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Vol.251 現場からの医療改革推進協議会第八回シンポジウム 抄録から(3)

医療ガバナンス学会 (2013年10月17日 18:00)


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セッション3:中国における公衆衛生の諸問題
11月9日(土)15:45~16:25

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。

2013年10月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


◆中国における公衆衛生の諸問題◆
司会:谷本哲也
姜慶五
王偉炳

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●四川大地震での医療支援と緊急時公衆衛生対策
姜 慶五

2008年5月12日(月)中国標準時午後2時28分、マグニチュード8の壊滅的な四川大地震が発生した。震源地にちなみ、汶川(ぶんせん)大地震とも呼 ばれる。6月2日までに、死亡者6万9千名、負傷者37万3千名、行方不明者1万8千名、病院収容の負傷者は8万4千名、倒壊した建物は210万棟以上、避難者は1500万人、累積で4561万人が被害を受けた。

四川省は中国で最多の人口を有する。この地震は多くの犠牲者を出したのみならず、医療機関や周辺環境のインフラに甚大な被害を及ぼした。5月27日までに 厚生省の指揮のもと、国内中から4930名の疫学の専門家が派遣され、救急医療や感染症アウトブレイクに備え、地域の公衆衛生のモニター作業に従事し、緊 急モニタリングシステムとして以下の対策が取られた。
1) 飲用水供給と衛生の保全:一日一人あたり15-20Lの確保。飲み水の煮沸・消毒処理の徹底。
2) 食料の供給増と、食品の安全と衛生の確保:生や調理が不十分な食品は避けるよう勧告。
3) 避難者の居住区における日常的な衛生管理を実施:居住区での過剰な密集や極端な過密住居を避け、貯水槽から離れた場所に公衆トイレやゴミ置き場などを整備。
4) 疾患を媒介する昆虫等のモニター強化:齧歯類、蚊や蠅などの疾患を媒介するベクターのモニター。居住区では消毒スプレーの散布、屋外では蚊帳や防虫剤を使用。
5) 健康教育の強化:疾病予防のための健康教育を避難者や救助者に対し実施。調理前やトイレ後の手洗いなどを励行。動物の死骸・生肉や酪農製品を避け、屎尿管理の徹底、タオルや手水鉢の非共有を勧告。
6) 疾病のサーベイランスやアウトブレイク発生時の対応の強化:国と省レベルで疾患の診断検査を同レベルで実施。
7) 必須となる公衆衛生サービスの回復:初期対応後、国のワクチンプログラムや母子保健、結核やエイズ予防コントロール対策を速やかに回復。

●中国における2013年の鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに対するヒト感染対策
王 偉炳

疫学: 4月1日、WHO(世界保健機関)は鳥インフルエンザA(H7N9)が中国でヒトへの感染が認められたと発表した。この新種ウイルス感染は、重篤 な呼吸器疾病を起こし、死亡例も一部あった。感染した家禽もしくは汚染環境との接触が感染源として示されている。130例以上のヒト感染が中国で発生し、 40例が死亡している。

鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの特徴: H7HA、N9NAとH9N2インフルエンザAウイルスの六つの内部遺伝子の再集合体からなり、ノイラ ミニダーゼ阻害剤への感受性が示されている。探索的な解析では、ほとんどの人は抗体を有さず、効果的なワクチンの製造には、H7ワクチンウイルスの新たな 候補を選ぶことが必要となる。

ウイルスの発生源: 重要な感染リスク因子として生きた家禽への接触が示唆されている。パンデミックとなる可能性が増しており、家禽での高病原性ウイルスの発生も懸念されるため、家禽での感染コントロールが重要である。

対応のための戦略と対策: H7N9ウイルス緊急対策を指揮、調整するために国家と地方レベルで、多部門共同予防コントロール機構(JPCM)が国家およ び地方レベルで設立されている。国家JPCMは、国家健康家族計画委員会が指導し、13の政府の省庁や委員会から構成される。地域間JPCMは、疾患が発 生した省や自治体の間での、情報共有や対応の協調支援のために設立された。早期発見、早期報告、早期診断と早期治療(4つの「早期」)は重要な原則であ る。中国全土の400以上の検査機関にPCR検査キットが配布されている。国家ガイドラインが発布されており、これらには接触歴の追跡、臨床検査、患者の 隔離と治療も含まれている。優先順位が高い対策として、感染源も含む実地調査、ヒトと動物サーベイランスの強化、臨床的マネージメント、感染予防とコント ロール、リスクコミュニケーションと科学研究を挙げている。

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