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Vol.247 現場からの医療改革推進協議会第八回シンポジウム 抄録から(1)

医療ガバナンス学会 (2013年10月15日 18:00)


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セッション1: 医療費問題 

11月9日(土)113:45~14:45 (13:30 開会のご挨拶)

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。

2013年10月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


◆医療費問題◆
久住英二
児玉有子
梅村聡

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●ご挨拶
林 良造

今年もはや11月になり「現場からの医療改革推進協議会」の季節がやってきました。この7年間を振り返ってみると、よくここまで来たという感慨と、まだま だやるべきことが山積みであり、世界はさらに速い速度で変化しているという焦燥感が相半ばします。また、この1年では、再度政権交代が行われました。これ 自身は3年半の民主党政権の実績をみると当然という気もしますが、他方最も実績を上げ、熟議の国会を主導し、この協議会でも大きな役割を果たしてこられた 鈴木寛さんが政権交代の波に飲み込まれるような形で議席を失われたことは民主主義の熟度という点からも大変ショックでした。鈴木さんには、今まで培われた 知見を生かし、様々な改革を実現するために引き続き力を発揮されることを期待しています。

医療分野におけるこの1年の大きな話題としては、安倍政権の成長戦略があげられます。そして、その具体的政策をみると、自民党政権、民主党政権の期間を通 じて、この協議会で議論されてきた成果も多く含まれています。この協議会は、発足時より、改革すべき諸点について、観念論ではなく、現在現場で起こってい る材料を提供する形で提起し、その解決に向かっての知恵を組み立てる場を提供してきました。そして、様々な参加者からの多角的な議論を経ることにより、解 決への道筋が整理され、また、多くの問題は、世界各国が共通して抱える課題であることも明らかにしてきました。

医療の分野は、中央で改革の絵を描けばそれで進んでいくようなものではありません。また、常に新たな発展があり問題が提起されます。改革の動きを実のある ものにし、絶えざる動きとしていくためには、現場に根ざした、きめ細かいフォローアップやデータに基づく丁寧な検証とオープンなコミュニケーションが欠か せません。

冒頭申し上げたように、この協議会は様々な問題提起をし、その解決のきっかけを作ってきました。他方、まだ成果に結び付いていないことも数多くあります。今年の協議会もそれらの道筋を検証しつつ次のステップを考えるうえで実り多いものになることを期待しています。

●公的保険はどこまで医療費をカバーすべきか?
久住 英二

医療費が増大し続けている。その原因は、高齢化にともなう医療ユーザー数の増加と、高額な薬剤の登場による、治療単価の増大である。

人間誰しも、病気にかかり、その治療法が存在する場合、いくら高額であっても受けたい、受けさせたい、と思うのが心情というものだ。それは、治療を行う医師も同じだ。しかし、医師は科学に基づいた判断をしなければならない。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)という、まれな血液疾患がある。純粋なPNHもあるが、骨髄異形成症候群や白血病にも合併することがある。この疾患は、赤血球が壊れて貧血になったり、血管内で血が固まる血栓症、腎機能障害を起こす。
これまでは、根治を目指すなら骨髄移植しかなく、多くは輸血と、血栓症予防のための抗凝固治療をうけていた。

2010年、ソリリスという特効薬が保険適用となったが、治癒はせず、長期にわたって治療を続けた場合の利益についても不明だ。溶血を阻止することで貧血を改善する効用のみが確認されている。

PNHは45歳で発症し、30年以上生存する病気で、よくコントロールされれば、健康人と同等に生存するとされる。この治療薬は、年間の薬剤費が4000万円以上かかる。よって、PNH患者がソリリス治療を続けると、平均で一人あたり12億円かかることになる。

ソリリスは一つの例だが、はたして、公的保険がここまで高額の医療費を支払うことは、得られる利益に見合うのだろうか?

公的保険がカバーするのは輸血と抗凝固治療で十分ではないのか? ソリリスが必要不可欠なのだろうか?

人命は尊い。しかし、医療費や医療資源は有限だ。思考停止していたら、医療保険制度の崩壊を止めることはできない。

●高額療養費制度の問題
児玉 有子

このシンポジウムで高額療養費を中心とした医療費の問題を扱うようになって、5年目です。この間、高額療養費制度は少しずつ改善されてきています。これまでの皆様のご協力に深く感謝申し上げます。

2012年4月からは、外来においても限度額の支払いのみで済むような仕組み(現物給付)への変更がありました。この変更は一度にたくさんのお金を準備す る負担を大いに軽減することになりました。外来において認められたことは、治療法の進歩により外来治療で飲み薬での治療が可能になった患者や外来での点滴 による化学療法を続ける患者にとっては福音となりました。

そして、この夏には社会保障制度改革国民会議の報告書にも高額療養費制度に関する問題は盛り込まれ「負担能力に応じた負担」への改善を進めることが記されます。
政権が変わっても変わらず対応を検討いただいていることには大変感謝しております。

国民会議の報告書をうけての議論が社保審医療保険部会でも始まりました。2013年10月7日に開かれた部会では、経済力に応じた負担ということで、新し い案が示され、議論が始まりました。今回示された案は、低所得者層にとっては最初の3回だけ負担が軽減されます。しかし、支払いへの負担がもっとも強い、 「長期に支払う方々」にとっては全く負担が減らない案ばかりでした。今後、深い議論に進展せず、このまま今年度は予算請求に進むのではないか、という意見 も聞いています。果たしてシンポジウムの頃にはどのような展開になっているのでしょうか。

医学が進歩し治療を続けることで生きることができるようになりました。いい治療法、いい薬の誕生は誰もが望むことです。しかし命が助かった一方で、高額な 支払いが生涯続く状態が生まれました。近代医療にふさわしい保険制度、高額療養費制度になるよう、今年もこのシンポジウムで皆様と一緒に議論をさせていた だけましたら幸いです。

●国政選挙と医療政策
梅村 聡

2013年7月、私は参議院議員として2期目の再選を目指して選挙戦を戦った。33万7378票をいただいたが結果は残念ながら落選となった。選挙戦を通 じて、私は社会保障政策をめぐる自分自身の1期目の実績を訴えるとともに、「大阪の救急医療体制」「待機高齢者問題」「病児保育・病後児保育」「中小企業 の社会保険料軽減」等をテーマとして取り上げたが、「アベノミクスの是非」「憲法改正」等々の争点を前にその主張はかすんでしまった。私としてはたいへん 不本意な選挙戦であったが、同時にどうすれば医療政策が国政選挙のテーマに取り上げられるのか、そのことを反省・検証しなければならないと考えている。

選挙戦がスタートすると、候補者が自らの政策を主張できる媒体は主に(1)政見放送(5分30秒)(2)街頭演説(3)証紙が貼られたビラ(約30万枚) (4)ネット(ホームページ、FB、ツイッター、動画等)(5)受け取り側が承諾した場合に限定されたメール 等に限定される。そして私の演説動画を YouTubeにアップしてみたが、大阪府内の有権者数が700万人以上いるのに対して、選挙期間中の再生回数は1000回に満たなかった。私自身は再度 の国政復帰を目指そうと考えている。どうすれば「国政選挙と医療政策」を結び付けることができるのか、参加される皆さんと一緒に考えてみたい。

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