医療ガバナンス学会 (2013年1月19日 06:00)
今回の内容はロハスメディカル11月20日号に掲載されています
http://lohasmedical.jp/
医療現場危機打開・再建国会議員連盟幹事長
民主党政策調査会副会長 鈴木寛
2013年1月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
私も文科副大臣時代より、2009年の3省庁政務三役(厚労省・経産省・文科省)で再生医療を大きな一つの柱とした医療イノベーション会議・推進室を立ち 上げるなど、ips細胞開発を応援してきました。同氏が所長を務める京都大学ips細胞研究所を訪れ、若手研究者の頑張りに感銘を受けたのを覚えていま す。今回の受賞に際しても、京大総長からも電話でご報告を受けました。
ips細胞は、皮膚などの体細胞に4つの遺伝子を導入し、全身のどんな細胞にも変化する能力を獲得させたもの。再生医療や難病治療の新たな道を拓き、創薬プロセスを劇的に変える世紀の技術です。
ノーベル賞はこれまで、ヒトレベルで応用成果が得られてからの受賞というのが暗黙の了解でした。しかし今回は、山中教授がマウスでのiPS細胞作製を発表した2006年8月から、わずか6年でのスピード受賞となりました。いかに画期的で影響力が大きいかが伺われます。
なお、同じ性質を持つES細胞が以前からありましたが、受精卵を壊して作るため臨床応用には倫理的に問題がありました。ips細胞がそこを一気に解決したわけです。
ただ、新たな生命倫理問題も示されました。ips細胞から卵子も精子も作れますから、理論上、髪の毛1本からでも生命が誕生させられます。生命の根源にどこまで人が介入していいのか、悪用されないか。社会に倫理哲学的な問いが投げかけられています。
そうした課題はあるものの、25年ぶりの生理学・医学賞の受賞は、「失われた20年」の間にそのタネがあったという点で日本社会を勇気づけるものです。特 に、日本人が、日本の大学・学会が作り上げた研究環境の中で勝ち取ったことは、日本の基礎研究界に自信と活気を与えるとともに、人材育成への政策的な後押 しになることでしょう。
基礎研究は実を結ぶまでに長年を要します。昨今の近視眼的な成果主義は、大きな発見・発想の芽を摘んでしまっている恐れがあります。国民の皆様にご理解を得られるよう、これからも努めてまいります。
※山中教授の研究をぜひ直接的に応援されたい方は、http://justgiving.jp/c/7882までアクセスを。