医療ガバナンス学会 (2012年8月14日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年8月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
宮城県の丸森町に行ってきました。
丸森町は人口1.5万、相馬市と境界が接しており、相馬から車で山道を30分ぐらい進むと市街地に着きます。宮城県内でも8市町村が「汚染状況重点調査地域の指定」を受けましたが、丸森町はその一つです。
町議会議員の一條さんからご連絡いただき、南相馬での内部被曝検診の現状や今後の問題点をお話しさせていただきました。
今現在の南相馬での検査では、セシウムの検出率が下がってきており、日常生活での慢性的な内部被曝が極端に少なくなっていること(特に子供に関しては 99.9%程度検出しなくなっていること)、検出されるとしても家族単位で検出することが多く、空間線量が高い地域の方が検出しやすいという状況では無い ことなどをお伝えしました。
丸森町も筆甫地区を代表とする比較的線量の高い地域があり、対応に難渋しています。相馬市の玉野地区と接しています。
ただ、内部被曝に関して言えば、筆甫地区だからという理由だけで(空間線量の比較的高い地域だと言う理由だけで)、もはや内部被曝量が高めに計測される可能性は低く、どのような食生活をしているかが一番影響を与え、継続的な食品検査が重要なことはどこでも変わりません。
事故から一年以上経ちましたが、各自治体による対応はなかなか足並みが揃うことがありません。内部被曝の検査も、ホールボディーカウンターを導入した自治 体、そうでない自治体と様々です。例えば、ひらた中央病院は、いくつかの自治体と提携して検査を進めていますが、自治体ごとに対応のレベルが全く異なりま す。
国や県から言われないのでやらないという自治体から、しっかり検査して行きたいという自治体まで大きな幅があります。
情報公開も問題です。内部被曝検査に関して、一番大事なのは検査を受けられた方にしっかり情報を伝えることですが、全体の情報公開も絶対に必要なことで す。自治体ごとに検査結果のデータを出されると、レッテルが貼られるとか、差があったときに対応できないので困るといったことを言われる自治体がまだまだ 多いことは残念です。南相馬市でも最初、同じことが起きました。
値が公表されてしまうと、それに関する問い合わせにうまく対応できない。情報公開後のハレーションを恐れて、情報公開をしたがらない。全体をまとめて発表 してしまう。そして結果がぼやける。霞ヶ関だけではありません。県、自治体、色々な検査場、様々な場所でこの考えがまだまだ根強いです。
当然、この情報公開は検査を受けた方々がより良い生活を送るために必要な情報となるべきで、検査提供する側の、「検査はやりました」という言い訳になってはいけません。
繰り返しの情報公開をしながら、より良い方針を生み出す。このサイクルに入るためにはまだまだ多くの意識改革が必要です。
少し愚痴っぽくなってしまいました。丸森での講演会の様子です。
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https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/N96pn6tm9v