医療ガバナンス学会 (2009年6月30日 09:27)
世界中を震撼とさせた新型インフルエンザの毒性は、季節型と同じくらいとい
うことが報じられ、すこし胸をなでおろしたところですが、広がりはおさまる気
配もありません。
今回の特徴は、感染したのは高校生や若者がほとんどですが、メキシコなどで
死に至った例をよく調べると、糖尿病などもともと健康に問題があったひとばか
りのようです。つまり、このまま続くとつぎには抵抗力の弱いお年寄りに広がる
ことが充分予想されます。
今からちゃんとした予防策を立てて高齢者を守る必要があります。
さて、インフルエンザ予防で、大切なことをご存じですか。
ある介護福祉施設で、歯科衛生士が高齢者に対し、ブラッシング指導や舌みが
きを行い、歯やお口の汚れを取り除くといった口腔ケアを週に一回実施しました。
その結果、普通に歯磨きだけをしていた方と比べてインフルエンザ発症率が10
分の1に激減しました。これは2月4日のNHKの「ためしてガッテン」でも放送さ
れ大きな反響を呼びました。
なぜ口腔ケアを実施したらインフルエンザ発症が抑えられたのでしょうか。
インフルエンザウィルスが体の中に入って増殖し病気を引き起こすためには先
ず、気道の粘膜を通過しなければならないのですが、粘膜にはタンパク質の覆い
のようなものがあり、ウィルスが簡単にくっ付かないようにできています。とこ
ろが、ある酵素がそのタンパク質を破壊してしまい、ウイルスが入りやすい状態
をつくると、そこで大増殖するわけです。この酵素(プロテアーゼという)は、
歯垢、歯石、舌苔(ぜったい)などから発生することがわかっています。そこで口
腔ケアにより口の中の細菌を減らしたところ、プロテアーゼ量の減少が確認され
ました。そしてインフルエンザの発症が抑えられたのです。
正しい歯磨きで、歯と歯茎の間の歯石、歯垢はきちんと除去。舌は、専用の舌
ブラシか古くなった歯ブラシで磨くことがインフルエンザの予防につながるので
す。
つまり、インフルエンザ予防は、とくにご高齢の方にとっては「手洗い、うが
い」「マスク」とともに「口腔ケア」も重要だということです。
奈良県歯科医師会では、寝たきりの方を介護されている方や、施設で介護され
ている方に対して、わかりやすい口腔ケアの手技をDVDで作成し、無料でご提
供しております。
くわしくは、奈良県歯科医師会事務局(0742-33-0861)に電話いただければご
案内いたします。