったものの、歴史におおきな爪痕を残した、意味のある行動だっと思います。
しかし、それと同時にその同級生の言葉には確かに一理あると感じました。確かにデモでは国民の中での議論は深まらない、と。
テレビで「反対です」という言葉を伝えるだけでは、賛成だと思っている人には届かない。国家を相手に声を挙げることも大事ですが、それと同時に国民が議論し合うことも重要ではないのでしょうか?
国民が原発に興味を持っている今、そこで齟齬が生じてしまうことを非常に残念に思うと同時に、そこに疑問を感じた自分自身でその溝を埋めたいと思いました。
そこで思いついたのがメディアとしての「ビデオ」の存在です。下之坊修子さんの「てれれ」という市民メディアにふれる機会もあったおかげで、ビデオというメディアの力強さ、持つポテンシャルの高さには気付いていました。
そして、私はビデオを通して、なにか出来ないかと思っていたのです。

・比護side
当時は大飯原発が再稼働するかどうかでちょうど緊張している時でした。現在でも続いていますが、毎週末の反原発デモは特に大きく報道されていました。
その「反原発」の主張がどうかは別として、何万人もの群衆が官邸などにおしかけている様子には胸を打たれました。こんなに大規模なデモが日本で起こったの は近年ではないそうです。こんなにも多くの人が自分の問題だととらえて実際に動いている。まさにこれが「民主主義」なんだ、と思いました。
そしてその光景を見ながらもう一つの事を思い出しました。この規模のデモは1970年の安保闘争以来だということです。
このデモは大学生などを中心としたものでしたが、実は僕たちの在籍する灘高校でも「灘校闘争」というものがありました。
その主張の是非は僕にはわかりません。その行動が全て正しかったのか、それもわかりません。
でも少なくとも高校生が社会の問題に対して、政治の問題に対して、積極的に発言をしようとしていた。自分の問題だととらえて考えようとしていた。それはとても大きいことだと思います。
それに対して今の自分たちはどうか。
原発についていろいろ話すことはないでもない。しかしそれをどこまで真剣に考えることができているか。そしてそれを実行に移せているか。僕たち高校生にとっての問題でもあるはずなのに。原発政策がどのように転んだとしてもその政策に巻き込まれるのは高校生の世代なのに。
なにかをしたいという思い、なにか動かなければと言う思いが募っていました。

○「THINK NUKE」という形へ
帰りの電車の中で、お互いのイメージを知った私達は、相手のアイデアに驚きました。
「高校生」「ビデオというメディア」互いのイメージを合わせ、ふくらませると、いろいろな高校生がビデオメッセージを投稿するサイトを作るという構想はすぐに出来上がったのです。

○着想を実行に
着想を実行に移すうえで、プログラミングに詳しい同級生の張惺君に相談しました。さすがは数々の開発をしたことがあるだけに、頭に思い描いたものを3日もたたずに形にしてくれました。
特に社会問題に関心が強い友人二人の投稿の協力を得ることもでき、動画を5本集めました。Youtubeを使用して投稿するシステムも整え、7月23日の 23時にリリース。TwitterやFacebookなどSNSを使った広報やマスメディアへのリリースの送付、また張君の人脈を生かして初日から多くの アクセスを得ることができました。
灘校の前川直哉先生にも関心を持って広げていただき、NHKや中日新聞、北海道新聞、神戸新聞、朝日学生新聞などから取材・問い合わせをしていただきました。
動画の投稿については伸び悩みましたが、それでも7校から12人にまで達しました。

○サイトの構想をたてるにあたって
大きな計画を立てようとして頓挫したことは何度かあるので、なるべくシンプルなコンセプトになるよう心がけました。
あえて言えば「マスコミに受けるような」コンセプトです。「原発問題、高校生の声を聞いてほしい。」大人も含めるかどうか、などありましたが、なるべく簡潔なメッセージになるようにしました。
ただこだわるところはこだわったつもりです。
なぜビデオメッセージという形にしたのか。安易な感情・感想ではなく、根拠を持った意見を語ってほしかったというのが1つ。ビデオをとるという少し覚悟のいるものとすることで、しっかりとした意見を考え、話してほしかった。
そしてもう一つは見る人にとってのものです。
ビデオというのがインパクトを持ったメディアであるうえ、飛ばしてみることがしにくいというのが大きいと思います。僕たちはともすると自分にとって都合の いい意見、自分と同じ意見のみを選択して見がちです。だから自分と違う意見でも、とりあえず3分間見てほしいと思います。そうすれば少なくとも無根拠でそ の意見を言っているのではないことに気付くはずです。相手の意見を知ることから議論が始まるのだと思います。トップページの動画がランダムに出るようにし たのもそれが理由です。
そして「THINK NUKE」というタイトルについて。他の案もありましたが、このタイトルにしたのは「NUKE」(nuclear:原子力)というトレンドワードが入って いるのもあります。ただこのタイトルは当然反原発運動の「NO NUKE」を意識したものでもあります。YESでもいいから、NOでもいいから、まずTHINK、考えようよ、というものです。そもそも原発問題は簡単に YES、NOに分けられる問題ではないと思います。同じ結論でも全く違う根拠の場合もあるし、その中間の意見だってあります。だからとりあえずTHINK しませんか?といったわけです。

○今後の展望
1つはすべての高校生、そして大人も含めたすべての人がこれを見て、そして一度自分でも原発問題について考えてほしいと思います。議論してほしいと思います。
次にこれをきっかけに高校生の声を社会が、政治が耳を傾けるようになったらいいと思います。現在日本が根本的に抱えている問題の一つとして、少子高齢化の 中で、「票」が多い上の世代の意見のみ聞かれるというものがあると感じています。高校生の声が大人に届く場があればいい。そしてその声を伝えるひとつのメ ディアが「THINK NUKE」であればいいと思います。
どちらかの意見を明確に示したものではない以上、何を以て「達成」されたか、というのは難しいですが、全体の意識が変わったらいい、そう思います。

もし、「THINK NUKE」の理念に賛同していただけるなら、このサイトを多くの人に伝えてください。多くの高校生に伝えてください。
これからも、多くの人が「THINK」出来るような、そのようなサイトを目指していきたいと思います。

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