最新記事一覧

Vol.124 郷に入っても郷に従わず その13 ~どうして夜中に食べたくなるの?

医療ガバナンス学会 (2013年5月26日 06:00)


■ 関連タグ

ハーバード大学リサーチフェロー
大西 睦子
2013年5月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「夜寝る前に食べると太る」ってよく聞きますよね?でも、わかっているけど、ポテトチップス、チョコレートやラーメンなど、塩辛いもの、甘いものや高カロリーなものをついつい食べてしまいます。

それで悩んでいるのはあなただけではありません。一般的に私たち人間は誰しも、午前中にはあまり空腹を感じません。ある調査では、欧米人の平均的な朝食 は、一日のカロリーの16〜18%と報告されています。また、朝食を食べない人も多くいます。睡眠という長い絶食の後なのに、なぜ朝は食欲がないのでしょ うか?どうしてこってりとした食べ物は、朝からは食べたいと思わないのでしょうか?一方、夕食は一日の最大の食事で、一日のカロリーの35〜36%を摂取 します。

私たちの体の中には、概日リズム(Circadian rhythmサーカディアン・リズム)という体内時計があります。その時計が、体温、血圧やホルモンなどのリズムを整えていて、その体内時計が乱れてくる と、不眠、疲労、糖尿病や、高血圧などが起こります。深夜の食欲増と朝の食欲不振にも、その原因として体内時計が関わっていることが、ハーバード大学とオ レゴンの研究者らによって雑誌『Obesity』に報告*されましたので、ご紹介させていただきます。

実験では、Forced desynchrony実験 (強制脱同調実験)と呼ばれる手法が用いられました。Forced desynchrony実験とは、被験者に24時間周期とはかけ離れた睡眠覚醒リズム(例えば20時間周期や28時間周期)で生活してもらう実験です。生 体時計は24時間から大きく離れた生活習慣には同調できないため、この実験中でも生体時計は約24時間の周期で持続します。この生活を多くは20日ほど続 け、その間にさまざまな現象を持続的に記録することで、現象が体内時計に依存しているのか、それとも睡眠覚醒リズムに依存しているのか明らかにできるもの です。(参考:『実験医学』羊土社)

今回の研究の被験者は、太っていない健康な成人12人(男性6人、女性6人、年齢20〜42歳)で、13日間非常に薄明かりの実験室に滞在し、20時間サ イクルで食欲や食べ物の好みを評価しました。食欲や概日周期に影響する行動や環境要因(例えば食事、睡眠、活動、姿勢、室内温度、光)はすべてコントロー ルされています。

その結果、体内時計は空腹感を制御していることが判明しました。具体的には、午前8時には空腹を感じず、午後8時が最も空腹感が強まりました。さらに、 甘いもの、果物、でんぷん質、肉類や塩辛い食品を食べたくなる欲求も同じリズムでした。ところが、野菜においては、同じような食欲のリズムは認められませ んでした。概日リズムは、特に高エネルギー食品の欲求を調節しているのです。

おそらく、私たちの祖先は、長期間の食糧不足を経験し、夜中に食べてエネルギーを保存する体のシステムを作ったのでしょう。ところが、あふれる食と運動不 足が問題の今日では、夜にたくさん食べる人、特に高カロリー食品や飲料の摂取は、太りすぎまたは肥満を導きます。また現代社会では、夜の活動時間が長くな り、体内時計に乱れが生じています。昼夜が逆転した職場で働く人や睡眠障害の人に典型的に見られる不規則な食生活が、体脂肪に生来備わっている時間を感知 するシステムを混乱させ、結果、脂肪が蓄積しやすくなり、肥満につながることが報告されています。

それでは、この深夜の食欲をどうすれば減らすことができるのでしょうか?まずは、ご自分の体内時計のリズムをリセットして下さい。いくつかの秘訣をお伝えします。

1) 朝:起きたら、まず日光を浴びてください。体内時計がリセットされます。光の情報を目から受け取り、「メラトニン」という睡眠を促すホルモンが、朝日を浴 びてから約14~16時間後に分泌されます。そのために、朝7時に起きると夜の9~11頃に眠くなってくるのです。睡眠は健康維持に大切です。また、朝 20分くらいの運動をしてみてください。規則的な朝の運動が脂肪を燃焼させることが報告されています。
2) 睡眠:一日6〜8時間が最適です。睡眠不足は、食欲刺激ホルモンの増加、食欲抑制ホルモンの低下などを促し、肥満の原因となります。
3) 食事:起床後1時間以内に、朝食はしっかり食べて、夕食はできれば夜8時までに終わらせてください。8時以降に夕食や間食をすると、太りやすいことが報告 されています。朝食と昼食は、炭水化物に偏りがちですが、タンパク質をしっかり摂取して下さい。タンパク質は、私たちの体の構成成分になり、エネルギー源 としての重要な役割を果たしています。また、夕食に食物繊維を摂取すると、満腹感を得て深夜の空腹感が減ります。
4) 深夜のおやつ:どうしても食べたくなったら、新鮮な野菜や果物を使った食物繊維の多い食品にして下さい。
5) 油の選択: オメガ3系不飽和脂肪酸を多く含む魚などから、ヘルシーなオイルを摂取しましょう。
6) コーヒー:午後の4時くらいまでにして下さい。そうすると、朝1杯のコーヒーで劇的に目覚めます。
7) 習慣:夜中にテレビを見ながらスナックを食べる習慣をやめましょう。明日の準備をし、光を避けて、早めに眠りにつきましょう。疲労の回復、老化防止などに効果がある成長ホルモンがよく分泌されるのは、夜10時~深夜2時であることが知られています。

*Scheer FA, Morris CJ, Shea SA, The internal circadian clock increases hunger and appetite in the evening independent of food intake and other behaviors. Obesity (Silver Spring). 2013;21(3):421-3.

●以下、是非あわせてお読みください
睡眠のリテラシー3

http://robust-health.jp/article/preventive01/sleep/000012.php

体内時計の混乱が肥満を招く

http://robust-health.jp/article/preventive01/food/000211.php

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらにメールをお願いします。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ