世界保健機関(WHO)が新型の豚インフルエンザの警戒レベルを最高の「フェー
ズ6」に引き上げ、バージョンシックスであることを宣言した。また、今年2月
4日のNHKの「ためしてガッテン」である介護福祉施設で歯科衛生士が高齢者に
対して口腔ケアを週に1回定期的に実施したところ口腔ケアのグループが口腔ケ
アをしないグループよりインフルエンザの発症率が10分の1であったと放送さ
れ、大きな反響を呼んだ。
一方、宮崎県歯科医師会に地元TV局から「口腔ケアとインフルエンザ」特集番
組への出演依頼があり、了承したにもかかわらず、突然中止になったというその
背景には日本耳鼻咽喉科学会からのクレームがあったという。
そこで、「口腔ケアとインフルエンザの予防効果のEBMについて」口腔バイオ
フィルムの専門家の松本歯科大学附属病院口腔内科 王 宝禮教授に聞いてみた。
「インフルエンザウイルスは鼻や咽頭、上気道粘膜に入り込み結合する際、口
腔の固有細菌が歯を足場に病原性バイオフィルムを形成し、そのバイオフィルム
から産生される酵素が咽頭粘膜に結合するインフルエンザウイルスの吸着の疫学
的研究報告があることから、口腔ケアがインフルエンザ予防につながる可能性が
ある」という。
また、同教授は「口腔ケアは歯ブラシによる歯表面の細菌の除去だけに限らず、
舌、口蓋、頬粘膜の部分、さらにうがいも含まれるのでインフルエンザ予防につ
ながるはず」だという。
参考文献
Abe S, Ishihara S, Adachi M, et al: Professional oral care reduces
influenza infection in elderly. Arch Gerontol Geriat 43: 157-164, 2006.