医療ガバナンス学会 (2012年10月4日 06:00)
今回の内容はロハスメディカル7月20日号に掲載されています
医療現場危機打開・再建国会議員連盟幹事長
民主党政策調査会副会長 鈴木寛
2012年10月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
国民健康保険を維持するのに被保険者一人あたりいくらかかっているか、具体的に見てみましょう。最新版の平成22年度の数字(第9表「都道府県別経理状 況」支出合計欄)では、全国平均では一人当たり35万3176円となっています。最低額は茨城県で、31万4465円。これに対して最も高額な佐賀県では 43万8647円と、実に1・4倍、12万円以上もの開きがあるのです。関東や東北など東日本(北海道を除く)では30万円台前半が多く、関西圏では30 万円台後半、九州は軒並み40万円超と、まさに「西高東低」です。
公平であるべき税金や保険料の使われ方にこれだけ違いがあるのは見過ごせません。ただ、解決法を制度改革に求めるのは性急です。冷静に振り返っても、我が 国の国民皆保険制度や先進医療制度は、諸外国と比べても高く評価できる内容を備えています。むしろ、「全国で制度は一律なのに出てきた結果に大きな差があ る」のなら、運用に問題があると見るべきでしょう。
特に我が国では、何か問題が生じた際、それが稀なケースであってもすぐ「制度を直せ」という話になりがちです。しかし制度を直すことで、稀でない、救済さ れるべき人が救われなくなったり、厳重に処理するための事務・運用コストがかさんだ上、利用者の手続きがさらに煩雑になることも珍しくありません。現場で 解決すべき事柄まで制度改正に持ち込んだために、かえって自由度や最適化が損なわれてしまう。そうしておいて政府が大きくなると、今度は規制緩和を求め、 しばらくすると問題が起こる……その繰り返しというわけです。
制度を維持しつつ運用の改善をいかに成し遂げるか。その際、一番の課題はモラルハザードでしょう。レセプト公開なども行われましたが、保険者、患者たる国 民、医療者側がそれぞれの相互チェック機能を持ち、意識を高めていくことが大切です。そのための制度改善は行っていくべき、と考えています。