医療ガバナンス学会 (2013年3月12日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2013年3月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
今週は、広島大、慈恵医大、神戸大の研修医の先生と医学生さんたちがいらしてました。先週は沖縄から、先月には北海道の看護学生さんが来ていました。来てくれた大学名を羅列すると長くなりますが、文字通り毎週、全国から多くの医療関係者が来てくださいます。
活動は、当院の在宅診療部の根本先生や原澤先生が主体となり、外来、病棟についてもらったり、仮設住宅および在宅診療を一緒に回ってもらったり、震災当時 の話を金澤院長や多くのスタッフと話したりと多様です。雲雀ヶ丘病院の掘先生(精神科)にもご協力頂き、この地域の精神科医療の現状を実習してもらったり もしてもらいます。
市立病院では、住民の方々との活動も多く行っていますが、NPOの会合、日曜大工講座、様々な健康に関する講座などにも参加してもらっています。もちろん 放射線や内部被曝関連の話もします。実際にホールボディーカウンター(WBC)で測定してもらい、その結果が持つ意味、今までの検査結果、現在の課題を議 論し、放射線の説明会や座談会があれば積極的に参加し、発言してもらっています。
多くの方々が二次情報ではない、一次情報を求めて来ています。「色々と聞いたり読んだりするけれども、何となく腑に落ちない、実際のところどうなの?」 そんな方がほとんどです。言い方が悪いかもしれませんが、医療者だからといって、現実に発表されているデータを自身で調べて吸収し、それに基づいて科学的 にのみ判断して行動できる訳ではありません。多くの医療者に現状は伝わっていないことを痛感します。
全国を回っている、被災地の色々な場所を回っているという方もいれば、(放射線の問題で)親に行くのを止められたけど、振り切ってやってきた。という方もいました。「もうxx回目です」という顔見知りもいます。
まだ片付いていない小高地区を見て、途方もない除染作業を見て、放射線に関する考え方の差や、不安、不満に触れて、様々な意見の対立をみて……、医療の問題で言えば、リソースの不足、超高齢化問題、老老介護、、、地域医療という言葉だけではとても表すことは出来ません。
(終わり自体が何を指すのか分かりませんが、)まだ何も終わっていないこと、放射線の問題ももちろんですが、それだけではない色々な思いや、考え、利害が 交錯する中、多くの方が先に進もうとしていることを感じてくれているような気がします。そして、ここに暮らしている方々の思いが、全国にいる人に伝えてく れる役割をきっと担ってくれていると思います。
外から来た私が出来ることは限られていますが、多くの方に現状を知ってもらうことが、問題を解決し先に進むために必要なことだと思っています。
写真:研修医の先生、医学生さんたちと。
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