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臨時 vol 127 「医の中の蛙10」

医療ガバナンス学会 (2009年6月1日 21:22)


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インフルエンザ騒動
                              久住英二

 新型インフルエンザの報道が、メディアを連日賑わせています。物々しい姿の
検疫官が機内検疫を行う様子には、この感染症に対する恐怖を駆り立てられまし
た。しかし、日本で行われてきた新型インフルエンザ対策は、ちょっとおかしい
のです。
 厚労省が「成功した」と言っている検疫による水際作戦は実際、効果があった
のでしょうか。そもそも世界保健機関は、そうした水際作戦の有効性を認めてい
ません。感染症には潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)があるため、
症状のある人だけを隔離しても、感染症が国内に入ってくるのは防げないからで
す。また、検疫官が着ていた防護服は、感染区域から出たら脱がなくてはならな
いのです。汚れた防護服を着たまま空港内を走り回っていたのでは、逆にウイル
スをまき散らすことになります。
 そして結局のところ、国内発生は起こり、水際では防げませんでした。今後は、
蔓延(まんえん)することを前提に対策を立てなければなりません。
 感染疑い者の取り扱いも、おかしいと言わざるをえません。
 感染を疑ったら発熱相談センターに電話します。しかしお役所は、新型インフ
ルエンザ感染を疑う対象を「新型インフルエンザ患者との濃厚接触歴を有する」、
あるいは「新型インフルエンザが蔓延している国に滞在した」人に限定していま
すので、対象外の人は、一般医療機関を受診するよう指示されてしまいます。一
般医療機関にはたくさんの弱者がいますから、そこで新型インフルエンザが蔓延
すると予想されます。
 神戸で発見された国内感染第一号患者は、海外への渡航歴も、感染者への接触
もなく、感染経路は不明でした。ですから、インフルエンザが疑われる人は、す
べて検査するのが正しいのです。検査に数千円の費用はかかるでしょうが、定額
給付金を考えたら、たいしたことありません。
 また、実は、感染予防には、マスクよりも手洗いの方が有効です。本来、マス
クは感染者が咳(せき)やくしゃみの飛沫(ひまつ)を飛ばさないように着ける
べきものです。同じマスクを何度も着けたり外したりされる方は多いと思います。
そんなことをしていたら、マスク自体にウイルスが付着して感染源になってしま
います。
 このような情報を、新聞やテレビ、ラジオ広告などでどんどんと国民に伝えて
いくべきだと思います。厚労省のホームページにはいろいろな情報が逐次掲載さ
れていますが、ほとんどの皆さんは厚労省のホームページなど見ないでしょうか
ら、情報が国民に届きません。厚労省は広報に重点を置くべきです。
 オバマ大統領は一千億円以上の予算を議会に求めたのに対し、麻生総理は特別
な予算措置をしていません。そのため、発熱外来を開設している医療機関では、
持ち出し覚悟での運営を迫られています。人件費はおろか、タミフルすら供給さ
れていません。
 大変残念ですが、この国の為政者のやり方は、先の戦時と変わっていないよう
です。
くすみ・えいじ 1973年新潟県長岡市生まれ。新潟大学医学部医学科卒業ととも
に上京、国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修後、同院血液科医員に。
2006年から東京大学医科学研究所客員研究員。2008年に「ナビタスクリニック立
川」開設。
※この記事は、新潟日報に掲載されたものをMRIC向けに修正加筆したものです。
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