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Vol.688 解決志向の被災地心理支援(1)

医療ガバナンス学会 (2012年12月27日 06:00)


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~心理的初動支援の問題点と星槎グループや相馬フォロアーチームの意義~

相馬フォロアーチーム
吉田 克彦
2012年12月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


1. はじめに
私は昨年6月から星槎グループ・世界子ども財団のスタッフとして福島県相馬市に入り、相馬フォロアーチーム(以下、SFT)の一員として津波被災学校での 心理支援を行なっています。その活動の一端は2012年1月24日のMRIC「Vol.379 解決志向の被災地支援 ( http://medg.jp/mt/2012/01/vol379.html )」で紹介しました。今年度からは星槎グループとして南相馬市内で津波被災や以前原発の警戒区域の対象となっており、現在仮設校舎で過ごしている小学校で もスクールカウンセラーとして活動しています。
震災からは一年九ヶ月、私が相双地区の支援に入って早くも一年半が経ちます。 石の上にも三年には遠く及ばず、やっと折り返し地点に来たところですが、いわば中間報告としてこれまでの活動を振り返り、現在の相双地区の心理支援の現状 などについて、これから継続的にレポートしたいと思います。まず今回は、震災からSFTで活動に至るまでの個人的な体験を元に震災当初の動きと問題点を報 告します。

2. 震災当日
私の故郷は福島県のいわき市です。大学進学で上京し、社会人になってそのまま神奈川で公立高校のスクールカウンセラーを十数年やってきました。3.11の 揺れも当時の勤務先である神奈川県内の公立学校の相談室で体験しました。15時からの保護者面接前にケースレポートの確認などをしていたときでした。船上 にいるような大きな横揺れがしばらく続き、その後、窓にひびが入りそうなほどの激しい縦揺れがきました。横揺れが長かったことから、震源がだいぶ遠いこと がわかり、震源から遠いにもかかわらずこれだけ大きく揺れるのだから震源近くは「ただごとじゃない状況」だろうと確信しました。生徒と一緒に校庭に避難し ている時に携帯電話のワンセグテレビから映し出された津波の映像は衝撃的でした。仙台空港が海に沈み、私が子どものころよく釣りに出かけていた小名浜港で は道路に船が乗り上げ、車が波に浮いていたのです。この時に、「よし、カウンセラーとして短期間ではなく長期間の支援に行くぞ」と決意しました。

3. 長期的な支援の重要性
長期的な支援にこだわったのは、短期間の心理支援は意味がないだろうと考えていたからです。理由は二つあります。
一つは震災の規模の問題。今回の大震災では、直後に不安定になることは人間として当たり前の反応でしょう。泣かず騒がずぐっすり眠れという方が無理です。 神奈川に住む私でさえ余震に悩まされていたのですから、家を流され家族の安否も不明な状態で冷静にいることは出来ないでしょう。そのような中で、心理士が 行くことで住民の皆さんが当たり前の反応が出来なくなってしまうことを恐れました。つまり「震災直後の正常な反応(悲嘆や自責など)」を「心理士に支援さ れるべき異常な反応」にすり替わってしまう危険がありました。
もう一つの理由は、心理士側の事情です。多くの場合が3日間(週の前半と後半を一人ずつ)あるいは5日間(月~金)という形で派遣されます。最短で1日と いうことも珍しくありません。私がもしそれら形態で心理士として派遣されたらどのような動きをするか想像してみました。わざわざ被災地支援に出向くのです から、おそらく「手ぶらでは帰ることが出来ない」と思うでしょう。何かをしなければいけないと思い、積極的に声をかけるでしょう「大丈夫ですか?」と。特 に、津波で親を亡くした子どもに接触し3.11に津波で流された時の様子を聞き、一緒に涙するかもしれません。そうして、仕事をした気になり職場に戻り、 被災地の現状を分かったふりをするでしょう。一方で「自分が避難所で支援される側だったら」と想像してみました。「手ぶらでは帰ることが出来ない」心理士 が、入れ替わり立ち代わりやって来て、似た質問を繰り返し聞かれ同じような助言や対応をされることを繰り返す。…たまったものではない。そっとしておいて 欲しいと思うはずです。短期的な心理支援が被災者を更に苦しめることは充分に予想できました。
震災後しばらくして、「心のケアお断り」という張り紙が避難所の入り口に張られているという記事が新聞などで目立つようになりました。「やっぱりな」と思いました。

4. 星槎グループそして相馬フォロアーチーム(SFT)へ
長期的な支援を志していましたが、個人的に行なうのは難しい。一方で、カウンセラーの募集は新年度になり週1回勤務の求人は出てきましたが、相変わらず短 期間派遣するカウンセラーの募集が中心でした。需要と供給のミスマッチにもどかしさを感じているときに、星槎グループからSETへ出向するスタッフの募集 が目に留まりました。最低2年間常駐して心理支援を行うという。「これだ!」と思い、すぐに申し込みました。
更に詳しく聞くとSFTとは、相馬市の立谷市長と星槎グループの宮澤会長が計画をした組織で、相馬市と星槎グループ以外にも難民を助ける会や東京都健康長寿医療センターからスタッフが出向する形で構成されました。
活動内容は、津波に被災した四校(小学校・中学校各2校)にスクールカウンセラーを派遣する。そして、訪問する四校には他の心理支援団体を受け入れないと いう。まさに、私が感じていた被災地心理支援での問題点(短期間で入れ替わり立ち代わり)を解消する理想的な支援チームだと思いました。
SFTのように常駐型の支援は他に見かけません。また、星槎グループ独自でも南相馬や新地への継続的なカウンセラーの派遣を行なっています。一民間組織が これだけ頻繁に継続的な支援を行なっているのは、例がないでしょう。中長期的な支援というのは資金や人材の確保などいろいろな問題を多く抱えますが、今後 起こる新たな大災害・大震災ではより重要性が増すはずです。星槎グループそしてSFTの活動で得られたノウハウを今後に伝えていく必要があります。
そんな訳で、私の目を通して星槎グループそしてSFTの活動を何回かにわけてレポートしていきたいと思います。次回は、被災地で実際に心理支援を始める際に心がけていたことについて紹介します。

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