医療ガバナンス学会 (2012年12月12日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年12月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
前回の南相馬市での内部被曝検診の結果( http://www.city.minamisoma.lg.jp/shinsai2/kensa/hibakukenshinkeka3.jsp )の続きです。
継続的に食品や水の摂取状況の聞き取りを行っています。米、肉、魚、野菜、果物、キノコ、牛乳について、8割ぐらいの方がスーパーで購入し、その際には産地を選び、2割ぐらいの方がスーパーで購入しているけれども産地を選んでいない、という状況でした。
年齢が低くなればなるほど、スーパーで購入しても、産地を選んでいる傾向がうかがえます。米と野菜は地元のものを使用されている割合が、他の食材に比べて高く、1~2割でした。
水に関しては、飲用水としてミネラルウオーターを使用されている方が全体の半分、半分は市水道という結果でした(図8、9です)。
どちらを選択すべきか?という問いをされることがありますが、これらの結果から一定のことが言えます。
今現在、内部被曝の検査において、子供の99.9%、大人の97%程度が検出限界以下という状況です。食品に関してスーパーで産地を選ぶ、選ばない、どちらの購入行動をとったとしても、ほぼ全員が検出限界以下になるということです。
水に関しても同様です。水道とミネラルウオーターのどちらを使用していても、ホールボディーカウンター(WBC)の検出限界以下のレベルに下がってくると いえます。言い換えれば、どちらを選択していても、WBCで検出できるようなレベルの汚染にはならない。ということです。
地元の食べ物に関しても、科学的に証明できるレベルには到達していませんが、一定の傾向が見えてきています。
それは、地元の食べ物を食べたとして、リスクが20+20+20+20+20=100(数種類の食べ物が均等に汚染されており、それぞれの食べ物に均等に リスクが存在する)となっているのではありません。どうやら、0+1+2+2+95=100(多くの地元の食べ物にリスクがほぼ無く、その一方でいくつか の特定の食べ物にリスクが集約している)という構造になっているということです。
前回もご紹介した通り、内部汚染は二極化してきています。一部の方が非常に高い値を出す一方で、ほとんどの方が検出しなくなっている訳です。
その高い値を出す方はほぼ全員、高汚染度の食材、つまり出荷制限がかかるかどうか100Bq/kg前後というレベルではなく、その数倍から数十倍クラスの汚染度の食材を継続的に食べている方です。そこにリスクのかなりが集約しています。
言い換えれば、地元の食材を食べるとしても、明らかに出荷制限がかかっていて、高いことが分かっているような食べ物(例えば、キノコ、イノシシの肉、柑橘類、柿、ため池などに住んでいる魚など)を避けるだけで、大部分のリスク回避が可能ということです。
現実的にかなりの方が危機意識というか、気をつける意識が落ちているのを感じます。近くの地域で出荷制限がかかっている食べ物を未検査で継続的に食べることだけはやめて欲しいと思っています。
もちろん、上記で例を挙げた食べ物であっても、検査をして低いことが確認されたものはもちろんリスクは低いと思います。私自身は流通している食べ物に関し ては特に気にしていません。地元のものは絶対に避ける。水源の位置を考えるとミネラルウオーターを購入する、という方が多いのも事実です。しっかりと継続 的な検査体制を維持して欲しいと思っています。
写真:南相馬ひばりFM ( http://minamisomasaigaifm.hostei.com/ )の収録中。今野さんと
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2012120700012.html