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Vol.636 現場からの医療改革推進協議会第七回シンポジウム 抄録から(8)

医療ガバナンス学会 (2012年11月1日 18:00)


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ポリオワクチン

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2012年11月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


セッション8:11月11日(日)12:30~14:00
細部 千晴
谷本 哲也
吉川 恵子

会場:東京大学医科学研究所 大講堂
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ポリオワクチン
細部 千晴

平成元年結婚と同時に東京へ来てすぐ子どもと医局に恵まれ、医者になって26年、小児科開業医として12年のキャリアを得ることができた。親子に寄り添え る医療・支援がしたいと考え開業し、その後隣接した子育て支援施設を2008年に造った。健全な両親のもとに育てられた子どもは健康に育つと言われている ことから親子のセルフエスティーム(自尊感情)を向上させるための子育て施設だ。開業してしばらくするとワクチンで防げる病気から子どもを守るという海外 では普通に行われていることが日本ではされていない現実を知った。そんな時、患者会「細菌性髄膜炎から子どもを守る会」事務局の吉川恵子さんとお会いし、 意気投合して2010年ワクチンデモを行った。この活動は今年7月5日3回目となり、またママチャリレースによる麻疹撲滅運動も9月30日に3回目を一緒 に行ってきた。ワクチンデモに関してはなぜ国民はこのようなデモをするのかと海外のメディアは驚きだったようだ。日本小児科学会も日本小児科医会も予防接 種推進専門協議会もワクチン問題に関しては提言し、請願までだしているにも関わらず国は動かないのである。専門集団が言っているのにだ。現場ではかかりつ け医でワクチンが接種できない(助成が使えない)、東京都では無料で受けられる都民は出生数でわずか13%だ。このような地域格差・経済格差、6か月健診 にきてワクチン未接種という情報格差、同時接種しませんという医療施設格差問題など、これらの問題は子どもの命に係わる問題だ。年度末に助成は打ち切りに なるかもなどと行き当たりばったりの政策に医療現場は毎年振り回されている。これでは子どもたちの健康は守れない。2010年、日本医師会が「予防接種法 を改正し地域間や経済格差なく希望するすべての子どもが公費(定期接種)でワクチン接種が受けられる制度を実現することを目的とする」と大々的にキャン ペーンをしたが、その後2年間何も変わっていない。下町の小児科開業医であるが現場の状況をお伝えできればと思う。

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不活化ポリオワクチンは如何にして導入されたか
谷本 哲也

1981年は、経口生ポリオワクチン(OPV)導入の華々しい成果により、野生株由来ポリオの国内発症者が出た最後の年だった。OPVではワクチン由来の ポリオ発症が問題となるため、不活化ポリオワクチン(IPV)導入の必要性が早くから指摘されており、先進国を中心にOPVからIPVへの切り替えが20 世紀末から続々と進められていた。しかし、今年9月になって日本でもようやく待望の新薬として登場したIPVは、最初にフランスで1982年に承認されて 以来、韓国・中国・台湾といった近隣諸国を含む世界86カ国以上で既に使われている製品だった。世界では数億回の接種実績があり、日本でも個人輸入の形で 長年使わ日常的に使用していた。承認された製品の値段は、個人輸入時の数倍に跳ね上がった。ポリオワクチンには、反復される医薬品ラグの問題が凝縮されて いたように思う。
たとえ世界の潮流から遅れているように見えるとしても、日本には尊重すべき固有の歴史、文化、社会構造があり、それは医薬品業界も同様だ。海外で使ってい るからといって、無条件に日本の医療に取り入れるのは安直に過ぎるだろう。医薬品ラグがあることで、未然に防げた薬害もある。さらに言えば、現在の医薬品 業界の仕組みにより、製薬企業の社員はもちろんのこと、医薬品行政関係者から治験担当の医療従事者まで、多くの雇用が生みだされており、「公共事業」とし て成立しているという見方もできる。
仮に科学的妥当性が不明であったとしても参入障壁を設け、「欲しがりません、日本人での有効性・安全性を確認するまでは」、というのも業界人にとっては当 然の理屈なのかもしれない。一方で、この公共事業が、ムラの外にいる一般国民との間に多くの軋轢を生み出してきたのも、また、無視出来ない事実だろう。揺 れ動く日本社会の中で、産官学の医薬品業界の在り方そのものもまた、費用と便益を冷徹に分析し、見直す時期に来ているのではないだろうか。

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希望する子どもたちに世界標準のワクチンを届けたい~わが国の現状と課題~
吉川 恵子

2013年度施行を見据えた予防接種法改正案が国会に提出される予定です。
今回の見直しは、「ワクチン後進国」と揶揄される20年のワクチンギャップの解消を目的とし、安全性、有効性や費用対効果を評価し、医学的・科学的観点から新たに7ワクチン(ヒトパピローマウイルス、ヒブ、小児用肺炎球菌、水痘、おたふくか
ぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎)を広く接種を促進していくために定期接種に位置付けるとしています。この疾病、ワクチンの追加は国民や医療従事者の長年の 願いであり、私たちは高く評価するものであります。併せて、乳幼児の感染性胃腸炎を予防するロタウイルスワクチンを定期接種とし追加することを望みます。
また、その接種費用の負担のあり方として「予防接種法の定期接種は市町村支弁により実施されている自治事務であり、(中略)ほとんどの市町村においては実 費徴収を行わず、公費で負担している」とし、接種費用のあり方について国は「市町村等関係者と十分に調整し、検討するべき」としておりますが、被接種者に 費用負担をさせることができるとする現在の予防接種法の規定を残したままでは、地方自治体の財政状況が厳しい中、各自治体の財政事情により住んでいる地域 で子どもたちの命に格差が生じてしまう可能性があります。
今こそ、ワクチンギャップを解消するために、住んでいる地域で格差なく、世界標準の8つのワクチンを希望するすべての子える重要なときです。私たちは国に 対し、予防接種費用の財源確保や予防接種施策を評価・検討する仕組みの導入など、国防の一環として役割を発揮し、子どもたちの命を最優先とすることを強く 求めています。
そこで、こうした点を国に対しアピールする行動としてこの間、ワクチンデモや署名を呼びかけ取り組んできました。希望するすべての子どもたちに世界標準の ワクチンが受けられる社会の実現をめざして、シンポジウムに参加されている皆さまと共に考え合い、今後の行動につなげていけたら幸いと存じます。

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