医療ガバナンス学会 (2013年10月16日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2013年10月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
放射線と放射能の語彙の違いについて、レントゲンやホールボディーカウンター(WBC)検査が外部被曝と内部被曝のどちらに属するものなのか、などについて授業前に、「テスト+アンケート」を行いました。
基本的な内容がまだまだ伝わっていないこと、それに加えて、自分の健康に対し、投げやりになっていたり、毎日元気に生活しているように見えても、心の中で は将来への強い不安を感じたりしている生徒が(多くではないのかもしれないのですが)いる、ということが浮き彫りになりました。
授業後にも全く同様の「テスト+アンケート」を行っていただきました。
○×形式で
(問) 一度体内に取り込まれた放射性物質は、二度と体外に出ていくことは無い。(答えは×)
(問) 大量の放射線を一度に浴びると、突然大きな癌の塊ができてしまう。(答えは同じく×)
こうした質問には、授業前では5割前後の正答率であったのが、9割以上が正解を選んでくれるようになりました。
それに対して、
(問) 身近にある放射線(例:がん治療、検査など医療現場で使用される放射線)は体に全く影響が無い。(これも答えは×です。)
この質問については、授業の前後で5割の正答率に変化がありませんでした。私がしっかり話をできていなかったためです。次回は気をつけようと思います。
上記のように、授業中に話ができた内容とそうで無かった内容で、差があるものの、全体としては授業後の知識に関する正答率は上がりました。
レントゲンや、食品検査、WBC検査が外部被ばくと内部被ばくのどちらに分類されるかも、正答率は80~90%程度まで上昇しました。交通安全教育などと 同様に考えるのであれば、正答率は90%以上を目指したいところなのですが、少なくともやればやった分、必要な基礎知識を増やすことはできると感じます。
後は誰が、どのような機会に、どうやって継続的に行っていけるか、が課題なのだろうと思います。一番難しい問題なのかもしれませんが。
私として一番良かったと思うことは、質問に対して「わからない」と答える生徒が減ったことです。「水道水は避けるか?」「スーパーで産地を選ぶか?」「外 部被曝を防ぐために外で遊ぶ時間を気にする必要はあるか?」など、現状の様々な情報を得た後でも、実際の行動や意見の分かれる部分があります。
水道水の安全性がどのように担保されているか、スーパーの産地を選ぶことで特に現状の被曝量に大きな差が生まれないことなど理解してくれた生徒も多かったのですが、それよりも自分の考えをしっかり持つようになってくれることが大事なのではないかと感じています。
自分の考えとその根拠を持つことで、他人にそれを説明し、意見の違った場合でも、ただそれに毎回右往左往すること無く、何が違うのか議論し、お互いを認め合うことにつながるのではないかと思っています。このような機会を与えてくださった、相馬高校の先生方に感謝です。
授業中にいくつも質問してもらうのが一番良いです。
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013101500005.html