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Vol.569 第5回医療事故に係る調査のあり方に関する検討部会感想文

医療ガバナンス学会 (2012年8月13日 06:00)


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医療制度研究会
中澤 堅次
2012年8月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


この文章は、医療事故調査制度に関心を持たれている人たちに、問題を共有していただくことを目的に、中澤の個人的な感想として書かせていただいています。 代表する団体がなく、どのような資格で参加したのか自分でもわかりませんが、個別の診療に責任を持ってきた一臨床医としての立場で、皆様のご意見をいただ き、具体化が進む議論の参考にさせていただきたいと思います。

前回の検討課題は、事故調査の目的で、原因を究明し、再発防止を図ることで意見は一致しました。しかし、調査の結果の利用は、刑事司法も排除できないとい う意見から、完全に独立したものでないと再発防止の議論はできないという意見まであり、調整はできていません。また、院内調査を医療機関がまず行い、その 上段に中立の第三者機関を置くということについては、私を除いて全員が一致しています。
それを受けて第5回では、第三者機関の権限と調査結果の取り扱いが議論されました。権限とは、国民の上に置かれた機関の運営のために、どこまで国民の権利を制限できるかという話なので、最初から違和感がありました。

1)第三者機関の調査に必要な権限について
案の定、医療現場に立ち入り捜索し、彼らの調査に関連するアイテムを押収する権限を与えるという意見もあり、構成員の間には、医療事故を起こせば犯罪人と いう考えがまだあると感じます。大方の意見は少し異なり、医療機関が拒否しても、患者の申し出があればカルテによる調査はできるから権限を明示しなくても いいという意見があり、私の意見は、再発防止に目的が限られるのであればよいが、法的な判定に利用されるのであれば、第三者機関の権限としては認められな いというものでした。
弁護士の構成員の考えは、第三者機関の調査は真実を求めるもので真実は一つ、一つなのだからどのような目的にも結果を使うことが出来るというもので、この あたりが争点です。前回も、医学的に見た良し悪しの判断は水準が高く設定され、処分を決める基準にはならないことを言い、今回も、再発防止の調査ならば二 つの結論があっても目的は果たせるので、良し悪しの判断とは異なるという話もしました。また、医学的な常識は数年もたたないうちに変わるので、処分のため の判定には使えないということを言いましたが、法律の判断は現在の水準で行われ、すぐに水準が変わっても何ら問題はないとの意見でした。そこが重要な問題 点なのですが、法律家の視点は違うので理解は難しいようです。
第三者機関の権限というと、日本のシステムは上ありきで、国民の権利がいかに制限できるかが議論されます。しかし、視点を病人権利に置き、それを基本に考 えれば、再発防止調査も病人のため、院内調査も第三者機関が行う調査も、正当に運営されれば役割は似通ってくるのですが、第三者機関は管理に回るから、い くら努力しても受療者との溝は埋まりません。この辺は分かってもらわねばならないと思います。

2)院内調査の結果の取り扱いについて
調査結果の取り扱いに入る前に、院内調査に関する議論がありました。院内調査は大規模病院ではすでに行われ、小規模病院で行うことのむずかしさが問題にな り、それが院内調査無用論になっていました。今回日本医師会から県の医師会内に、事故の対応が出来る人材を養成し、院内調査のシステムを構築したとの発表 があり、院内調査を重視している小生には明るい報告でした。
飯田構成員より、全日本病院協会の院内調査についての調査研究の結果が発表され、現場が最も必要としているのは医療安全・事故調査の専門家であり、患者、 家族のケアにも苦慮していると報告されました。全日病ではすでに医療安全事故調査スタッフの養成に取り組んでおり、有能なスタッフにより調査が充実するこ とは、受療者との間にある溝を埋めるうえで有効な手段となると思います。
今の日本では、事故にあった人に対応し、責任を果たすのは医療機関だけで、それ以外にはありません。責任ある立場に基本的な権利の制限がかかるのは納得がゆきません。患者の権利に対して医療者が責任を果たしてゆくことで、この辺の理解は進むのではないかと思います。
また、院内調査は東電の社内調査のようなもので、第三者の評価から見れば甘いものになり信用できないとの意見がありましたが、院内調査は目の前に被害にあった人がいて、その人の納得を得るためにやるのだから、甘いものになるはずはないと反論しておきました。

3)調査の実務について
時間がなく実質的な討論はされませんでした。

以前とは大分雰囲気が異なり、大きな意見の食い違いは無くなっているとの見方がされるようになりましたが、本質的な議論はこれからだと思います。
次回は8月30日に開催されます。

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